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新しい学校のリーダー

新しい学校のリーダーズ

みなさんもご存じの、4人組ダンスボーカルユニットですね。とりわけ、『オトナブルー』の刺激的(!?)な歌詞と、妙ちくりん(!?)な首振りダンス。去年に引き続いて、文化祭・学園祭はもとより、ここからはじまる忘年会などにおいても、子らのセーラー服をひそかに借りてステージに立つという先生方もおられるのではないでしょうか。うらやましいです。

▲ エネルギッシュな4人です

さて、話は、新しい学校のリーダー像

この記事では、学校の管理職の方(校長先生や教頭先生)に向けて、学校のリーダーとして求められるその新しい像について示したいと思います。とりわけ、来年度より校長・教頭に昇任されるような方には、ぜひ伝えたい内容です。

みなさんが持つリーダー像は、どういうものでしょうか。

私の場合は、自身の経験も踏まえて、

仁、礼、先見性、謙虚、信頼と信望、決断と責任 人材育成 など

といったキーワードによってその像を描くことができます。みなさんの多くも、これらのキーワードの向こうにある実際の姿を描くことができるのではないでしょうか。

そんな私のリーダー像に、あらたな視点を与えていただいたのが、鷲田清一さんが著した『しんがりの思想』でした。出会えてよかったといえる書籍。そのタイミングも私にはドンピシャなのでした。時間のある時には、幾度も読み返したものです。

鷲田清一さんは、哲学者で、大阪大学の総長などを務められた方です。朝日新聞には、「折々のことば」を連載中です。また、中学校・高等学校の国語科の教科書にも鷲田さんの文章が多く掲載されています。

鷲田さんは、『しんがりの思想』の中で、次のように言います。

この国は本気で「退却戦」を考えなければならない時代に入りつつある。そのときリーダーの任に堪えうるのは、もはや゛引っ張ってゆく゛タイプのリーダーではない。それは「右肩上がり」の時代にしか通用しないリーダー像だ。これに対して、ダウンサイジングの時代に求められるのは、いってみれば「しんがり」のマインドである。

ここに登場する「しんがり」とは、いうまでもなく、退却する軍列の最後尾につき、敵の追撃から味方を守ること、また、その部隊のことです。

鷲田さんは、その「しんがり」を次のようにとらえ、そこにあるマインドこそが、現代のリーダーに必要なのだと言うのです。

登山のパーティで最後尾を務めるひと。経験と判断力と体力にもっとも秀でたひとがその任に就くという。一番手が「しんがり」を務める。二番手は先頭に立つ。そしてもっとも経験と体力に劣る者が先頭の真後ろにつき、先頭はそのひとの息づかいや気配を背中でうかがいながら歩行のペースを決めるという。要は「しんがり」だけが隊列の全体を見ることができる。パーティの全員の後ろ姿を見ることができる。そして隊員がよろけたり脚を踏み外したりしたとき、間髪おかず救助にあたる。 (略)
最後尾でみなの安否を確認しつつ進む登山隊の「しんがり」のような存在、仲間の安全を確認してから最後に引き上げる「しんがり」の判断が、もっとも重要になってくる。だれかに、あるいは特定の業界に、犠牲が集中していないか、リーダーは張り切りすぎでみなついてゆくのに四苦八苦しているのではないか、そろそろどこかから悲鳴が上がらないか、このままではたしてもつか……といった全体のケア、各所への気遣いと、そこでの周到な判断こそ、縮小してゆく社会において、リーダーが備えていなければならないマインドなのである。

以上、いずれも『しんがりの思想』角川新書(2015年)による

*一番手を校長、二番手を教頭としてとらえてみましょう。

「しんがり」の務め。
会社・企業ならいざ知らず、学校教育においては、「敵」はいません (…いるとすれば、それは「生き抜くのに困難な世の中」でしょうか)。
鷲田さんも、これについて、「戦(いくさ)」の場面を例にとらず、「登山」の場面を例にとってくださったのは、わかりやすいだけでなく、とてもありがたいことです。

鷲田さんが示すこのリーダー像には、覚悟のようなものが必要です。それは、これまでつちかってきたものを出し惜しみすることなく「しんがり」にそそぐ覚悟であり、先頭に立たないことの覚悟です。
また、学校のリーダーは、学校の先生方にとってのリーダーというだけでなく、学校に通う子らの、そして、保護者や地域の方をも巻き込んだもののリーダーであると言えます。このことも忘れてはなりません。

私は、これまでの記事の中で、子らに薦める書籍として『旅をする木』(星野道夫)を、若い先生方に薦める書籍として『「分かりやすい表現」の技術』(藤沢晃治)を示しました。
そして、校長先生や教頭先生、そして、それらをめざす先生方には、この『しんがりの思想』をお薦めします。

この年末・年始、手にしてみてはどうでしょうか。ぜひ!