ポテチ

深夜のポテチが旨すぎて #夜更けのおつまみ

サンドウィッチマンの伊達さんは、ドーナツはまんなかに穴が空いているからカロリーゼロ、カステラは潰せばカロリーゼロ、そしてカロリーは熱に弱いから揚げたポテトチップスもカロリーゼロだと言った。

ポテチはカロリーゼロ。

この希望のことばを、わたしは全力で信じたい。でも、おいしいものにはカロリーがつきまとうのが常だ。半信半疑のひとも多いと思う。

しかも世のカロリーゼロの商品は、どうも味が素っ気なかったり、カロリーがあり余る本家とは別物に感じられたりする。そんなイメージがあるからか、カロリーゼロだと思って口にすることがポテチ本来のジャンキーなおいしさを歪めてしまうんじゃないかなんて、わたしは余計な心配をしてしまう。

でも最近、カロリーゼロ信仰以外にも、罪悪感を限りなく少なくする方法があることに気がついた。

人に便乗することだ。便乗するとなんとふしぎなことだろう、罪悪感が魔法のように消えてしまう。

若い頃の宅飲み、女子会でテーブル一面に広げたスナック菓子、飲み屋を何軒もまわってから食べた締めのラーメン。思い返せば、人と一緒だとおそろしい量の油や砂糖をあっという間に摂取できた。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」というやつかもしれない。「人と分け合えば喜びは倍に、悲しみは半分に」にも似ている気がする。罪悪感は、良くも悪くも分けると半分以下になる。

我が家では最近、深夜にジャンクフードを食べるのが流行っている。

夫は夕飯は職場で食べてくるが、帰宅後に飲み直すのが日課。ウイスキーを炭酸水で割ってハイボールにして、おつまみと一緒に味わっている。

少し前まで、つまみは低糖質ナッツの小分けひと袋で済んでいた。しかしいつの間にかベビースターラーメンがお菓子棚に常駐するようになり、それでも足りない日には、コンビニの唐揚げなんかも買ってくるようになった。癖になってしまったらしい。

その癖に便乗するのが、わたしの癖だ。

「まーたこんなの買ってきて」

そう言いながらもちゃっかりつまみを分けてもらうわたしもまた、夜更けのジャンクフードの中毒患者なのである。夫がぶらさげたビニール袋のなかに一体何が入っているのか、毎晩ひそかに気になっている。

夫が買ってくるおつまみのなかでもいちばん好きなのは、ちょっと高級なポテトチップス。プチ贅沢をしたいおとなの男女を狙いうちにしたような商品だ。

芋やダシ、海苔などの原材料にこだわっていて、普通のポテトチップスよりも厚みがあったり、香りが豊かだったりする。パッケージはおとな向けのシンプルなデザインで、棚から手にとりレジで購入する瞬間からすでにちょっとした快感を味わえる代物だ。

クセになる食感、芳醇な香り、濃厚な味わい……「おやつ」という枠には収まりきらない、気品溢れる食べものである。わたしはお菓子メーカーの戦略にまんまと乗せられ、「大人のおつまみ」をたのしんでいる。

自分で買ったわけじゃないし、ちょっと分けてもらうだけ。

心のなかで言い訳をしながら虎視眈々とポテチを狙い、袋が開く瞬間を待つ。自分からは開封しないことが、罪悪感を少なくするポイントだ。

深夜のポテチは、すさまじい魅惑と破壊力を秘めている。秘めているどころか袋の外までぷんぷんと漂わせている。

端正な顔立ちをした袋が開かれた瞬間、まず誘惑してくるのは香りだ。カラッと揚がった芋の香りと、慎ましくも凛とした塩の香り。両者がふわ〜っと広がり食欲をそそる。つまむと軽いのにちゃんと厚みがあって、たたずまいがまた上品なこと。シックな大人の落ち着きと色気を放っている。

口に含めば二度目の香り攻撃からの、食感攻撃。噛むごとにじわじわとじゃが芋の甘みが染みだし、それを塩やダシの旨みが引き立てる。

そのあいだに罪悪感の代わりに押し寄せるのが、スリルと興奮だ。お酒のおかげ、そして深夜という時間のおかげも相まって、妙な高揚感に包まれる。

わたしは今、イケナイことをしている。

この背徳感がたまらない。深夜にポテチを食べるだけで、日常のなかで、いともかんたんに非日常感を味わえるのだ。こうしてわたしは、罪深い行為をあらゆる方向から正当化できるようになってしまった。

とはいえ、最近は頻度が多くて反省中だ。夫の健康も心配だし、スリルは非日常だからこそおもしろい。そろそろ低糖質ナッツに戻す運動をはじめよう。深夜のポテチが旨すぎて、苦難の闘いになりそうだが……。


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