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vol.10「この町を誇りに思うようになった。」海洋ゴム株式会社 川畑啓さん

「きほくる | 紀北町魅力ナビ」にお越しいただき、ありがとうございます。

今回の「しごとカード」インタビューは、紀北町中里(きほくちょう・なかざと)にある海洋ゴム株式会社 で働いている川畑 啓さん(かわばた けい)さん。

中学時代に「地元があまり好きじゃない」と松阪市にある工業高校に進学した川畑さん。高校から寮生活で専門技術を学びながら、町外で暮らすことで改めて紀北町の良さに気づき、地元へのUターンを決めたそうです。

地元について感じること、好きなことを仕事に選んで感じるやりがいと大変さ、ボランティア活動について等
、熱く語っていただきました。

この記事は「しごとカード」に登場していただく“紀北町で働くひと達”に、地域おこし協力隊・豊川がインタビューしていくシリーズです。

あなたは、どんな風に働きたいですか?どんなところで、どんな人たちと働きたいですか?あなたが、自分に問いかけ、自分の中にある答えと出会っていく。そのきっかけに、この note がなれたら嬉しいです。

※しごとカードは、紀北町でいきいきと働いている人たちが「仕事との出合い方」「仕事の魅力や喜び」「紀北町のスキなところ」等を、これまでの人生のエピソードを交えながら、若い世代の人たちに向けて語ってくれたことをカードにしたものです。


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1.地元を離れて初めて気づいたこと。



ーー今の仕事に就かれるまでの経緯を教えて下さい。


川畑さん(以下、敬称略) 昭和61年(1986年)生まれです。生まれも育ちも、紀北町東長島(きほくちょう・ひがしながしま)です。東小学校、紀北中学校、その後は松阪市にある松阪工業高校・機械科に進学しました。

高校卒業後は紀北町に戻って、尾鷲市にある水産加工会社に就職したのですが、3年後に現在の海洋ゴム株式会社に転職し、現在に至ります。


ーー高校から町外に出たんですね。


川畑 はい。当時の僕は、地元があまり好きじゃなかったんですよ。僕の世代は良くないことをする人が身近にいたりして、めちゃくちゃだったんです。

そんな環境を「面白くないな…」と思って「ちょっと外に出てみよう!」と松阪工業高校に進学しました。

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海洋ゴム株式会社さんの工場内


ーー工業高校に進学した理由は?


川畑 親が重機の修理業をやっていたので、小さい頃から機械に触れることが多かったし、ものを作ることが好きでした。機械を作ったり修理したりする仕事をやりたいと思って、高校も工業高校にして、専攻も機械科にしました。


ーー機械科では、どんなことを学びましたか?


川畑 エンジンの勉強をしたり、工作機械の勉強をしました。鍛造(たんぞう)、鋳造(ちゅうぞう)を学んだり、専門的な勉強内容でした。

鍛造(たんぞう):金属をハンマー等で叩いて圧力を加えて変形させる手法。古くから刃物や武具、金物などの製造技法として用いられてきた。
鋳造(ちゅうぞう):材料(主に鉄・アルミ合金・銅・真鍮などの金属)を融点よりも高い温度で熱して液体にし、型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法。ウィキペディア(Wikipedia)より引用



ーー卒業後は地元での就職を考えていましたか?


川畑 はい。僕は地元が嫌で松阪市に出てきたのですが、寮生活を経験して地元や親から離れて、改めて地元の良さに気づいたんです。そして、高3のときに、先生に「俺、地元に帰りたい。」と言いました。


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2.やりたかったことがやっとできる。


ーー高校卒業後は、すぐに紀北町内で就職したのですか?


川畑 最初は、尾鷲市にある水産加工会社に就職しました。その会社は生産設備の保守メンテナンス業の求人だったのですが、入社してみると生産現場での就労でした。

それでも「とりあえず、3年間はやろう!」と思って続けたのですが、3年経っても異動がなく、自分のやりたいことがやれない環境だったので転職を決意しました。


ーーそして、海洋ゴムさんに入社したのですね。転職に際して、どんな気持ちでしたか?


川畑 求人はハローワークで見つけました。自分が望む職種だったので転職を決めました。「やりたかったことが、やっと出来る!」みたいな気持ちで不安は特に感じず、楽しみでしかなかったです。

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ーー海洋ゴムさんに入社後、どんな仕事を担当してきましたか?


川畑 最初は、設備管理課で機械の修理をしたり、機械を作りました。その後、生産技術課で製品を作るために必要な機械『治工具(じこうぐ)』を作っていました。

去年1年間は親会社であるトヨタ合成株式会社(愛知県)に単身赴任して、トヨタ生産方式を学びました。単身赴任を終えて、現在は経営企画部生準管理課で工程改善に取り組んでいます。


ーー現在の業務(工程改善)について教えて下さい。


川畑 単身赴任中に学んだ「トヨタ生産方式」に基づいて、現状を確認し、改善に取り組んでいます。自分のテーマを設定し、そのテーマに応じて現場の現状を確認し、改善していきます。


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ーー具体的には、どんなことをおこなうのですか?


川畑 はい。トヨタ生産方式は、簡単に説明すると「必要なものを、必要な分だけ、必要な時に出荷する」ことです。

ですので、今の僕の業務は「必要じゃないものを作っていないか?」「売れるものを作っているか?」と現場を確認し、改善・管理していく仕事です。


ーー企業の成長のために大切な仕事ですね。


川畑 そうなんです。ただ、下調べにすごく時間がかかります。ストップウォッチを片手に「これ1本作るのに何秒かかるか」「箱詰め作業に何秒かかっていて、次の箱を所定の位置に置くのに何秒かかっているか」など計ります。

そして、各工程の所要時間を調べて、作業1枠の完成時間を算出します。一工程ずつ、時間を計っていくので、確認作業にとても時間がかかるのです。


ーーそれは大変な作業ですね。


川畑 大変ですが、現状をしっかりと見ていかないと効果も見えてこないので、0.1秒、0.5秒にこだわった活動をやっています。


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3.見る目を養う。



ーーちなみに、今の業務に就くまでは、そんな風に現場を見ていましたか?


川畑 見てない!見てない!(笑)「作れたらええわ。(作れさえすればいい)」と思っていました。

設備管理課時代は、機械の修理をする。生産技術課時代は「この完成品を作れる道具があればいい。」と考えていました。出来るまで何秒かかろうが「とりあえず出来たらいい。」という世界でした。

それが、去年学んできたことが「ゼロコンマ何秒にこだわっていく」ですよ!

研修では「現工程で10秒かかるところを5秒に短縮できたら、その分が原価利益となり、会社の利益になる」ということを学びました。利益に直結する部分なのでプレッシャーを感じる部分もありますね。

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ーー今の業務に就いてから自分の中で変化したことは?


川畑 見る目を養うことかな。今の業務では、着眼点(見る目)が必要になってくるんです。無駄を無駄と気づくということですね。

今までは、無駄を無駄と分かってなかったんです。「これ、めっちゃ無駄やん!」と気づけるようになると、改善のステップアップに繋がっていくんです。まず「気づく」ということから始まります。

ーー今の業務の面白さや喜びは?


川畑 面白いと感じるのは、結果が数字に表れるということかな。本当にダイレクトに表れます。

嬉しいのは、今まで「これは大変だ…」という作業をおこなうラインで、1分1秒にこだわりながら、僕もスタッフと一緒に改善策を考えて実施した結果、スタッフに「作業がやりやすくなったよ」と言われることですね。

改善した結果の良い反応を直接聞くことができると、すごく嬉しいです。


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4.出来ない原因を一緒につかもう。



ーー今の業務をおこなうにあたり、大事にしていることはありますか?


川畑 やっぱり人間関係ですかね。企業には様々な部署があり、場合によっては部署同士で敵対心を持ってしまうことがあるんですよね。「なんで出来やんのや!」と相手を責めるような気持ちになってしまう時がある。

そのような場合は、出来ない原因を一緒につかもうと心がけています。相手に無理強いしないように、言いっぱなしにならないように、「ワンチームとなって、いいものを作っていこうや!」と働きかけています。


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ーーこの仕事に就いてから、嬉しかったことは?


川畑 去年の単身赴任は「標準作業完成度指導員」という資格を取るという目的がありました。その資格は合格率が約8~9%の狭き門。

おまけに、本来は75点以上で合格なのですが、自分が所属する部署のメンバーは90点以上取らないと合格できない、というハードルの高さでした。

それだけでも大変なのに、試験日が僕がボランティアとして関わっている『きほく燈籠祭』の2日後。数分でも時間が出来たらテキストを開いて勉強していました。

きほく燈籠祭(とうろうまつり)は、毎年7月下旬の土曜日に紀北町で行われる(2020年はコロナの影響で中止)。多くのボランティアスタッフが携わり、半年以上かけて準備・製作する10m超えの巨大燈籠と色鮮やかな花火の競演を目当てに多くのひとが訪れる。(紀北町観光協会HPより一部引用)


いやぁ、地獄でしたね(笑)。そんな苦労の甲斐があって、試験に合格して目当ての資格が取れました。

そして先日、親会社の社長から合格の表彰状を手渡しでいただきました。それが、めちゃくちゃ嬉しかったことです!


ーーあなたにとって、仕事とは?


川畑 自分にとって、仕事は家族を支えるために最も大切なことです。そして、自分が仕事できるのは家族の支えがあってこそです。

自分は会社のために働くことで会社から報酬をいただき、それによって家族を支えることが出来ている。自分、家族、会社、それぞれに支えあって回っていっているのだと思います。


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5.こういうのって気持ちいいな。

ーーボランティア活動を始めたきっかけは?


川畑 当時、兄がやっていた太鼓の繋がりで尾鷲でボランティア活動をしている方と知り合いになりました。

その頃、尾鷲消防署の裏手で「キャンドルナイト」というイベントをやっていて、その手伝いをしたのが僕の最初のボランティア活動です。

キャンドルナイトを見にきてくれた人たちが「きれい!」と言って喜んでくれて、その喜ぶ姿を見ていたら僕も嬉しくなって「こういうのって気持ちいいな。」って思いました。

それが、僕のボランティア活動を続けようと思ったきっかけです。

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ーー今はどんな活動をなさっていますか?


川畑 踊りをやっています。奥さんに誘われて始めました。踊りのチームが燈籠祭に参加させていただけるように働きかけ、色々とお手伝いさせていただく中で燈籠祭にも呼んでもらえるようになりました。

イベントの準備していると面倒なことや大変なこともあるけれど、当日、子どもが喜んでいる姿を見ると、それまでの疲れも吹っ飛んで「あぁ、やって良かったなぁ。」と思うんですよね。やりがいをすごく感じます。


ーーひとが喜んでいる姿が好きなんですね。


川畑 そうですね。そして、僕は皆でワイワイしているのが好きなんですよ。イベント当日よりも準備している時の方が好きです。

「あぁしよう、こうしよう」と皆で苦労して取り組んで、いいものを作り上げていくことが僕は好きです。

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ーー好きなことや好きな言葉は?


川畑 趣味は釣りアウトドアです。キャンプしたりBBQしたり。好きなことが全部町内で出来る紀北町が好きだし、よそに行く必要がないんです(笑)。

好きな言葉は、「絆」「つながり」かな。人と人との繋がりを大切にしたいし、仲間たちとずっと笑って過ごしていたいです。


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6.この町を誇りに思うようになった。



ーー二十歳の頃の自分に声をかけてあげられるとしたら、何と言ってあげますか?


川畑 二十歳の頃って、自分が十数年後にこうなっているって分からないじゃないですか?

だから、僕は二十歳の頃の自分に「正解だったよ。」と言ってあげたい。「自分が決めた道は、間違いではなかったよ。」って。


ーー若い世代の人たちへのメッセージをどうぞ。


川畑 ずっと思っていることですが、若い人たちと一緒に町を盛り上げていきたいんです。

この町では、若い人たちが活躍しているのって一部の職業の人たちだと僕は思っています。

だから、僕は一般の企業で働いている若い人たちが活躍できる場を創りたい。

町のために動くことやボランティア活動は、やってみたら楽しいと思うんですよ。だから、僕は「こっちの楽しい世界においで」と誘いたいです。


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ーー町のための活動やボランティアを始めて、なにか変化はありましたか?


川畑 僕は踊りを始めてから、色々な地域に知り合いが出来ました。町外・県外からいろんな人が紀北町に来てくれます。

そして、「めっちゃいい町やな!」とたくさんの人が言ってくれます。

そういう言葉を聞いて、僕はこの町を誇りに思うようになりました。そんな体験も若い人たちにしてほしいなぁと思います。


ーーどんなことを若い人たちと一緒にやっていきたいですか?


川畑 燈籠祭を若い人たちと一緒にやっていきたいです。「この現状で、燈籠祭を今後も続けていけるのかなぁ…」と考える時があります。

燈籠祭は、少人数で創り上げている祭です。若い人たちにも加わってもらって、いろんな目線で新しいことをやっていけたら面白いだろうなと思っているので、ぜひ参加してほしいです。

そして、若い世代の人たちが入ってきやすい環境を作ってあげることが僕たちの課題なのかもしれませんね。


ーー今日は川畑さんのお話を伺いながら、自分の町を誇りに思うってすごく大切なことだと気がつきました。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

【海洋ゴム株式会社  川畑 啓さんからのメッセージ】
・見る目を養う。
・まず「気づく」ことから始まる。
・仕事ができるのは家族の支えがあってこそ。
・若い人たちと一緒に町を盛り上げていきたい。こっちの楽しい世界においで。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今回の 海洋ゴム株式会社 川畑 啓さんのお話はいかがでしたか?

あなたの中にある仕事に対する思い大切にしていることを感じるきっかけになったら嬉しいです。

(取材先情報)海洋ゴム株式会社
https://kaiyo-gomu.co.jp/
〒519-3404 三重県北牟婁郡紀北町中里658番地 TEL 0597-36-1331(代)

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