「フィリピンで1年半インターン/22歳大学生」〜人からもらった愛情に、"恩返し"をしたい〜【EPISODE.19】
▶︎プロフィール
まゆさん(22)
神奈川県出身。早稲田大学法学部に所属。2018年8月から2020年3月までの1年半休学をし、特例認定NPO法人e-Educationの海外インターンとしてフィリピンの教育現場で活動。
▶︎フィリピンに行くことを決めた理由
ーまずは、フィリピンでのインターンについてお話をお聞きしたいと思います!そもそもなぜインターンに参加することを決めたのでしょうか?
まゆさん:きっかけは大学1年生の前期に受けていた「国際協力論」という授業でした。国際協力に関わる様々な人の話を聞く授業だったのですが、その中でインドやカンボジアの支援をする団体に出会い、その団体の別のイベントに個人的に参加したところ、e-Educationの存在を知りました。
*特例認定NPO法人e-Education
途上国における子どもの教育機会の格差を無くすために教育支援をする団体
https://eedu.jp/index.html
これまでも「海外」というキーワードに漠然とした関心はあり、留学なども検討していましたが、e-Educationの活動について聞き、大学生インターンを募集しているということを知ったときに、「これだ!」って思いました。
当時のわたしは、なんとなく大学に入って、なんとなくサークルやアルバイトに励んで…という毎日を送っていて、そんな日々にしっくりきていなかったんです。目的を持たず時間だけが過ぎていくことに対して、「このままじゃだめだ」という思いもありました。
▶︎フィリピンの教育現場での活動
ー大学の授業がきっかけだったんですね…!実際に現地ではどのような活動を行なっていたのでしょうか?
まゆさん:ミンダナオ島の地方都市で、中学・高校の教育に関わる様々な活動をしていました。フィリピンでは、10代で妊娠して子育てをしなければいけない子どもや、若くして働かなくてはいけない子どもが多くいます。
そういった事情で学校に通えない子どもたちのために、週末を利用して中学校卒業を目指せる「オープン・ハイスクール・プログラム(OHSP)」という制度があります。
わたしがしていた主な仕事は、現地の大学と連携し、大学生チューターによる1対1の学習支援をマネジメントすることでした。
ー職員さん(e-Educationの)のサポートがあるとはいえ、ひとりで海外の見ず知らずの地域に派遣されるというのは、かなり大変だろうなと思います。言語が異なる国でのコミュニケーションは困難ではなかったですか?
まゆさん:子どもたちはフィリピンの母語を話す子が多かったですが、基本は英語でのコミュニケーションでした。日常レベルの英語はできたので、事前に準備したミーティングや現地でのプログラムに関する話などは英語でできるようになりました。
海外での「新参者」だからこそ、大胆に行動できたところもあります。フィリピン人はとても愛情深い国民性を持っていて、ひとりで日本から来たわたしにすごく親切にしてくれたんです。
わたしは相手によくされると恐縮して居心地が悪く感じて、より遠慮してしまうタイプだったのですが、フィリピンではそんなこと気にしてたらキリがないなって思えてきて。申し訳ないと感じるよりも、ちゃんと「ありがとう」を伝えることの方が大事だなと思えるようになりました。
▶︎インターンを通して学んだこと
ー1年半の活動の中で、とくに印象に残っている出来事はありますか?
まゆさん:成功体験よりも、失敗しちゃったなって出来事が強く印象に残っています。インターンとして入って2ヶ月目で先輩から仕事を引き継いだばかりの頃、活動先の中学校の先生と、その学校の生徒を指導していた大学生チューターとの間でちょっとしたトラブルがあって。
大学生チューターをマネジメントする立場であったわたしは、彼らのミスを管理できなかった責任を強く感じて、中学校の先生に対して必死で頭を下げたんです。「これからは気をつけさせます、ごめんなさい。何を改善していけるか一緒に考えましょう」って。
そうしたら先生方に「まゆは偉そうだし、チューターの責任を私達のせいにしている」「e-Educationの代表としてもっと公平であるべき」と言われ、挙げ句の果てには「チューター制度なんてもういらない」とまで言われてしまったんです。
失敗を繰り返さないよう、中立な立場で解決策を考えようとしていたつもりだったのに、全く違う受け取り方をされてしまいました。
ーそれは、なかなかきつい…。
まゆさん:しんどかったです。でもこの経験を通して、責任感にしたがって物事を良くしようと突っ走ることは、時に誰かを傷付けてしまうこともあるんだなということに気付きました。
中高時代から責任感が強いと言われることが多かったわたしにとって、「コトに向かうこと」と同じくらい、「人に向き合うこと」は大事だなと気付けたことはとても大きなことでした。
周りの人への愛情とリスペクトの気持ちを持ち、それをちゃんと伝えることが大事なんだなってことに気付いたんです。
ー「こうあるべきだ」という責任感と、周りの人への配慮のバランスを取ることは本当に難しいことだと思います。それを大学生のうちに身を持って経験なさっていることは、とても大きなことですね。
まゆさん:そうですね。フィリピンでのインターンを通して、いろんな人たちの想いを知ることができました。
行くまでは現地の子どもたちのことだけを思い浮かべていましたが、実際にに現地に行くと、学校の先生や現地の学生団体のメンバー、協働する企業の方々など、いろんな人たちが現地の子どもたちのために動いている姿を目にしたんです。
いろんな方向からの「LOVE」がある。その「LOVE」を最大化したい。いろんな想いのうねりの中で、みんなのためになることをしたい。そう感じるようになりました。
▶︎教育への想い
ーそのほかにも教育に関わる活動経験をお持ちのまゆさんですが、なぜ教育というテーマに関心を持たれることになったのですか?
まゆさん:わたしは昔から、人に迷惑をかけたくないという気持ちが強すぎて、誰かに頼ることがとても苦手でした。学校の個人面談とかも、「目の前の大人が自分だけに向き合ってくれている」という状況にとても居心地の悪さを感じて、泣きそうになってしまうくらいだったんです。
でも、大学1年生の夏にインドでの短期インターンを経験したときに、運営会社の社長さんをはじめ大人とじっくり話をする機会をいただくことが多くあって、その人たちに自分のことを話す中で「今のままのまゆでいい」「これまでのこともひっくるめていい」と言ってもらえたんです。
ありのままの自分を受け止めてくれる存在に出会い、「自分を否定しなくていい」と思えるようになった。だから、自分も誰かを受け止める存在になりたいと思っています。
ーまゆさん自身の考え方の変化が原体験なんですね。
まゆさん:そうですね。あと、わたしは母子家庭で育っているのですが、中学高校とすてきな先生に出会えたり、高校時代に留学を経験できたりと、本当に恵まれているなと感じています。
でも、わたしが中学受験をして進学校に通わせてもらえた一方で、弟は中学の3年間、不登校になったりもしていて。弟は今は素敵な友だちに囲まれ、充実した大学生活を送っているのですが、同じ家庭で育っていてもちょっとした違いで人生が変わるということを、身を持って感じたんです。
そのことを知っているからこそ、今まで与えたもらった機会や、自分が周囲から受けている優しさに対して、恩返しをしたいという気持ちに突き動かされています。
▶︎これからの進路
ー1年半の休学を経て復学されたまゆさんですが、残りの学生生活や卒業後についてはどのように考えていますか?
まゆさん:一度きちんと就職活動をやってみようと思っています。これまで自分の進む道を直感や人の縁で選んできたので不安はありますが、休学したからこそ一度立ち止まって自分と向き合うことができ、よかったと思っています。また、仕事にするにせよしないにせよ、教育に関わることや国際協力に目を向けることは続けていくつもりです。
残りの1年半の大学生活もこれまで通り、自分の好奇心の赴くままに選び取っていきたいと思います。同級生は今年卒業してしまうので少し寂しいですが、最終的に選んだ道を正解にするのは自分だと思っています。
▶︎さいごに
ーさいごに、記事を読んでくださる高校生にメッセージをお願いします!
まゆさん:高校生の頃の自分に言うのであれば、「自分なんて」と否定しないでほしいと伝えたいです。日本は、自分を認めたり愛したりすることをしづらい環境だと思います。でも、自分の価値を決める尺度なんてものがあると思わないでほしい。
勉強ができるかどうかとか、誰かに貢献できてるかどうかとか、相手にどう思われてるかとか、自分に価値があるかどうかとかを考えるんじゃなくて、ほかの人を頼ったり、愛したりすることを考えてほしい。
人は意外と頼られたがっているし、好きって言ってくれる人のことを好きになる。周りにいる人たちは、思ったよりもあったかい。肩の力を抜いて、人との関係性をつくっていってほしいなと思います。
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「人の悩みの大半は、人間関係の悩みである」というくらい、わたしたちは日々、誰かの目を気にしたり誰かと自分を比べたりして、苦しい気持ちになってしまうことがあります。
だけど同じくらい、誰かと何かを成し遂げたときや大切に思ってもらったときに、幸せな気持ちになるはずです。
自分を否定しすぎないこと。周りの人のあたたかさを知ること。人への思いやりを忘れないこと。
行ったことのない国で、経験したこともない役割を任され、とにかくやるしかない状況を経験したまゆさんにしか話せない、芯のあることばで語ってくださりました。
まゆさん、最後まで読んでくださったみなさん、ありがとうございました!
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