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孤独と逆鱗

いつだったか、父と口論をした。居酒屋だった。ふたりとも酒が入ってお互いそれなりに酔いも回っていた。


仕事を始めてからずっと心のどこかで女であることを気にしていた。初めはみんな物珍しく思っていたのだと思う。そんなとき幼少期のいじめを克服できずに大人になったわたしへの更なる追い打ちとしてそれはやって来た。

どことなく居場所がなかった。作り上げられたその環境に溶け込むだけの勇気も、度胸も、愛想もわたしは持ち合わせていなかった。


その矢先の出来事だった。途中から論点がズレて理解されない心情を笑われたようで思わず飛び出してしまった。

それからはただひたすらに歩いて、最寄り駅横の居酒屋でひとり呑み直した。


当然、声をかけてきたおじさんは「きみは誰よりも汚くて、醜いね。」そう言ってどこかへ行ってしまったのを覚えている。

閉店時間を告げられ帰路に着いたときには深夜2時を回っていた。家の前の道路で母がひとり待っていた。その後のことはあまりよく覚えていない。

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