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黄色いダンゴムシの可能性

朝、まだ夫婦二人が眠る枕元で、息子が「キイロイダンゴムシ。ネェネェ、キイロイダンゴムシ」とか言い出したものだから、虫が苦手な妻が飛び起きて、「黄色いダンゴムシ……?何…?どこ?どこで見たん?ここにいるの?何…!?おい!黄色い、ダンゴムシ!?き、黄色!?」と息子を詰問していた。

僕は寝ぼけた頭で、布団が引っぺがされる風を感じながら、「(どうせ夢でも見たんやろ…。クソが…。ワケのわからんフレーズで起こしやがって……)」と、決して気持ちよくはない目覚めを味わっていた。

息子も妻の詰問にビビって、「ソレハ、イマセン……」とか言い出して、結局まあ黄色いダンゴムシなど見つからず、それぞれ支度して出勤。

で、何の気なしに「黄色いダンゴムシ」で検索したら、これよ。

おい、こんなもんが我が家の布団におったかもしれんのか…?
嘘やろ……?
ちょっと、やめて……?

「黄色いダンゴムシ」のことなんて、人生で考えたことなかったって。
「黄色いダンゴムシ」なんて初めて言うたし。その、そんな概念がなかったって。そんな概念がないまま人生フィニッシュしたかったわ。
なんやねん、黄色いダンゴムシ。ふざけんなよ。なんちゅう言葉や。

黄色いダンゴムシなんか、おらんほうがええやろ。
どう考えても。
あかんやろ。黄色かったら。そんなもん。

もっと怖いのが、ダンゴムシじゃなかったときよ。
ダンゴムシに似た形状をした、黄色い、別の節足動物やったら、どうすんねん?
どないしてくれんねん、そんときは。

頼むから夢であってくれ。息子の。

ほんでそんな夢見んな!
なんや!黄色いダンゴムシて!
そんな子に育てた覚えはない!!

黄色いダンゴムシなんて、そんな、そんな概念を持つな!
黒でええやんけ!!
ダンゴムシは、黒い生き物でええやんけ!

持て!そんくらいの固定観念!
ええねん!クジラを虹色で描きますみたいな、そんな感性捨ててまえ!
ダンゴムシは黄色くない!
しょうもないこと言うな!!!!!
もっと、凡に徹せ!!!!

二度とするな!
黄色いダンゴムシの話は!!!!!

もう、虫に、興味を持つな!
都会的に生きろ!
そういう、自然とかは、もう、画面越しに憧れろ!!

触るな!草とか、土とかに!
iPhone貸したるから!!
ええねんもう、そんな、生命の神秘とかは!
時代がちゃうねん!!
もっと、タッチスクリーンに慣れて、物理的感触のない世界で生きろ!

何が「黄色いダンゴムシ」や!!!!!
なんやその言葉は!!!!!

二度と口にするな!!!!!!

(了)

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