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あなたの心の中の「気位」を呼び覚ますには、どうしたらいいでしょう?

こんにちは。
前回では、心に「気位」を持つことの大切さを、お話ししました。
では、「気位」を持つには、どうすればいいのでしょう。
今回は、それについてお話しします。

「気位」を持つには、まず「自尊心」を育てることです。
ここでは、ジーン・ウェブスターの小説「あしながおじさん」の主人公、ジュディを例にとってみましょう。

ジュディは孤児院で暮らす孤児です。
子供たちの中では最年長のため、年下の孤児たちの世話をするのが日課です。
ある日、ジュディが学校で書いた作文を、孤児院の評議員のひとりが読んで感心し、ジュディを大学に行かせてくれることになりました。

明るく前向きなジュディは、自分の孤児という境遇を受け入れ、子供たちの世話をし、孤児院の都合で学校に行かせてもらえない日があっても、誠実に務めを果たしてきました。
何の変化もない孤児院での毎日にうんざりすることはあっても、持ち前のユーモアで切り抜け、孤児という自分の境遇を悲観したり、他人を恨んだりしません。

つまり、ジュディには、自尊心があったのです。
自分で自分を認め、卑下しない。
自分の行動に対して、責任感を持っていました。

大学へ行くことで、ジュディは、学科の勉強だけでなく、同年代の少女たちが生まれながらに持っている常識や教養を、日ごとに身につけていきました。
良家の子女たちと交流し、寮生活を共に過ごす日々の中で、ジュディは成長し、磨かれて行ったのです。

そしてついに、ジュディの心の中の「気位」が、おもてに現れる日が来ました。

ジュディの学友のひとりに、ジュリアという、名門一族出身の少女がいました。
ジュディは尊大なジュリアとはうまが合わなかったのですが、ある日ジュリアを訪ねて、叔父のジャーヴィス・ペンデルトンという若い紳士が、大学にやって来ます。
ジュリアの友人ということで、ジュディは、ジャーヴィスと一緒にお茶の時間を過ごすことになりました。

その後もいろいろな偶然や出来事が重なった結果、ジュディはジャーヴィスに好意を抱くようになり、ジャーヴィスもジュディを愛し、とうとう彼女に結婚を申し込みました。
それなのに、ジュディは断ってしまったのです。

理由は、ジャーヴィスは名門出身のたいへん裕福な男性であるのに、ジュディは誰の子とも知れぬ孤児であったから。
そのことをジュディはジャーヴィスに打ち明けることが出来ないでいました。

ジュディには自尊心がありますから、自分がジャーヴィス・ペンデルトンにふさわしい女性であることには、自信を持っています。

彼女の「気位」は、自分が孤児であることなど、ものともしないところまできています。
ただ、もしジャーヴィスの考えが自分と違っていたら。
ジャーヴィスはペンデルトン一族の中では、進歩的な考えの持ち主です。
でも万一、将来、ジャーヴィスがこの結婚を後悔するようなことになったら..。

困り抜いたジュディは、自分を大学に行かせてくれた評議員さん(この人は、ジュディには自分の正体を知らせず、大学に行ったら、毎月一通ずつ自分に手紙を書くように、との条件を付けていました)に宛てて、自分の心情を手紙に綴ります。

「私のような氏も素性もわからない者が、ジャーヴィ坊ちゃまのような家柄の方と結婚するのは正しいことのように思われません。私はあの方に孤児院のことを何一つお話ししてないのです。自分がどこの誰なのか知らないということをあの方に説明するのは、とてもいやだったのです。(中略)それにあの方の一族は気位が高うございますし――私だって気位が高いんですもの!」

この結果どうなったかは、言うまでもないことだと思います。
ジュディとジャーヴィスは結婚し、幸せな家庭を築きました。

ジュディは、いっときは自分が孤児であることにこだわり、ジャーヴィスからのプロポーズを断ってしまいます。
が、思い切って評議員さん(この人の正体は皆様ご存じの通り)に相談したことから、幸せを摑むことができました。

まとめます。
上流階級のペンデルトン一族と孤児院育ちの娘、この両者が、気位の高さでは同じである、というこの点が重要なのです。
つまり、気位の高さとは、どんなひとでも持つことができるということです。

そして、ジュディは孤児院で、誠実に責任感を持って暮らすことで、無意識のうちにも、心の中に、自尊心を育てていました。
その自尊心が、気位を呼び覚ましたのです。

もし、今あなたが幸せを感じられない日々を送っているのなら、ぜひ、自分は気位を持っているかしら、と自問して頂いて、ジュディのように、どんな境遇にいようと、気位を高く持ち、幸せになっていただきたいと願っています。

*引用部分の出典
「あしながおじさん」
ジーン・ウェブスター作
松本恵子訳
新潮文庫(新潮社)

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