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カラカッタと言った日

私は、辛いものが好きだ。
昔は全然食べられなかったのに
ある日突然抑えきれない辛いもの欲が湧いてきて、以来大好きだ。

辛くて、熱くて、汗と涙でドロドロになりながら、それを冷ますために酒を煽り
翌日、通り道と出口が大火傷してこの世のものとは思えない苦しみを味わうまてがワンセット。

そういう地獄ありそうだよね。

それすら好きだ。

月曜 辛いラーメン
火曜 辛いラーメン
水曜 辛いラーメン
木曜 グリーンカレー
金曜 辛いラーメン

こんなスケジュールを組むくらい好きだ。

職場の先輩に紹介してもらった、人当たりの良さそうな男性に無理を言って
焼肉デートの後に辛いラーメン屋に付き合ってもらったことがある。
彼は食べている最中からもう腹を壊して
斜めになりながらもなんとか歩き、タクシーを拾い、私にタクシー代を手渡して、さっきよりもっと斜めになりながら帰っていった。
その説はどうもありがとう。

以降、連絡はない。

それくらい好きだ。

先日、中国人が夫婦経営してるタイプの中華料理屋に行った。見知った辛いラーメンと、見慣れない辛いラーメンがあり、どっちが辛いか聞いた上で、見慣れない辛いラーメンを頼んだ。

中国人にしては感じのいい奥さんが
「カライヨ。」
と言って私の机に器を置いた。
中国人が言うのだからよっぽどだ。
だって、国旗まで赤なんだぜ。

ところが
辛くなかった。
全く辛くなかった。
あ、なるほど!後からくるタイプの、、、、違うなぁ!!

「すみません、全然辛くないので辛くしてください」と言おうと思って手を上げ、、
、、でもそんなことをして、、、大丈夫かな。
なんたって相手は中国人だ。

そもそもこちらが日本人だから
手加減をしてくれてるのかもしれない。

軽はずみに、そんなことを言って
彼女と奥にいるご主人の中華魂に火がついたらどうしよう。

とんでもなく辛いのが出てきて
通り道、全部がただれて全治一週間とかになったらどうしよう。
もし残しでもしたら、
大盛りを頼んでおいて食べ切れない奴と同じくらいの大罪だ。

そうこうしているうちに、食べ終わってしまい奥さんが器を下げに来た。

ニッコリほほえむので、つい


「ふぅ、、カラカッタです。」

と何故かカタコトでおべんちゃらを言ってしまった。全くもってノーダメージの唇をペロッとなめる演出までして。

己に負けたのか
中華人民共和国の虚像に負けたのか
今ではもう、わからない。

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