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通信制大学にきたら終わりだと思ってた

 私はかつて現役の通信制大学生だった。 

通信制大学とは、一般的な通学制の大学とは異なり、年に数回のスクーリング+自宅学習やオンラインの動画授業などの学習形態で学位の取得ができる大学のことだ。
通信制大学の代表的な存在としては、まず放送大学が挙げられるが慶應大学や武蔵野美術大学、中央大学など、有名私立大学でも通信課程を併設している大学は数多く存在する。 


数多く存在する・・・にもかかわらず、“学び直しを図る社会人”や“生涯学習目的の中高年層”といった通信制大学のメインターゲット以外の、「現役大学生の年齢で通信制大学への進学を希望する層」にとって役立つ情報は、インターネット上にあまりにも少ない。びっくりするほど少ない。

Yahoo!知恵袋では「通信制大学は高卒と同じ」だの、当事者でもない人々の誹謗中傷のような投稿ばかりが目立つし、通信入ったら人生終わりだとか、意味のない大卒だとか、そんなわけあるかーーーーーーい!!!と真っ向から反旗を翻すのがこの記事の目的である。

 

先に言っておくが、通信制だろうと就活は大卒扱いされるし、就職においても支障はない。これは経験談だ。

 私は訳あって通学制の大学から通信制に入り直し、世間一般の「普通」の大学とマイノリティである通信制大学の二つを知っている身である。そのため、通学の大学と通信制大学の両方を踏まえた視点から、「通信制大学の扱いはどのようなものなのか?」「メリットデメリットは?」「就活ではどう評価されるのか?」など、現役の通信制大学志願者に役立つであろう情報をお届けする。

まず、通信制大学のメリットについて。

通信制大学は、通学が少ない分基本的に学費が桁違いに安いので、経済的に少ない負担で学位取得を目指すことができるのは大きなメリットだ。(※ただし早稲田大学は通信でも通学と同じくらい高い)
家庭の事情で大学は断念・・・なんてしなくていいのである。もちろん奨学金も組める。これっぽっちの金額で学位が取れるのかと思うと、通学の私立理系の大学生には妙な罪悪感すら湧いてくる。おトクである。

次に、学習形態が多様で柔軟なので、時間や空間にとらわれない自分に合った学び方ができるというのも大きなメリットだ。スクーリングによる通学が少ないので、身体的な負担が少ないのも良い。仮に体力面に不安を抱えていたとしても無理なく学習が進められるし、なんなら仮に寝たきりであったとしても自宅で寝ながら動画学習ができる。また、仕事の繁忙期直前にまとめて今期分のレポートを一気に終わらせる、などといったワガママな学び方もできる。短期集中型の人には合っていると思う。(私も1年間分の課題を二日で終わらせてバイトに明け暮れたりしていた)

通信制大学にもよるが、在籍上限年数も7~9年などと長いので、入院や家庭の事情など、何かしら事情を抱えていても自分のペースで安心して学習を進められる。休学や再入学の制度を上手く使って長居する人もいる。それぞれの学び方で学位が取れるのは、なんとも優しい社会福祉的な仕組みである。

 

次に、通信制大学のデメリットについて。

いわゆるサークル活動やキャンパスライフなどといった、キラキラ大学生活はまず期待できない。通信制大学はそもそも中高年や社会人をターゲットとしているので、サークルに近い自治活動があったとしても老人会やカルチャーセンター的なノリであるのが現状だ。10~20代が求める大学生ノリとはかけ離れたものであることを理解しておこう。

とはいえ、通信制大学の同じクラス同士で結婚した知り合いもいる(!)ので、スクーリングが出会いの場になっているケースもあるにはある。

また、ゼミや研究室なども基本的にないので、一定期間共に学び続ける仲間はできにくい。その分大学の公式コミュニティやSNS上での交流が活発なので、コミュニケーションは深いとも言える。とはいえ、10~20代の同年代の友達は作りにくい。

スクーリングでなるべく多くの人に話しかけ、連絡先を交換し、こまめに課題の提出期間などに連絡を取り合うことが順調な進級、そして卒業につながる。 

 

そして通信制大学は卒業が難しいという声も多く耳にするが、これは事実だ。というのも、通学して授業に出さえすれば出席だけで単位がもらえたり、試験前にシケプリなる試験対策プリントをサークルの先輩からもらって試験直前にそれを暗記して試験を受けさえすれば授業にほとんど出ていなくても単位が降ってくる…などといったケースは無いからだ。
私自身通信制大学に来て、通学制の大学がどれほど楽であったかを思い知らされた。

通信制大学では、自分で履修科目を決め、年単位での学習スケジュールを組み、レポートなどの提出物の提出締切日を完全に把握して、それに間に合うようにひとりでに課題を進め、仕上げて提出しなければならない。長く孤独な作業である。自己管理能力に全てが懸かっている。

提出物の提出期間に学校や先生などが告知してくれるわけでもないし、進級がかかった重要な課題の提出期間が過ぎても誰も咎めてくれない。知らぬ間に留年していた、というケースが多発しやすいのである。自分で進級要件や最低単位数などを把握して、綿密な学習計画とともに日々学習を進めなければならない。私と同じ学科の同期入学数十人のうち、ストレートで卒業した者は1~2名だった。

このように、通信制大学では自主自律性が強く求められるため、否応無しに真摯に学業に取り組む大学生活となる。自分で進められる人や、しっかり勉強がしたい人にとっては悪くない環境だと思う。自己管理能力は嫌でも磨かれる。

 大まかなメリットデメリットは以上だが、その他に気になることやわからないことがあったらコメントで質問してもらえれば、可能な限りお答えしたいと思う。


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私は通信制大学に来た当初、「終わった」と絶望していた。

就職で通信制大学という学歴がどう評価されるのかわからないという不安、就活で頼れるOBOGがいないという不安、キャリアセンターなどがないという不安、自分が学んでいることが通学の大学と同程度のレベルであるのかという不安、、、とにかくあらゆる不安に苛まれ、「通信制大学」という肩書きが落ちぶれた証の烙印であるかのように感じていた。終わった、というのは、キャリア的に「終わった」という意味だ。

しかし、である。
長居した学生生活や中退歴、病歴など嘘偽りなく書き記した履歴書でも就活では全勝、業界最大大手も内定し、一番危惧していたはずの就活ではなんの支障もなく大成功を収めた。つまり、通信制大学であっても「何も終わってなどいなかった」のである。むしろ、特殊な肩書きにより一発で覚えてもらえて得をしたことの方が多かったかもしれない。

就活においては、「なぜ通信制なのか」ということを自分の言葉で、相手が納得できるよう答えられれば、何も問題はない。学歴フィルターを気にするよりも、自分の適性に合った企業や職種を選ぶことの方がはるかに重要だ。自分の適性を見極め、向いている仕事と企業を選び、SPI対策を万全にして、聞かれるであろう肩書きへのツッコミにきちんとした答えを用意しておけば通信制大学生であろうと受かるもんは受かる。

例えばもちろん、不自然に長すぎる学生生活は、就活の際にプラスには映らないだろう。しかし、諦めずに学位を取ったというその努力は、きちんとアピールできればきっと強みになるはずだ。ツッコまれるであろうポイントを強みに変えるくらいの逞しさは必要だろう。

 

通信制大学は大卒扱いされないなんてことはないし、堂々と学生証を提示して学割が使える。就職の際も大卒枠で新卒採用される。

通信制大学生だからといって、最初から第二新卒や既卒採用サービスを利用しなくても、ごくごく一般的な就活でじゅうぶんに通用する。そのことを強くお伝えしたい。

通信制大学生の具体的な就活ノウハウについては、こちらの記事に全て書いた。よろしければ是非参考にしていただきたい。


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