「家族の命の時間にどう向き合うか」

いきなりですが,

”今,ご自身が非常に予後不良の重度の病気を抱えている”
と仮定して,みなさんなら,どちらを選択するでしょうか?

1.ある治療法を選択した場合,100人中85人の人は元気になる.

2.でも,15人の人は何らかの合併症を起こす危険性があり,その治療法を選ばず,残された時間を悔いのないように生きていく選択肢もある.

現在の医療の進歩は著しく,癌(悪性新生物)や心不全,脳梗塞,肺炎などに罹っても助かる時代になりました.

Murray SAらが,2005年に報告した”病みの軌跡(病期の進行)”では,
亡くなる前の呼吸困難感は,癌の場合は最期の一か月に急激に強くなるが,呼吸苦で苦しむ時間が比較的短いそうです.
一方で,心不全の場合は心不全発作が起こる回数が増えるたびに呼吸困難感は続いていき,最期を迎えるときは,人工呼吸器を使用しても,非常に強い呼吸苦となり,その苦しみの期間は数か月に及ぶこともあるといいます.

私には,癌(悪性新生物)を患い闘病していた家族と,現在,心不全を患い闘病を続ける家族がいます.

当事者である本人は,癌で闘病した家族を看取った経験と,主治医の先生が教えてくれたMurray SAらが2005年に報告した,”病みの軌跡(病期の進行)”を聞いて,最後まで悩んでいました.

家族の看取りをした時の現実と自分の今後の現状を重ねると,本当に判断が難しかったと思います.

ただ,当事者の家族として考える場合は,リスクが高い治療法がうまくいかかった時を考えることもありますが,その治療法をとらないことも,その後の呼吸苦の時間が増えることを考えると本当にそれがいいのかを悩みます.

結果的には,当事者である本人がどうしたいかを考え,その意見を支持しました.

現在は,治療により心臓自体は本当に元気に動いているのですが,残念ながら重篤な合併症を併発したことにより,思うような現実には至らず,回復に向けて,何とか頑張っています.

学校の授業では,よく
”今は元気に動いて,生活できるけど,病気でなくとも,一瞬にして,障がいを患い,生活が一変することもある”
という話をすることがありましたが,

昨日まで,普通に歩いていて,車の運転もできていた家族が,その瞬間から,言葉を話すことも,動くことも...できなくなる,という経験をして,
医療に絶対の選択はないということを改めて教えられました.

ただ,その家族の,これまでの闘病生活では,本当に数多くのお医者様,医療従事者の皆様に助けられてきましたので,最善の治療をしていただいている先生方には,大変感謝しております.

...それでも,今でもこれで良かったのか...,考えてしまいますね.

でも,一番大事なのはこれからですね.

当事者である家族が一番辛いのは間違いないですから,

その家族をどう支えて,

今,この時に,私がこれまで学んできた理学療法士という知識を総動員しながら,

また,一人の人間として,回復のサポートをしていき,

より本人が望む生き方を考えながら,今後の方向を決めていきたいと決意をしたところです.

皆さんもお身体,ご自愛ください.

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