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企業分析 | 東京電力ホールディングス

本日は東京電力ホールディングスの「小売事業」を中心に分析していこうと思います。「電力の小売り全面自由化」によってどのような影響が出たのでしょうか。

それではいきましょう!

企業概要

設立:1951年
本社:東京都千代田区
資本金:1兆4009億円
従業員数(連結):41086人

<事業内容>
・燃料、火力発電事業(東京電力カフュエル&パワー)
└中部電力と共同でJERAを設立
・一般送配電事業会社(東京電力パワーグリッド)
・小売電気事業会社(東京電力エナジーパートナー)

東証一部上場

4P分析

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Product(プロダクト:製品)
東京電力ホールディングスは、発電から送電、そして電気の小売まで電力に関する川上から川下までの事業を展開しています。送配電事業に関しては安定供給を担う必要があるため、電力小売全面自由化後も、政府が許可した企業(各地域の電力会社(東京電力、関西電力等))が担当しています。


一般送配電事業に関しては、首都圏を中心に日本全体の1/3に対して電力を供給しています。(これはイタリア一国とほぼ同程度)
1軒あたりの年間の事故停電時間はわずか3分で、信頼性の高い設備と高度な技術力により、年間の停電回数、時間ともに世界トップクラスの安定性を維持しているとのこと。


小売事業は、小売電気・ガスのTEPCO(テプコ)を展開しており、家庭向け・法人向けの電気・ガスの販売を行っております。

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Price(プライス:価格)
小売電力に関しては、電力の自由化に伴って様々な企業が電力を販売しています。東京電力に関しても、ガスのセット売りや世帯人数によって様々な価格帯があります。

Place(プレイス:流通)
東京電力は首都圏を中心に電力を提供していますが、アライアンスを活用した代理店の全国販売も積極的に行っています。

Promotion(プロモーション:販売促進)
CMを中心に様々なプロモーションを展開しているかと思いますが、一番は「電話営業」でしょう。
(装った詐欺があるそうなので気をつけて)

また最近では電力の自由化に伴って、ポイントサービスや他企業サービスとの連携を通した販売活動も行っています。

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PEST分析

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Politics/Political(政治面)
2016年から始まった電力の小売り全面自由化は大きなトピックです。
小売り自由化により、様々な事業者が電気の販売が可能になりました。最初の小売自由化は、2000年3月に始まっており、はじめは、大規模工場やデパート、オフィスビルが電力会社を自由に選ぶことができるようになっていました。その後、2004年4月・ 2005年4月には、小売自由化の対象が中小規模工場や中小ビルへと徐々に拡大していき、そして、 2016年からは、家庭や商店などにおいても電力会社が選べるようになりました。


2015年12月12日に採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定のパリ協定では、各国が2030年までにCo2を中心とする温室効果ガスの排出削減量に対する目標を掲げています。日本は2013年比で温室効果ガスを26%削減することを目標としており、環境に優しい再生可能エネルギーの開発が求められています。

Economy/Economical(経済面)
小売電力自由化によって解放される市場は8兆円(8500万家)と言われており、新規参入によってこれまで以上に様々な事業が活発になり18兆円の市場が生まれる予測がでています。


小売電気事業者数は2019年9月時点で、611件となっています。登録自体は割と簡単にできてしまうとのことで、将来的には1000社も予想されています。また、新電力のシェアは2017年5月に全需要の10%を超えており、ますます競争が激しくなることが予測されます。

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日本の需要(総合)に占める新電力のシェア
(エネルギー情報局)

Society/Social/Cultural(社会/文化/ライフスタイル面)
ESG投資や再生可能エネルギーなどが叫ばれており、環境に配慮した商品開発はこれからも重要なテーマとなりそうです。

ESG投資
従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと。

2016年から2018年までの2年間で、世界全体のESG投資額は34%増加しているとのこと。

Technology/Technological(技術面)
電力自由化に伴い、スマートメーターへの切り替えが始まっています。

スマートメーターとは、電力使用量をデジタルで計量する通信機能が搭載された電力メーター

スマートメーターに置き換えられることによって、自動検針で30分毎の電力消費量などを読み取り、そのデータが電力会社(一般送配電事業者)に送信されるようになります。遠隔計測できるため、自動検針が可能になり、消費電力の見える化が進んでいきます。見える化が進むことで、個人個人の電力消費の詳細なデータに合わせたサービス提供が進んだり、そのデータを活用した様々なビジネスが生まれたりするなど、電力会社のサービス提案の質向上やサービスのバラエティが豊富になることが予測されます。

3C分析

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電力自由化の前は、一般家庭などが選べる電力会社は、東京電力や関西電力、中部電力など、電気事業法という法律で定められた10社(旧一般電気事業者)に限定されていたため、その影響は現在も大きく、東京電力は圧倒的な知名度とシェアを誇っています。

しかし、電力自由化に伴いますます競争は激化していくので、他社サービスと連携した差別化が求められてきます。

SWOT分析

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強み(Strength)
首都圏を中心とした圧倒的知名度とブランドは東京電力の強みと言えるでしょう。送配電事業は政府が許可した東京電力を含めた企業のみ運営が認められています。

弱み(Weakness)
電力自由化以前は、営業しなくても東京電力を導入してもらえたこともあり、企画力と営業力に劣る部分があります。これからの電力自由化においてはさらに企画力と営業力を強化してく必要がありそうです。

機会(Opportunity)
スマートメーターへの切り替えにより、エネルギーのデジタル化が進むことは電力業界にとって大きな機会となるでしょう。電力データを活用した様々なビジネスが生まれていく可能性が高いです。これまでの知名度とトップシェアを活かし、様々な企業と連携したサービス提供を行っていくことでしょう。

脅威(Threat)
なんといっても電力自由化による他社の参入(顧客離脱)は大きな脅威です。2019年8月の時点で東京では20%以上が新電力会社を利用しているとのことで、「知名度」といった強みを生かしつつ、企画・営業力が求められます。

まとめ

電力自由化によって、これまでとは違い競争力が試されるようになりました。電力自由化におけるガス・電気セット販売は競合他社との小さな差別化合戦となっているため、営業力・企画力がより重要になってきます。
「営業力・企画力」の強化ができるかが今後重要なテーマとなりそうです。

一方、エネルギー市場の市場規模は巨大であり、ESG投資や再生可能エネルギーなど叫ばれる中で、エネルギーを活用した新たなビジネス展開は東京電力を中心に盛り上がっていきそうです。

<参考>
https://www.j-cast.com/kaisha/2019/03/11352259.html?p=all
https://diamond.jp/articles/-/195925?page=2
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/merit/
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/pdf/sijyo-gaiyo.pdf
https://www.neweconomy.jp/features/energytech/25610
https://pps-net.org/ppscompany?ppskey=pps195
https://j-energy.info/?page=pps
http://www.tepco.co.jp/about/ir/library/results/pdf/2003q2gaiyou-j.pdf
http://www.tepco.co.jp/personnel/works/works26.html

(2020年1月更新)






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