「気位の高いひと」が出て来ない作品――「終りなき夜に生まれつく」アガサ・クリスティ
アガサ・クリスティの長編小説「終りなき夜に生まれつく」は、彼女自身が選んだ自作トップ10に入る作品ですが、他の作品と違って、特に引っかかるところもなく、すらすらと読んでしまえる小説です。
そういう意味では、クリスティがメアリー・ウェストマコット名義で発表した、ミステリーではない、通常の心理小説の方に似ているように思います。
そもそもトリックらしいトリックがなく(ここで、「ない」と言い切ってしまうと、間違いになるのですが)、殺人方法にしても、「こんなやり方なの?」と言いたくなる