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NVIDIAはソフトバンクからARMを買えなかったけどMeta(Facebook)より市場価値が高くなっているという話

ソフトバンクにとってARMは投資先企業の一つでしかない。ARMのテクノロジーを使って新たな革新を生み出す野望はなかった。だから、財政危機に陥った2020年、ソフトバンクはNVIDIAにARM売却の話を持ちかけた。

一方、NVIDIAはGPUでは王者になっていた。特にディープラーニングの訓練などで使われるGPGPU(General Purpose Graphical Processing Unit)が好調だった。でも、コンピューターの要はCPUだ。だから、NVIDIAはARMが欲しかった。CPUがあればコンピューターのハードを制覇したも同然だからだ。

これはWin Winの商談のはずだった。ソフトバンクはNVIDIAの株を大量に受け入れ値上がりのおかげで大儲けするはずだったのだ。NVIDIAは魔法の杖を手に入れる寸前だった。

しかし、買収の話はなかなか進まず、ARMが生まれた国であるイギリスの政府から反対の動きなどもあり頓挫してしまった。

実際には、ソフトバンクはNVIDIAから前金として約12億5000万ドル(約1443億5000万円)を受け取っており、これは返却されない。こういう契約の仕方が孫正義の抜け目のないところと言えるだろう。

また、NVIDIAは今後20年間、ARMの知的財産(関連ライセンス)を保持することができる。とするとARMにライセンスを払っている企業からの収入が見込めることになる。こちらも抜け目がない。

ARM自体はアップルを代表に世界中の企業に使われているが、業績が伸び悩んでもいるようだ。RISC-Vからの競争も熱くなる可能性がある。自国の政府に邪魔されて、ソフトバンクとNVIDIAの商談がまとまらないことで一番被害を受けているのはARMかもしれない。

ソフトバンクの孫正義は2023年度中にはARMを再上場させることを目指しているそうだ。これは元々2018年の段階で2022年に上場する計画を発表していたので驚く動きではない。NVIDIAに売却する方が速攻で儲かりそうだっただけで、それがダメならやっぱり上場だというだけの話だ。

こういうニュースを読んでいると、ARMの社内で一生懸命働いているエンジニア達はどんな想いで日々を過ごしているのかと思わずにはいられない。上層部はお金を右から左に動かして大騒ぎしているだけにしか見えないのかもしれない。いずれにせよC++で凄いコードを書ける技量は何の助けにもならないだろう。コンパイラーを凄い速度で走らせる技術を開発してもおそらくソフトバンクの孫正義の耳には届かない。

さて、NVIDIAはMeta(Facebook)より市場価値が高くなったそうだ。ARMを買えなくとも問題がないくらいビジネスの調子は良いのだろう。これだけAIなどに貢献している会社なのだから当然な気もする。一方、Metaの将来が不透明でビジネスとして不安な面があり株価が大幅に下がった。社名を変えるとか上辺だけの変更しかできなかったのかという失望感もあるのかもしれない。

個人的にはMetaの技術は優れていると考えている。PyTorchやReactにはお世話になっている。なりっぱなしと言っても良い。だから、Metaが潰れてもオープンソースの部分はどこかが財政的に支援して続けてほしいものだ。ただし、Metaがすぐに潰れるとはぜんぜん思わないが。

また、MetaとNVIDIAは共同開発も行っているので、お互いに成長し合うのが両方の会社にとっても理想だろう。



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