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『Bread&Butter』を読んで考えた。(0) 〜まえがき


テンションが低い時期は、文章がまとまりません。
ひとりごと日記をボソボソ書くのはいいけど、内容が暗ーくなってしまいがちです。
そんな内容を人前に公開するのはためらわれて、つい下書きのまま放置したり。
しばらくマンガなどを読んで、ごろごろしていました。
芦原妃名子先生の作品に触れたのも、そんな頃でした。『セクシー田中さん』を読んだら、ちょっと救われたのです。
きわめて繊細に、ひとの心の機微をすくいあげる方でした。
ひとつのエピソードに、かならず読者の心に響く大事な核心を織りこんでくるのですね。
魑魅魍魎渦巻く商業誌の世界で、よくこれだけ質の高い作品を、毎回確実に仕上げられていたものです。
わかりやすく、しかも緻密にひとの心を描きあらわすことのできる、稀有な作家さんでした。
ご冥福を、心からお祈りします。
優れた作家さんに出会うと、その人となりを知りたくなります。ヲタクの性で、すべてを集めたくなります。
財力を考え、『セクシー田中さん』の前作にあたる『Bread&Butter』と短編集を購入してみました。
とても良かったです。
芦原妃名子先生は、人間の暗部から目を逸らさない方ですね。
自分の犯した罪の意識から逃げられず、傷ついたり屈折した人間の心情をとらえるのが抜群に上手い…!
テクニック的な意味ではなく、誠実な方です。
自分の真の心に問いかけながら、少しのウソもごまかしもないように歩んでこられた。
セリフやネームのひとつひとつに、説得力と現実味があります。
多くの作品を生み出された方ですから、すべてのキャラクターのエピソードを、ご自身の経験のみで組み立てられたわけではないでしょう。
お友達から見聞したことも、多く含まれているでしょう。
それらのエピソードを単なるネタ扱いせず、きっちり自分事として捉え直し、見事に消化して作品にされています。
自分がつよく反応したのは、『Bread&Butter』でした。
ダンスという自己表現がモチーフである『セクシー田中さん』とくらべ、パンとマンガという、ものづくりをテーマに据えているからだと思います。
感激して、3周ぐらい読んでしまいました。
書きたいことが、山ほどあります。
芦原妃名子先生への敬意をこめて、きちんとしたブックレビューにしたい。
そう思う一方で、自分語りのエピソードが沸騰して溢れかえっています。
『Bread&Butter』は主人公・深田柚季が小学校の教職を辞めた過去を背負い、パン屋の原洋一と出会うところから、物語がはじまります。
あれっと思ったときには、頭の中に白く火花が散っていました。
柚季の経験が、見事に自分とかさなります。
私はかつて小学校の教員となり、短期間で挫折した過去があるのでした。
noteに書く機会もなかったので忘れていたのですが、苦い失敗の記憶が鮮明にもどってきてしまいました。
退職して実家に戻り、ものを書くようになるまでの長い年月が走馬灯のように巡り、しばらく茫然としてしまいました。
これを書いてしまわないと、しばらく他のことは書けない感じがします。
そんなわけで、この文章は正統派のブックレビューからは程遠いものになると思います。
心理状態の観察や考察、自分語りの分量が多くなりそうです。
由緒正しきブックレビューを書く方はたくさんいそうだから、たまにはこんな変則的な文章があってもいいのかな。
読み手は想定できませんが、ともかく自分自身のために書きはじめようと思います。
綴りながらでないと、考察が深まってゆかないので。
今度自分がnoteをふりかえるときには、もう少し息をするのが楽になっていたらいいな、と思います。

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