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エピペン®の使い方

食物アレルギーの症状が強く出る方には「エピペン」が処方されることがあります。エピペンってなに?、どう使うの?、今回は、そのエピペンについて書いてみます。

「エピペン」とは、アナフィラキシーになった時に、ご本人がご自身で迅速に打てるようにした、「アドレナリンの自己注射キット」のことです。エピペン注射により、アナフィラキシーの進行を一時的に緩和することが出来て、「病院での治療を受けるまでの時間稼ぎ」となります。


アドレナリンとは

アドレナリンは、もともと人体内にある、副腎から分泌されるホルモンです。緊張した時や怒った時の動悸(どきどき)や汗かき、手の震えなどはアドレナリンの影響です。アドレナリンは、簡単に言うと、体を戦闘体勢にするホルモンです。

緊急時にアドレナリンにより期待される効果は、「気管支を拡げ、呼吸状態を改善」したり、「心臓の機能を増強し、血圧を上昇」したり、と生命の危険をダイレクトに改善してくれます。

アナフィラキシーとは

じんましんなどの「皮ふの症状」、唇の腫れなどの「粘膜の症状」、咳やゼーゼーなどの「呼吸器の症状」、嘔吐や腹痛などの「消化器の症状」、意識障害や血圧低下などの「全身の症状」、など、様々な臓器の症状が、それぞれが高度に、しかも複数同時に現れる、重篤なアレルギー症状のことを言います(血圧低下や意識障害があったら、単独でもアナフィラキシーとして対応します)

*多くの症状があっても、それぞれが軽い場合は、アナフィラキシーとは言いません。例えば、じんましん1個、粘膜のわずかな腫れ、咳少し、お腹痛い気がする、みたいは場合は、まだアナフィラキシーではありません。ただ、それらの症状が悪化しないか確認が必要です。


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‪*最もグレードの高い症状により判定‬

・グレード1の症状が複数あるのみではアナフィラキシーとは判断しない‬

グレード3の症状、グレード2以上の症状が複数ある場合はアナフィラキシーと診断‬

こちらのnoteも参考にしてください↓

エピペンの効果

エピペンを打って「2-3分以内」に効果が出ます。また、通常、「15-20分程度」で効果が落ちてしまいます。

特にアレルギー症状が重症な場合には、繰り返してエピペンを打つ可能性があるため要注意となります。

エピペンを使用した際は、必ず速やかに病院を受診してください(必ず救急車要請してください)。エピペンの効果は一時的ですので、油断は禁物です。

エピペンの副作用

エピペンの副作用は、血圧の上昇や心拍数の増加に伴う、動悸、頭痛、振せん(震え)、など、だけです。そもそものアドレナリンの作用が「強めに出ただけ」です。

高血圧の方やご高齢で血管がもろくなっている方に使用した場合に脳血管障害などが起こる危険性はありますが、「近くの方が本人の代わりに打つだけ」ですし、通常、お子さんにそのような病気があることは滅多にありません(もし何かトラブルが起こっても、本人の代わりに打つだけですので、そうなるようであれば本人が打ってもトラブルとなるはずで仕方ないと判断されます)

「副作用はほぼ無し」、「アナフィラキシーは危険」ですので、エピペンを打つことを迷ったら、ぜひ打ちましょう。

誰かが打っても良い?

症状が強く出ている、まだ力か弱い、などで、本人がエピペンを使用出来ない場合には、親御さん、教職員、保育士さんが、本人の代わりにエピペンを打ってあげても構いません。あくまで「本人の代わりにその方に打つだけ」です。

人命救助のために、その場に居た方が、本人の代わりに打つことは、医師法違反にはならず、その責任も問われません。

もちろん、傷つける意志があったり、悪意を持って不必要に反復して使用する場合はダメです。

エピペンは、打つ前も打ち終わっても、「最初から一切、ずっと針は見えません」。エピペンは危険な注射ではありませんが、どうしてもエピペン使用が困難な場合は、早急に救急車を呼びましょう。救急車で救急救命士さんが来てくれれば、適切にエピペンを打ってくれます(地区にもよりますが、アナフィラキシーでの救急要請の場合は救急救命士さんが乗って来てくれることが多いです)

エピペンを使用すべき症状

アナフィラキシーの時にエピペンを使用しますが、具体的に、どのような症状でエピペンを打つかの判断はなかなか難しいため、小児アレルギー学会から、「エピペンを打つべき症状」が示されています。

「下記の症状が1つでもあればエピペンを使用すべき」となっております。

ちなみに、皮ふの症状だけであれば、いくら症状が派手であっても、エピペンを打つ必要はありません。

「エピペンを使用すべき症状」

全身の症状:
唇や爪が青白い
脈を触れにくい・不規則
意識がもうろうとしている
ぐったりしている
尿や便を漏らす

呼吸器の症状:
のどや胸が締め付けられる
声がかすれる
犬が吠えるような咳
持続する強い咳込み
ゼーゼーする呼吸
息がしにくい

消化器の症状:
繰り返し吐き続ける
持続する強い(がまんができない)おなかの痛み

*これらの症状が無ければ、エピペンを打ってはいけないという訳ではありません。打つべき症状かどうか迷う時、進行が早そうだと判断される時には、エピペンを打っても構いません。その場合、救急要請はエピペン接種と並行して行って下さい。

エピペンの使い方

①エピペンの真ん中を「利き手でグーで握る」

②反対の手で、青色の安全キャップを外す

③エピペンの先を太もも前外側に垂直に当て、カチッと鳴るまで「強く押し付ける」

太ももに押し付けたまま「数秒間」待つ

⑤ニードルカバーが伸びて終了

参考:mylan エピペンの使い方
https://www.epipen.jp/sp/howto-epipen/use.html


エピペン使用の注意点・コツ

・必ず最初に「利き手でグーで持つ」

利き手で最初に持たないと、打つ前にエピペンを持ち替えて落とす、持ち替えて上下反対になる危険があります。上下反対で指を立てて持ってしまって打つと、自分の指を刺す危険がありますので、それを無くすために、最初から利き手で持つ、持ち替えないようにします。

エピペンの針は、最初から最後まで一切見えないですが、太さ1㎜弱、長さ1㎝強、程度となっております。

長さも太さも充分にあり、ジーパンの上からでも打てる、上下反対で誤って打てば指を貫通してしまいます。

ナイロンのスカートやウインドブレーカーなどで滑りそうであれば、少しずらして直に打つと良いでしょう。

・エピペンを打つ場所
→太ももの前側から外側の筋肉

太もも内側には、太い血管、神経があるため、避けてください。膝の骨、腰の骨に刺さないように、太ももの筋肉に垂直に当ててから、強く押し付けます。

・ポケットの中身に注意

ポケットの中に何か入っていた場合、その物体を刺してしまって、筋肉に刺さらない危険があります。お子さんはポケットにいろいろな物を入れてある可能性があります。エピペンは1回打つだけの製剤ですので、1回使用してしまったらもう打てません。

・当ててから押し付ける

エピペンを振りかぶって打ったりすると、お子さんが暴れて逃げて際に違う部位に刺す危険、床などに刺す危険があり、しっかり当ててからその後ぐっと押し付ける必要があります。エピペンは1回しか打てません。

・しっかり固定して打つ

エピペンを打った瞬間にお子さんが暴れると、エピペンの針が出た状態で針を動かすことになりますので、お子さんの筋肉を裂く危険があります。

【エピペン使用のまとめ】

(エピペンの使い方)
・利き手でグーで持つ
・足に当ててから、グッと押し付ける
・5秒間、そのまま待つ

アナフィラキシーは危険である、エピペンの副作用はほぼ無し、ということを考えれば、打つメリットしか無い

あくまでも本人の代わりに打つだけ 

ためらって時間を浪費することは良くありません。すぐに救急要請して、その間にエピペンを打つ、無理そうなら安静にして救急隊を待つという選択肢もあります。

よろしくお願いします。

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