発達過程で重度の脳障がいを患った我が子のためにご両親が望んで医師にお願いしたこと

『私が出会ったAちゃん』

先天的に心臓に障がいがあったAちゃんは,2歳で心臓の手術を受けました.

それまでは,お話もできるし,歩くこともできる,本当におしゃべり好きで,可愛い女の子だったのですが,術後の容態が急変し,その後,重度の脳障がいを患いました.

『お腹の中の赤ちゃんは心臓の壁に穴が開いている』

お腹の中の赤ちゃんは,お母さんの子宮の中で水中で生活しているので,自分で肺で呼吸をすることができません.それで,お腹にいるときは,心臓の中央の壁に穴が開いており,お母さんと繋がっている臍帯を通じて入ってくる酸素の多い血液で生きることができるのです.

しかし,その後,お母さんの産道を通じて生まれてくるときに,胸が圧迫されて,羊水を吐き出し,肺に空気が入り呼吸をはじめます.

そうなると生まれた後の赤ちゃんは,右の心臓に集まってきた二酸化炭素の多い血液を,肺で酸素の多い血液に変えて,左の心臓に戻して,再び全身の内臓に送ることが必要になります.そのため,生まれた後の赤ちゃんはホルモンが分泌され,心臓の穴が閉じるのですが,この心臓の穴が閉じずに,経過観察になる子どもさんがいます.その後の経過観察で手術が適応となるお子さんもいれば,経過観察となる子どもさんもいます.

『ご両親が望んで医師にお願いしたこと』

Aちゃんは,退院後に,療育をすすめられリハビリを受けることになりました.

理学療法を受けるとAちゃんの身体は楽になりリラックスできるのですが,自宅に帰り,生活をして時間がたつと,Aちゃんの脳障がいは,再び全身の筋肉を硬くしてしまうことも多く,抱っこすることすら困難にしてしまっていたようでした.


数年後,ご両親が望んで医師にお願いしたことは,

「Aちゃんを沢山抱っこしてあげたいけれど,全身に力が入るため,十分に抱っこしてあげることさえできない.」

「たくさんAちゃんを抱っこしたい.」

という要望でした.

その後,薬を使うことで,リラックスできる時間が増え,抱っこが以前より楽にできるようになったとのことでした.

*具体的な治療や投薬については,子どもさんの状況や薬への感受性も関わりますので,執筆は避けます.

乳幼児期の子どもさん自身の目標に

「お母さんやお父さんの抱っこでリラックスして過ごせること」

を追加し,理学療法を行うことは大切であると思います.

このお話は,理学療法士の私に,障がいがあることで難しくなった育児をどう支えるかについて考える機会を与えてくださりました.

乳幼児期のリハビリテーション実施計画書の目標は,当事者と家族が望む生活と育児上の目標をお聞きし,具体的にどのように支援していくかを考えて設定することが重要であると思います.

この内容が,当事者とご家族と療法士のみんなの意見交換の場となり,障がいをもつこどもの生活をよりよいものにできる機会なるといいなと思います!

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