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夜更かしについて

 夜更かしをしがちな人生を歩んでいる。

 なんてことはない。好きな音楽を聞いたりアニメを見たりゲームをしたり、真面目にもレポートを書いたり。時計を見ると2時を過ぎていることはザラである。

 仕方がないことである。子供のころからふさわしく育てられた私は世間の平均的な親がそうするように両親から「夜更かしはよくない」「早く寝なさい」と言い聞かされた。テレビを見ても本を読んでも、早寝早起きがいかに健康的で夜更かしがどれほど人体と精神とに悪影響を及ぼし人を廃人たらしめるか、ということばかりであった。
 当然、するなといわれたことほどしてみたくなるのが人間の心理であるから夜更かしというものへの背徳感と、そこからくる快楽といったらたとえようもない。徹夜で一本のゲームをクリアした時の異様な疲労と高揚感は一度味わったら麻薬のように病みつきになる。

 今日という日が去るのが惜しいときも人は夜更かしをする。寝る暇も惜しい、もっといろいろなことがしたい。労働や勉学に費えた一日を取り戻したい。そんなもったいない精神が人々を日付が変わるまで動かし続ける。

 しかし、もうひとつ夜更かしへの原動力がある。とすれば、明日への拒絶だ。人生に希望を見出せず、あるいは受け入れがたい命運が待ち構えているときに、自分が眠らない限り明日がくることを拒否できるのだ。しかし、無情にも明日という日はすべての人に訪れる。気づけば東の空は明るみ、鳥は鳴き始める。私たちが生きなけらばならない今日という日がはじまるのだ。

 と、夜ずっと起きていた男が朝方に思ったのであった。

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