【童話】空バケツおじさんと魔女
あるところにプライドが高く、他人を陥れることに一生懸命になっているおじさんがいました。
おじさんは自分の思い通りにいかないときは声を荒げて激昂し、他人の手柄を横取りしては、自分より立場の弱い人をいじめ、高笑いをしながら過ごしていました。
ある日、おじさんの言動を見かねた魔女が、身体を古い冷蔵庫に、頭をバケツに変えてしまいました。
おじさんは「なにをする!」と怒りをあらわにしましたが、魔女は冷酷に「あなたが心の底から改心するまでこの魔法は解けません」と言い放ちました。
見た目がすっかり変わってしまったおじさんは知り合いに気がついてもらうことも出来ず、誰にも相手にされなくなってしまいました。おじさんは寂しく悲しい気持ちになりましたが、身勝手に魔女に形を変えられたことに納得がいかず、それでも改心しませんでした。
「俺がなにをした。あの魔女が全て悪い!元に戻ったら、絶対にあいつらを見返してやるんだ!」
おじさんが空っぽの脳みそを沸騰させて、ぷんぷんと怒ると、その熱さでおじさんのバケツがみるみるうちに溶けてしまいました。
空っぽのバケツ頭が熱くて痛くて堪りません。だけど、一度溶けてしまったバケツは元に戻ることはなく、おじさんはそのままそこでぷすぷすと動かなくなってしまいました。
それからしばらくして魔女はこれがあのときのおじさんのバケツだと気がつきました。そして溶けたバケツのかけらを拾いながら思いました。たかだか魔法ごときで、おじさんを変えられると思った自分が間違いだったのだな、と。
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