【き・ごと・はな・ごと(第20回)】秋を知らせる紅い花―彼岸花に寄せて
背中で母の声がする。「ああ、そこにほら、彼岸花!。あの紅い花、彼岸花っていうのよ。お彼岸に咲くから彼岸花・・・・・」
あれは、いつだったろうか。その花の名を、始めて知らされたとき、ああ、この花は死に人の魂を乗せて、あの世から現れたのだ。鮮血のような悲痛な叫びを伴って、きっとなにかを訴えているのだ。とっさに沸き上がってきた思いを、疑いもせずに心の中にしまい込んだのを覚えている。おだやかな田園風景の中で咲き乱れるそのさまは、幼心にはあまりにも強烈すぎた。毒々しくすら写ったっその