見出し画像

1枚撮りにこだわるスタイル

今回は、「1枚撮り」すなわち「合成なしのワンショット写真」に対する考えを書いていきます。

なお、この文章はあくまで私見であり、合成を批判・否定するつもりは全くありません。

また、ここでいう合成とは、同じ場所・連続した時間で撮影したデータを合成する写真のことであり、現実にあり得ないもの同士を組み合わせるアート的創作表現は含みません。

私は合成をしない・できない

私は基本的に1枚撮りにこだわって作品を発信しています。センサーダスト除去や飛行機の光跡除去程度の修正は行いますが、複数の写真を合わせることはしません。表現上、比較明合成で星の周回運動を作品にすることはありますが、非常にまれです(ヘッダーの北天周回も1枚撮りです)。そこには、「しない(意志)」という面もあり、「できない(不可能)」という面もあります。

1枚撮りにこだわる(合成をしない)理由

なぜ合成をしないのか、そこには、1枚撮りに感じられるリアリティと、制限の中にこそある楽しみがあるからです。

~リアリティ

まず、1枚撮りには、1回きりのシャッターで写し撮った現場データ、というリアリティがあると考えています。最近では、風景の被写界深度合成や、星空と地上の景色を別撮りして合成する手法がかなり一般的になってきました。しかし、たとえほんの短時間であっても、微風ひとつで葉の位置は変わってしまいます。また星空についても、別撮りすることで、完全に正確には星の位置が再現できないのではないでしょうか。現実と多少ずれがあっても、パンフォーカスや画質の良さを選択する、ということもひとつの選択肢。しかし、私個人としては、それよりも、できるだけ現実的なデータをもとに現像するところに、面白さを感じているのです。価値をどこに置くかであり、否定・批判、という論争はナンセンスです。もしかしたら数年後、私も価値の選択を変えているかもしれませんしね。

極端な話、パール富士のような「予定された奇跡」を合成で表現しても、リアリティがないどころか、興ざめではないだろうか(2021)

 また、ここまで読まれると、「現像処理をしている時点で、リアリティは失われている」というご指摘もあるかもしれません。それはごもっともと思います。しかし、撮影時に色味やコントラストを調整している時点で、後から現像処理をしても同じことなのも事実です。乱暴にいえば、その調整を撮影前にするか撮影後にするか、の違いだと思います。

~制限の中の楽しみ

もう一つの視点として、「何でもあり」にせず、「1枚撮り」という枠の中で限界に挑戦するからこそ楽しみが増す、と考えています。釣りが趣味の私の父が、「限られた小遣いで針や糸を買い、それらをどう組み合わせて思い通り釣るかを考え実践するのが面白い」と以前言っていたことがあります。その息子なのだな、と恥ずかしながら納得。「合成を封印することで、制限の中で最大限の作品を作れるよう考え実践する」ことに面白さを感じているのだと思います。

ノイズ感や被写界深度の浅さも含めて、1枚の中で勝負する面白さ(2020)


~フォトコンテストへの汎用性

さらに視点を変えると、フォトコンテストへの汎用性、といった理由もあります。日本のフォトコンテスト、特に「素材収集」系(参照https://note.com/kidskatsuya/n/n284dbcc7c68a#05d926c7-34f5-4b55-b7e8-6051681d53f1)では、合成を禁止しているものが多くあります。表現上必要なものであったとしても「合成したら本来のその場所の景色ではない」という考えが、まだ根強くあるのでしょう。1枚撮り(合成なし)での作品制作に慣れていれば、こうしたフォトコンテストでも、最大限自分のよさを発揮することができます

私にとっては、SNSよりもフォトコンテストの優先度が高いのである(2020)


1枚撮りしかできない(合成ができない)理由

仮に私が「合成をしたい」と思ったとしても、残念ながら現在の私の環境では残念ながら合成処理をするのは難しいです。

~ソフト面から

まず、私はフォトグラファー必携の「Adobeフォトプラン」に加入していません。運よく、買い切り版が終売される直前に「Lightroom」を導入したため、その後もそれを使い続けています。確かに最新機能(特にテクスチャ調整やカラーグレーディング)が使えないのは苦しいですが、どうにかなるものです。さらに、2017年9月以降に発売された機種のデータ読み込みもできませんが、作品化するRAWデータはすべて「DxOPureRAW」で変換しているため、結局手間は変わりません。「Photoshop」を使ってみたい気持ちはもちろんありますが、撮影回数の減った私に年間13000円弱を払い続ける意味がどれほどあるか?と考えると、まだ導入に踏み切るには至っていないということです。

星景などの高感度撮影ではDxOPureRAWは必須。となると、旧版のままでも、読み込みの手間は変わらない(2022)


~時間面から

以前に比べ趣味にかけられる時間が減ったことを考えると、1枚の作品制作に多くの時間を費やすスタイルはあまり現実的ではありません。時間をかけて星空と前景の撮影データを回収し、現像でも位置合わせやマスク切りに時間をかけ、大作を1枚仕上げる、というのは、あまり今の私には向いていません。1枚撮りで気軽に撮り、また構図を変えて撮り、と1回の撮影で何枚も作品データを回収し、現像も短時間で済ますという今のスタイルの方が、私には適していると考えています。

特に磯場では数cmの調整で無限に構図が組めるため、1回の撮影で多くの作品データの回収が可能だ。ずっと同じ構図を固めているのはもったいない(2021)

みなさんは積極的に合成技法を取り入れていますか?或いは私と同じように1枚撮り派ですか?

それぞれにメリット、デメリットがあると思います。合成、ぜひチャレンジしなよ、というお誘いも待っています。笑

お気軽にコメントしてくださいね!

それでは!


この記事が参加している募集