本当に好きな音楽とは運命的な出会いを果たせると思うんだ

  最初の出会いはよく覚えている。中学1年の時だった。

 そのころ、人並みに音楽に興味を持つようになってウォークマンを買ってもらった僕は、寝る前にラジオをよく聞くようになっていた。大体いつも聞く番組はNHK-FMのラジオドラマシリーズの青春アドベンチャーだった。オンエアは9時ぐらいだったので少し前からラジオをかけ始める。前番組は音楽番組だった。

 その番組の、タイトルは忘れたのだけれど、その時期にエンディングにかかる曲が毛皮のマリーズのバンドワゴンだった。ラジオを聞き始めたころの13才の私にとって衝撃的だった。いくらかわざとらしく潰した声で、音程も正しいと思えないような感じ。変わった歌い方だなあと思った。

 その番組のエンディング曲は1ヶ月ごとに変わってたはずだから、当然バンドワゴンを1ヶ月ほど聞くことになった。そのためバンド名も曲名も覚えてしまった。しかし、よく思い出してみると他の月のエンディング曲のことなど少しも覚えていない。よほど毛皮のマリーズが衝撃的だったのだろう。

 結果ラジオは高校に上がるころには聞かなくなった。でも、印象的だったから高校生になってから調べてみた。どうやら毛皮のマリーズは僕が高校に上がるまでに解散したようだ。曲をいくつか聞いたけど、やっぱり変なバンドだなと思った。

 大学に上がってから改めて聞いてみた。音楽の趣味がはっきりしてきた時期だ、あっという間に毛皮のマリーズに惹かれた。というよりも志磨遼平に惹かれたと言った方がいい。13才のころは変な歌い方だと思っていたが、そうではない。変なんだけど、まっすぐで不器用でひねくれている。たぶん、人のことが嫌いで人のことが好きなんだろう。必死でありながら今にも崩れてしましそうな声でへそ曲がりな人間愛を叫んでいる。たぶんそういうヴォーカリストだ。

 現時点で間違いなく志磨遼平のファンであることを認めざるを得ない。これは清志郎とブルーハーツを通ってきた自分にとっては順当な結果である。技術的なうまい下手を超えたところにある歌を聞かせてくれる存在だ。そして、思うに13才の時点で偶然にも出会ってしまったのは運命だった。突然ラジオで流れてきた曲を10年近く引っ張って、ようやく心を掴まれる。壮大なる伏線回収である。 

 そして、その強烈な巡り合わせは、数ヶ月前に実家に帰ったときまで続いた。母に志磨遼平が好きだといったら「私も好きだよ」と返ってきたところまで続いた。やはり血は争えない。


https://youtu.be/wUlblLp6cl0

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