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【世界の最新ビジネスニュース #41】プレースメント:画期的なISAモデルを導入する求職者のための人材エージェント!


●プレースメントの概要

プレースメントは1.5年〜3年の間、ユーザーの収入の10%と引き換えにもっと高給の仕事を紹介し、面接準備の支援や新しい就職先のある都市に引っ越す手助けをしてくれます。

”俳優やスポーツ選手、ミュージシャンにはタレントエージェントがいます。なぜサラリーマンにはいないのか?”それがプレースメントCEOのショーン・リネハンのビジョンです。ユーザーが故郷や物価の高い大都市から移転したいと思っているなら、生活費調整後の収入を一貫して30%上げることができると考えています。

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「私たちは、エンジニアにならなくても人生を変えることができると考えています。適切な場所に移ればいいのです。誰もがコードを学べるわけではありませんし、プレースメントは学校ではありません。私たちは仕事をするために人を訓練するビジネスをしているわけではありません。仕事を得るための訓練をしているのです。」


プレースメントが創業した背景には多くのトレンドが存在します。転職の増加、学生ローンの借金返済の必要性、サンフランシスコやニューヨークで家賃が払えない人が増えた事による中規模都市の台頭、遠くからでも連絡を取り合えるソーシャルアプリ。そのようなトレンドを受けて、より深い充実感を求めての生き方が主流になりつつあります。

所得分配契約(ISAモデル)を通じて、プレースメントはこれらの社会変化から収益化する方法を発見しました。その可能性にFounders Fundを中心にXYZ VenturesやThe House Fund、Flexport CEOのRyan Petersen、Eventbriteの創設者JuliaとKevin Hartz、DoorDashのCEO Tony Xu、137 VenturesのMD Elizabeth WeilとFacebook Calibraの副社長Kevinのようなエンジェルから投資を受けて3億円のシード資金調達をしています。


求職者用のソフトウェアを構築する資金があれば、プレースメントはブティック型人材派遣会社をはるかに超えて、何百万人もの人々をより良いキャリアトラックに乗せるためのスケーラブルな方法で成長することができます。

「今アメリカ経済で一番の問題は、所得の流動性の欠如です。金持ちを金持ちにするためのサービスはたくさんありますが、低所得者が中間層に行くのを助けるサービスや、中間層の人たちが向上するのを助けるサービスはあまりありません。」


●創業者の軌跡

創業者の人生は、”試行錯誤の結果生まれたアメリカの真実"だったと、リネハン氏は語ります。

「私はサンバーナーディーノのかなり低所得の地域で育ちました。貧困よりも下の状況でした。しかしカリフォルニア大学バークレー校に通う機会があったことで、シリコンバレーと経済大国サンフランシスコにたどり着きました。他の場所に行っていたら、これほどの成功はなかったと思います。もし自分の故郷にいたら、絶対に成功できなかったでしょう。」

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しかし大学卒業後、友人の引っ越しやガールフレンドとの別れを機に、リネハンは2段ベッドに一人で住んでいることに気がつきました。

「最低賃金の仕事をしている友人に電話をして、『お前の人生をもっと良くしよう。俺と一緒に泊まろうぜ!』と言いました。彼は超頭が良くて、一緒にバークレーに行った他の人たちよりも頭が良かったのですが、町を出る電車には一度も乗ったことがありませんでした。」

それからの数年間、リネハンは彼の友人をプロになるための指導をし、面接をナビゲートしました。

「今、彼の収入は3倍になりました。最低賃金から年収700万〜800万円になったのです。それがプレースメントのアイデアに火をつけました。経済的な機会を必要としている特別な人たちをどうやって開拓し、より多くの人に届けるのか?これらの新しいアイデアを実現するために仕共同創業者が必要でした。」

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「その時に出会ったのがKatie Kentです。ケントはFlexportの製品チームでもあり、アメリカ初のデータサイエンスブートキャンプとしてZipfian Academyを立ち上げるのを手伝っていました。ZipfianがGalvanizeに買収されたときには、12週間のコースで93%の卒業生をフルタイムの仕事に就かせていました。正しいアイデア、経験、そしてFlexportを3200億円貨物輸送ユニコーンに変えた実績が、投資家をPlacementに資金を提供するチャンスに飛びつかせました。」


●プレースメントの仕組み

プレースメントのインカムシェアリング(ISAモデル)の仕組みはどうなっているのでしょうか?ユーザーは生活費を確保した上でより多くの収入を得た場合にのみ、私たちに支払う形になります。

まず同社はターゲットを絞った広告と口コミによる紹介で人材を募集しています。主に営業、人事、オペレーションなど、住んでいる街とミスマッチしたスキルを持つビジネスの専門家を求めています。彼らは、地元を離れたことがなかったり、中堅大学を卒業して戻ってきたりして、収入の可能性を抑えているのかもしれません。しかし就職活動に関する知識がないことや、支援ネットワークから離れることへの不安、資金不足などの理由で、彼らはそこから抜け出せなくなってしまったのです。

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「社会が”地元を離れてもいいよ”と優しく語りかけてくれる瞬間が2つあります。それは大学に行くときと大学を卒業するときです。そこで、私たちは第三の瞬間としてエンジニアになる時を追加しようとしています。

私たちはサービスの中で必ずユーザーが家族と会話をすることを課しています。プレースメントはCEOが彼の友人のためにしたのと同じ方法を提供しており、もしユーザーがデンバー、オースティン、ローリー、シアトルのような成長しているが、まだ手頃な価格の都市に引っ越す機会をつかめば、人々の生活はずっと良くなるだろうと考えているからです。


プレースメントが求めるもう一つの人口層は、国内で最も物価の高い都市で頭打ちになっている1000万人以上の労働者です。

「野心家で才能があってもエンジニアではない場合、厳しい人生が待っています。プレースメントは、彼らのスキルがまだ活用できる生活費の安い都市を探し、収入を極力維持した上で、生活費削減も含めて大幅な可処分所得の増加を得ることができ、家を購入するための道筋も作っています。人々の再スキル化よりも重要なのは、彼らのスキルが活きる適切な場所に彼らを連れて行くことです。とリネハン氏は述べています。

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「プレースメントでは、プロセスの中でユーザーがスキル、保有資格、経験等に基づいて過小評価されているかどうかを判断します。もしすでに十分な報酬が支払われていたり、過大な報酬が支払われていたりする場合はサービスを利用できません。ユーザーとして利用できる人には、最適な給与や勤務地・企業に関する調査結果にアクセスできるサービスが提供されます。このような調査はほとんどの人が自分ではできないことです。私たちはコンシェルジュのようなものです。」


●ISAモデル(収入分配契約)

ユーザーを選ぶと、プレースメントはユーザーの準備プロセスを支援し、LinkedInや履歴書の改善、自分のストーリーを伝える練習、その分野の専門家との模擬面接の提供などを行っています。プレースメントが設定した面接を経て、採用企業がオファーを出すと、可能な限り最高の報酬を得るために交渉します。

「あなたが良い大学の出身でなかったり、学校を退学した人だったら高収入を得る手段がありません。トップのコーディングスクールやその他のブートキャンプが卒業生を配置し、Pathriseのようなスタートアップも面接の準備に取り組んでいますが、新しい就職先を探しているほとんどの人は、オンラインで見つけた平凡な就職活動のヒントに頼ってしまいます。その理由の一部は、役に立つことが保証されていない指導と引き換えに、多額の現金を支払うように人々を集めることが困難だったからです。」


プレースメントのISAモデル(収入分配契約)は、インセンティブを調整するように設計されています。それはユーザーに最高の仕事と給料だけでなく、彼らが一生やりたいと思うような仕事を提供することを目的としているからです。現時点より高い所得を得ている限り、ユーザーは収益の10%を支払います。これは1.5年間、またはプレースメントの50万の移転手当と人的サポートを受けた場合は3年間続きます。またプレースメントの総支給額には上限があり、5年後には契約が解消されるため、ユーザーは就職がうまくいかなくても拘束されることはありません。

具体例を挙げると、例えば年収400万の人が520万になるとします。そうするとユーザーは1.5年間で約80万、つまり約4万円/月の費用を支払うことになります。

ユーザーは、プレースメントとのISAが終了した後も報酬を増やし続けることが多いです。そのため現在までに1000人未満のユーザーと契約を結び、急速に成長しています。


最終的に、プレースメントはプログラマーやデザイナーを対象とした仕事に進出する可能性がありますが、支援には大きなギャップがあると考えています。

「私たちは、Lambda SchoolやGalvanizeのコーディングブートキャンプよりも多くの人が利用できる選択肢を提供しています。誰もがソフトウェアエンジニアになるわけではありませんから。」


●プレースメントの課題

プレースメントの最大のハードルは、ユーザーと適切な企業をマッチングさせる人間関係を重視したプロセスをどう拡大させるのかという点です。

「1人の人に仕事を紹介するのと、1万人に仕事を紹介するのは別物です。」と語りますが、リネハン氏は過去にFlexportでも同じ問題を克服しています。

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プレースメントは、ユーザーがより主体的に企業とマッチングを行い、面接スキルを習得できるようなツールの構築に、ノウハウを投入する必要があります。また価格に見合う人間的要素を維持しながら、マーケティングによるアウトリーチ、ユーザーのスクリーニング、企業とのコネクションをより自動化する必要があります。

現在チームはわずか4人で、間もなく7人に拡大する予定ですが、この夢を追うためにはさらに多くの資金を調達する必要があるかもしれません。投資家の中には負担の大きいISAを使うモデルに懐疑的な人もいるのは当然です。


他の企業と比較すると、例えばWeWorkによって買収され、データエンジニアになる1年間のプログラムを提供するMissionUでは、3年間の所得の15%、または年収520万円の仕事で230万ほどを移転費用の支援なしで要求しています。

またGeneral Assemblyのテックジョブ教育のためのISAは、学生が前の仕事より多くの収入を得ていなくても、4年間10%のコストがかかります。

一方Pathriseは、1年間でわずか7%の費用しかかかりません。

また大学もこのISAのトレンドに注目しており、いくつかの大学はスタートアップのLeifと協力してISAを運営しています。


●プレースメントのビジョン

プレースメントは厄介なケースでも対応することが出来ます。ユーザーが新しい仕事への転職後に解雇された場合、継続して次の仕事を見つけるのを支援しています。

「ユーザーが成功するために、私たちは存在するのです。」

ただし、ユーザーがセクハラや詐欺行為などの倫理的な問題で解雇された場合のみ踏み込みません。また誰かが慣れない街で孤独感を感じないよう、ユーザーの間でコミュニティを見つけられるようにしており、知り合いがいる都市にユーザーを送っています。


またプレースメントは、企業からお金をもらう人材紹介会社にならずに、ユーザーのために全面的に働くことを続けています。

「企業目線になると、大企業からお金を追いかけているだけになってしまい、ビジョンとのギャップが出てしまうのです。またスタートアップの段階で政策の影響受けることは難しいため、プレースメントは海外の求職者やビザが必要な人はターゲットにしていません。」

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現在、米国の給与総額は年間860兆円に達しており、国内市場は十分にあるようです。

「アメリカ市場は非常に巨大すが、競合は多くないこともあり、競争力があります。今後プレースメントは保有するデータを使って特定スキルを推奨したり教えたりする可能性を持っています。我々が変化を起こせれば、もっと給料が高く、もっと好きになれる別の業界で仕事に就くことができるようになるでしょう。また都市に音楽会場や公園の建設を提案することで、都市計画を改善することも視野に入れてていて、求職者が引っ越しやすくなることも考えています。

国家の視点に立つと、最適な人材配置によって国をより安定させると共に、所得を固定化する資産家に抵抗していきます。二層の社会はとても脆いです。私はいつ燃え上がるか分からない”干し草のような”民主主義の国には住みたくありません。お金を持っている人と持っていない人の階級がある必要はないし、すべてを公平にするために政府が強制的に再分配をする必要もありません。正しい道に進むことに関心を持つ人々が必要なだけで、私にとっては人生を捧げるに値する大義があると考えています。」

出典:TechCrunch

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