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たまにいいこと言ってくる美容師さん。
髪が伸びたので美容室にいった。
この美容室にはもう2年近くお世話になっている男性美容師さんがいて、プロの腕前を提供してくれる代わりに散髪中の30分間は、彼の小噺を私が楽しそうに聴く、という契約になっている。契約なんてしてないのにいつもそうなる。
いつも彼の話はおもしろくはない。心の底から爆笑したことはない。美容師さんに落語家的なサービスは求めてないけど、とりあえず話を聞くだけ。
「沖縄に旅行にいったんです」「今日の服は中国版のAmazonで買いまして、届くのに10日かかったんです。中国版なんで」「実家も美容室やってるんですけど、成人式の直前はヘルプにいくんです。マジ大変です」
彼がサービスしてくれる話題の種類と、トークのキレはご覧の通りである。
で、昨日。
昨日美容室にいくと、言われたのは、
「イトーさん、もうすぐGWですね、1年あっという間ですね、もう4分の1終わってますからね」という、自宅ポストに入ってるパーソナルジムのチラシくらいにどうでもいい話題だった。
髪の毛を切られながら私は「そうですね、速いですね、こうも速いと参っちゃいますよね」と答える。すると彼は、
「ある程度人生を送ると、1年のイベントに予測がつきますからね。年明けたらバレンタインでとか、春になったら桜でGWで、最後はクリスマスとお正月ですから。これ繰り返してるだけですからね」
「おお、予測がつくから体感速くなるんですかね」
「きっとそうですよ、慣れです慣れ。慣れというか惰性。だから自分だけの楽しみを予定に組み込んだり、やったことないことをしないとダメですね」
「おお〜」
そう、この美容師、たまにいいことを言うのである。
それを引き当てられるのはごくまれなんだけど、それが楽しみだからずっと通ってるところもあるかも。
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〈あとがき〉
その美容師さんが言ってたことはよくよく考えれば当たり前の話なんですが思わず「おお〜、いいこと言いますね〜」と言ったら、なんか嬉しそうでした。彼はいつも私の髪の毛を切ってくれるので、本当にありがたい存在です。今日も最後までありがとうございました。
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