寒鯉

生家には昔、池があった。池には鯉がいたそうだ。町屋の長屋のような家。しかし、私が生まれた頃に、庭を潰して建て増ししたものだから、池は形式として残ったものの、水の張られたのを見たことがなかった。
雪のちらつく寒空の中、一人傘を差して歩くと、公園の川底に鯉を見た。ほとんどが黒い、よくある公共の鯉たちの群れ。冬に備え丸々とした鯉たち。凍てつくような寒さの中、静かに宙を漂っている。それをじっと見つめながら、思考は空を駆け、かつてのあの池にも冬があったのだ、と想いを馳せた。

1月18日

寒鯉(かんごい)

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