【短編小説】世話をやく
「もう、ちゃんと手をつながないと迷子になっちゃうよ!……お父さんが」
保育園の帰り道、思い付きで足してみた一言だった。
言ったそばから、「(俺が迷子になるんかい)」と自分で笑う。
ほんの冗談のつもりだったが、思いのほか真剣な娘のまなざしが、俺を刺した。
「お父さん、手つなぐ!」と娘が慌てる。
3歳になって、たしかにおままごとに目覚めてはいた。レッサーパンダのぬいぐるみを診察していたり、トイレットペーパーの芯を救助していたり、なんだかよくわからない紙くずにお菓子を分けてあげ