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文章青年:1900年前後の地方青年の文筆活動

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1900年前後の地方青年による文筆活動の多様な方向性をとらえることで、その「文学」の領域と実態について考察します。2020年度に総合研究大学院大学に提出した学位論文から、トピック… もっと読む
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文章青年03 1900年代の地方雑誌

文章青年03 1900年代の地方雑誌

1900年前後の地方における「文学雑誌」
 小木曽旭晃『地方文芸史』に取り上げられている雑誌は自ら「文学雑誌」を名乗るものがほとんどであり、ジャンルは小説・新体詩・和歌・俳句・漢詩文・「美文」といった文芸に限られ、論文も「漢詩、漢文、論文等の硬派文学」という範疇に入る。それらの文芸は俳諧や漢詩文の既存の結社や私塾に依存したものではなかった。旭晃の考える「地方文壇」とは「東京を除きたる、所謂日本六十

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文章青年02 1890年代の地方雑誌

文章青年02 1890年代の地方雑誌

1890年代の地方における文芸と言論の混淆
 少しさかのぼって1890年代の文芸を扱う地方雑誌を見てみよう。小木曽旭晃『地方文芸史』(教育新聞発行所、1910)は、1900年代の地方で文学活動をしていた当事者による同時代史としてほぼ唯一のものである。旭晃は序で日清戦後を「明治文学の発展第二期」ととらえて「地方文壇」が活動を始めた時期とし、「日清戦役以後現在に至る十五六年間は将に地方文壇の全盛時代」

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文章青年01 地方青年の多元的文筆活動

文章青年01 地方青年の多元的文筆活動

『田舎教師』による地方文学青年の類型化 日本では19世紀初頭から全国的に読み書き能力を獲得する動きが進み、さらに「学問」による階層的流動性の進行が本格化した。「立身出世主義」の時代の到来にともなって、「学問」の基盤となるリテラシーの向上を目指す若年層が急増した。当初、彼らの多くは没落士族か、都市及び農村の経済的に恵まれた若年男性であったが、公教育の整備と共にリテラシー向上を目指す層は拡大し、『穎才

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