世界一寛容な夫に引かれる「オンライン会議コーデ」
私の夫がいかに寛容かを説明する
世の中の全・妻に申し訳ないが、私の夫は世界一寛容だ。(私調べ)
私の夫が世界一寛容なことを裏付ける証拠として、夫の意味のわからない発言の数々が挙げられる。その中で2つだけ例を挙げたい。
世界一寛容な夫の名言1.「こんな部屋に住んでるきえちゃんがかわいそう」
私の辞書に「片づける」という言葉はない。いや別に掲載しなかったわけではなく、何度掲載してもインクがすれて消えていってしまうのだ。なんとかオシャレな言い方をしてみたが、つまるところ片づけられないというだけである。いやただ、私が片づけられないのは私の怠惰によるものではなく、生まれたときから、何なら母のお腹の中から持ち合わせていたDNAだということを主張させてほしい。
こんなに序盤から脱線する文章も珍しいと思うが、2歳のときのホームビデオを観てもらいたい。
ビー玉で遊ぶ私。「お片付けして」と優しく諭す父。「缶に入れるんでしょ」と具体的にアドバイスをしてくれる。「缶に?」と繰り返して父の言っていることを理解し、おとなしく従うかと思いきや、その2秒後にはビー玉を怒涛の勢いで目の前に投げつける。時速160キロを超える勢いだ。もはや大谷翔平か2歳の私かである。恐ろしいほどの強い意志を持って片づけない姿勢を見せている。
こんな風に、幼い頃から片づけない性質を持ち合わせていた私なので、成人してからも当然のように片づけられない。そろそろ片づけられないことに対する開き直りと言い訳が恥ずかしくなってきたが、ここまで来たので続ける。私はいまの会社に入社してから3年間、地方転勤になりひとり暮らしをしていたが、私が暮らした部屋はそんなわけで、あっという間に「汚部屋」になった。もう、文字で書いた通りの「汚部屋」である。本当に汚い。どのように汚いかというと、洋服などが散乱しているだけではなく、ゴミも散乱している。当時ハマっていたファミリーマートの「デミグラスソースオムライス」のプラスチック容器がそのまま床とかに置いてある。文字通り足の踏み場がない。生活する場所がベッドの上半径1.5メートルほどしかなかった。時代が時代なら夕方のニュースで「片づけられない女」として特集されている。
さて、私の住んでいる地方に遊びに来た、当時彼氏だった夫。夫は鬼のように寛容(?)なので、私は汚部屋もものともせず彼を部屋に上げた。なんなら「一緒に片づけて」とか言った。部屋に入ってきてしばらく沈黙している彼に、私はたしか一応「ごめん、やだよね~」みたいなことを言った。それに対して彼が放った言葉。それが、これである。
なんか、こんな部屋に住んでるきえちゃんがかわいそう
いや、かわいそうじゃねえ~~~~~!!!!!
自業自得~~~~~!!!!!!!!!!
私は錯乱した。え、私誰かが故意に散らかした部屋に住んでた?この部屋私をいじめるために誰かが故意に服とかゴミとか散乱させたんだったっけ???いや、違う、この部屋は私が、まぎれもない私が散らかしたのである。
どこからかわいそうという考え方が出てくるのか???なぜ、この部屋を散らかした私を全面肯定したうえで私とは関係ないものとして切り離して考えられているのか?????まったく理解できない思考回路だったが、とりあえず怒られなかったので結果オーライとして一緒に片づけてもらった。(ありがとう、夫)
そんな私に、一緒に片づけながら夫がしてくれたアドバイスは
きえちゃん、ゴミは床に捨てちゃダメだよ
である。
「包容力」を売りにしている世の男性諸君。パートナーに「ゴミは床に捨てちゃだめだよ」と優しくアドバイスできるか、一度胸に手を当てて考えてみてほしい。少なくとも私はできない。
私が散らかした汚部屋に住んでいる私を見て「かわいそう」と言い、床にゴミを捨てないように教えるのが、すべてを包み込む我が夫である。これが本当の優しさと言えるのかどうかはわからない。とりあえず尋常でないのは確かである。
世界一寛容な夫の名言2.「え、俺いま一人暮らしで家事も自炊もしてるけど、それが2人分になるだけでしょ?」
我が夫は寛容(?)なので、上述のような汚部屋に住んでいる私でもなぜか受け入れてプロポーズをしてくれた。その際、私は不安になって、「はい」と言うまえにロマンスもクソもなく「え、待って私家事とか全然できないけど大丈夫?料理もできないし家もこうやって片づけられないしストレスたまると思うよ?」と言った。
それに対して夫が放ったのがこの言葉である。
え、俺いま一人暮らしで家事も自炊もしてるけど、それが2人分になるだけでしょ?
そういうことじゃねえ~~~~~!!たぶん!!!
なんで「え?」みたいな「何を聞いてきてるんだこいつ?」みたいなきょとん顔で言ってるんだ~~~~~!!!
どうやら、2人で住んだからと言って家事や料理を分担するという発想がなかったらしい。自分がやる一択だったようだ。もはやこれが寛容性なのかは本当にわからない。(ちなみに、さすがに一緒に住むと一応私も料理とか家事とかしている(保険))
これまでお読みいただいてきたように、私の夫はもはや「寛容」と言えるかどうか定かですらない寛容性を持ち合わせている仏のような人物である。
彼はブッダであるだけではなくイエズス・キリストでもあるので、私がお風呂上りに彼の部屋の扉を突然開けて半裸で踊り出してもただ爆笑しながら見ている、つまり私に「赦し」を与えている。
そんななんでも「赦す」夫に、先日、ドン引きされる事件が発生した。
近ごろの私のオンライン会議コーデ
夫の寛容さをお伝えするのに大分尺をとってしまったが、ほんとうに伝えたいのはここからである。
私の勤務先は3月から完全リモートワークの体制を取っており、当然ながらオンライン会議なども増えてきた。そこで多くの人が悩みを抱えるのが、「オンライン会議のためにどんな服を着るか」だと思う。
会議などなければ、私のような怠惰な人間はパジャマやら部屋着やらで起きたまま仕事をするのだが、会議で同僚に胸から上を見せるとなると、さすがに私の「MEDAMAYAKI」と書いてあって目玉焼きがあしらわれたお気に入りのパジャマ姿をさらすわけにはいかない。(皆さんにMEDAMAYAKIをご覧に入れるために両肘を張り続けた私の努力を見てほしい。筋肉痛になりそう)
ただ、かといって白シャツやオフィスに着ていくレーヨンのブラウスなんかを家で着ているのも、ちょっとやりすぎ感があってなんかダサい。
というわけで、私がたどり着いたのが「え、きえさん家着なのにめっちゃおしゃれ~!」と思われる超絶おしゃれなカジュアルスウェットである。
私とオンライン会議する同僚たちはこのおしゃれさに目がくらんだようでほとんどコメントしてくれなかった。当初は。
ところが、これも一日おきに着続けているとだんだん慣れてくるようで、ちらほらコメントする人が現れはじめた。「ジェリー、かわいいね」。センスがある。
これが、一週間ほど経つとだんだん「オンライン会議名物」のようになってきてしまい、これ以外のTシャツなどを着ていると「あれ、今日はジェリーじゃないの?w」などと半笑いでいじられるようになってきたので、徐々に腹が立ってきてやめた。私のおしゃれスウェットは見世物ではない。
腹が立ったので、次の週はまた違うおしゃれスウェットを着てオンライン会議に臨んだ。
不安になってきたので一応明言しておくが、一応、私は大手企業でまじめに働く一介のサラリーマンだ。
これもまた好評で、何日か反復的に着ていると「ギズモ、かわいいね」と言ってくれる人が出始めた。センスがある。「ねーこれかわいいですよね~~」とかいってちょっと喜んでしまった。
とはいえ、正直私も社外の方と打合せするときにおしゃれカジュアルスウェット上のジェリーやギズモを堂々と見せるほどの天才肌ではない。社内ならいいのかというツッコミは置いておいて、先日、社外の方と打合せのあるとある日に、茶色いちょっとちゃんとしたシャツを着た。
ただ、時代はオンラインである。リモートである。社外の方には私の胸から下は見えない。一日中座っているなかで苦しい思いをしたくなかったので、下半身はお気に入りのMEDAMAYAKIスウェットのハーフパンツを履いていた。
完全に「立ち上がったら終わり」である。
「私下半身はMEDAMAYAKIスウェットで~~~すwwwww」と思いながらする社外の方とのオンライン打合せは、何かクリエイティブなアイデアが生まれそうなわくわくするものがあった。
ひとつ哀しかったことがある。
私がこの格好のままリビングに出てお昼ご飯を食べていると、夫が部屋から出てきた。私にちらっと目をやり、小声で一言。
すごい格好してるね(笑)
引いてる~~~~~!!!!!
完全に引いてる~~~~!!!!
(笑)、もとい、(苦笑)がついてた~~~~!!!!!(死語)
あんなに寛容ですべての行動を赦す、なんなら裸踊りまで赦す夫が、私のオンライン会議コーデには引いていた。(正直、夫の琴線に触れるポイントがまったくわからない)
とても哀しかったが、背に腹はかえられない。私は社外の方に上半身だけきちんとしていると思われればそれでいいし、ずっと自室の安物の椅子に座っていると腰が疲れるのだ。MEDAMAYAKIハーフパンツくらい許してほしい。
その後も、社外打合せのたびに「上半身はレーヨンのフリフリブラウス、下半身はWARAって書いてあるスウェット」「上半身は白いYシャツ、下半身はOKOって書いてあるスウェットでシャツイン」などと続けていたら、部屋から出るたびに夫が私の全身に一瞥し、ちょっと苦笑いしてトイレに行くようになった。
もはやコメントすらくれない?????
コロナ離婚ってこういうところから始まるのか???????
何度も言うが夫は私が風呂上りに彼の部屋のドアを突然開けて半裸で踊り出しても爆笑して「本当に結婚してよかった」とか言う得体のしれないブッダでありイエズス・キリストである。なぜオンライン会議コーデには(苦笑)なのかはよくわからない。
何にせよ、私は彼が(苦笑)しなくなるまで断固としてこのファッションを続けようと思う。背に腹はかえられないのだ。
皆さんもぜひ、上半身だけきちんとして見えて下半身は楽な最先端「オンライン会議コーデ」を試してみてほしい。終わり方がわからなくて、アフィリエイトブログみたいな締めになってしまった。ごめん。
夫、(苦笑)すらしなくなったらやばいかな?
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