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つくる「環境」

環境が人をつくる」と言われます。
人は、取り巻く環境の影響を大きく受けて成長していくのだ」というのです。そのとおりだと私も思っています。ここでいう「環境」という言葉の意味は、たいへん広義ですね。ありとあらゆるものが、これにあてはまるでしょう。
学校では、学校の施設や教室だけでなく、「教師」そのものが子らにとっての「環境」であるということも大事にしていますね。「教師は、子らにとっての最大の教育環境。子らは、教師の生き方を空気のように吸いながら生活しているのだ。」として、私たち指導者は、自らの人格を磨くことをおこたらず、生き方のひとつのモデルとして子らの前に立とうとしています。

私がこの記事で言いたいことは、このような「環境が人をつくる」ということではありません。
この記事で言いたいことは、「人が環境をつくる」ということです。

次に、3つの事例を紹介しましょう。

ひとつ目。
手前みそになりますが、私が校長を務めた中学校で、とても自慢できることがありました。それは、朝登校をし終えた昇降口の下駄箱のようすです。子らそれぞれの下靴が、それぞれの靴箱のスペースにきちんと収まっていることです。乱れがいっさいありません。また、朝登校し終えた自転車通学生の駐輪場のようすです。子らそれぞれの自転車が、整然と駐輪されていて、乱れがいっさいありません。それらのようすには、モノを通して「心」をそろえようとする子らの意識がうかがえ、朝からとてもすがすがしい思いになります。このことは、先生方の粘り強い指導による成果であるとともに、子ら自身が意識してつくりだしている自慢すべき「環境」であると言えます。このことのかけがえななさに、これ以上私の説明はいらないでしょう。


ふたつ目。
おそらく多くの学校では、学校での教育活動の進行をチャイムによって行っていることでしょう。その多くは、ウェストミンスター宮殿の時計塔「ビッグベン」の鐘の音でしょうか。
私が校長を務めた中学校でもお決まりのチャイムなのですが、授業の始まりを告げるチャイムに少し工夫があります。「ビッグベン」の鐘の音が鳴る2分前から、おだやかな曲調の音楽(その曲目を知らず、お伝えできなくて申し訳ありません…)が、まず流れ出すのです。そして、続いて「ビッグベン」です。子らから言えば、いきなり「ビッグベン」ではなく、その音楽が「さあ、もうすぐ授業がはじまりますよ。授業への準備はいいですか。もうすぐ、チャイムです!ほらね、ビッグベン!」という知らせとなっているのです。学校が子らの「心」をととのえる聴覚的な環境を意識してつくり、「音」で指導しているのです。


みっつ目。

現在私が勤務する職場には、幼稚園の若手の先生方をサポートする指導主事がおられます。足しげく園へ出向いて、ていねいに指導にあたっておられます。3つめは、その方から学ばせていただいたことです。幼稚園では、「保育室環境」「園庭環境」づくりが、とても大切なことのひとつだそうです。よって、園児が登園する前から先生方はこの「保育環境」の準備に取りかかられます。中学校での経験しかない私には、こうした話がとても勉強になります。例えば、「順番をがまんして待つ力」をつけさせるための「環境」として、先生方は対象物へと続く「足場ブロック」を準備して設置されます。園児らをそれにのっけて自分の順番を待たせるのです。自然と、無理なく、がまんして待つ力をつけさせる「しかけ」がその環境にあります。また、園児が使用する道具ひとつにしても、その大きさや数などに「しかけ」があります。園児が望むままのものでないことも「ミソ」です。子らが考えて、工夫して、協力して、安全に遊べる・学べる道具・環境に配慮されておられるのです。
遊びを通して学びを深める子らにとっての「環境」の大切さ。幼稚園では、意図的な準備がきちんとされているのです。

人が環境をつくり、その環境が人を育てる」ということ。

「環境」への能動的な働きかけが、指導者には欠かせません。
また、子らがみずから「環境」づくりにたずさわっていくことも、欠かせません。

今一度、
子らの「環境」を
それぞれの校種で見つめなおしてみましょう