自分のため9
1年もこの状態でいるから、一生このままなのかと思っていた。
でも今日初めて眠気を感じて、もう直ぐこのままじゃいられなくなるんだと、確信はないが感じた。
ファンの子の夢に出まくっていた時も、りんたろーさんを観察していた3日間も、1度だって眠気を感じなかったのに今日だけ感じたということは、きっとそういうことなんだろう。
あ、俺が死んだのいつだっけ?
「りんたろーさん、俺が死んだ日っていつでしたっけ?」
「は?君の命日は明日」
眉間に皺を寄せ、表情を険しくしたりんたろーさん。
教えてくれただけで、その後は何も言わずサラダを口に運んでいる。
明日か…
この姿で現れると泣かれることが多い。
りんたろーさんがいい例だ。
俺が死んで1年も経つというのに、まさかあんなに泣かれるとは思わなかった。
元々声を掛けるつもりも姿を見せるつもりもなかったけど、疲れ切った顔のりんたろーさんを見ていたら、無意識に声を掛けてしまっていた。
ファンの子だって、夢の中なのに泣いていて、泣き止んでもらうのに時間が掛かった子も少なくない。
それでも少しずつ笑顔になってくれたのは嬉しかったし、楽しかった。
りんたろーさんは今、楽しめているのだろうか…
「兼近…」
「ん?なんすか?」
「漫才してぇ」
俺に命日を教えてくれてからずっと黙っていたりんたろーさんが、空になったサラダの器に目を落とし呟くように言った。
出来ることならしたいけど、俺この状態だからなぁ。
あ、でも……
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