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ラダック⑥ ダー編 -vol.1-

2011/09/20

ダーはレーからシュリナガル方面にバスで7~8時間行ったところにある、インダス川の渓谷に囲まれた静かな田舎町。ラダックの荒涼とした風景とは違って、木々や果物などに村の中が包まれている。
車のクラクションなどの騒音や喧噪とは無縁で、そこに住む人々や風景からは瑞々しさを感じることができる。インドで疲れた人には最高の場所かもしれない。
人々は、ちょっと掘りが深い顔立ちをしていて、昔は頭や帽子にお花をつけている民族だったので、そういう珍しさから、昔の風習を忠実に再現する村のお祭りにはたくさんの観光客が集まるらしい。

ただ、ダーはパキスタンに近いエリアなので、入るためにはパーミッションを取る必要がある。
パーミッションは単独では取れず、複数人で取らなければならない。ほとんどの人が代理店で申請をする。
おそらく外国人管理事務所でも可能なんだと思うけど、わたしも、友人数人と一緒に代理店で申請をした。
確か、ひとり120rsぐらいだったと思う。パーミッションは、5日間だけのものなので、長期滞在することは原則としてはできない。
わたしは、食中毒で出遅れたので滞在は3日のみとなった。2泊が限界ということ。

まず、レーのバスターミナルでダー行きのバスを見つけるまでに一苦労だった。
散々たらい回しに遭い、20数キロを持ってターミナル内をぐるぐる廻される。
ターミナルのおじさんに聞きに行ってやっと本当のバスが分かったけれど、チャイをほぼ強引に飲ませてくれてその代償として、ほっぺにキスをかなり力ずくでさせられる。意味が分からないセクハラ。
これが、インド初のセクハラだった。インド人は本当に力ずくで来るので、物理的な距離が大事!

バスに乗り込むと、すでにバスは満席。これぞ、ローカルバスぞ!という土ぼこりとダーの方々がびっしりの状態。この時は、まだいろいろ不安で人ひとり分もあるバックパックをバスの屋上に載せられなかった。すでに席はなかったんだけど、どっかの人のいいおじさん(後でラマさんだと判明)が英語ですでに何かもので席確保されている席を『座っていいよ』と提供してくれた。

隣のおばさんは『はーーー?!』みたいなブーイングしてて、わたしはちょっと戸惑ったんだけど、ここは座っとかないと!と半ば強引に座らせてもらう。あとで帰ってきた席を確保していたと思われるおばさんも大ブーイングだったんだけど、おじさんが何やら交渉してくれて、なんとかわたしは座れることになった。
一番前の通路側だったもので、乗ってくる人乗ってくる人、ほぼ乗っかってきてたけど...。
最初は警戒気味だったダーの方々も、わたしがカンニングペーパーを使用しながらも、ラダック語で必死にコミュニケーションを取ろうとする様子に同情したのか、だんだん心を開いてくれるようになった。

途中から乗ってきたご家族に赤ちゃんがいたので、席を譲ろうとしたら赤ちゃんだけを頼むとわたしの膝の上に乗せた。まわりの皆さんは『あら、この子はジャパニの子どもだね~』なんていう冗談も言ってくれたり。
トイレ休憩で止まれば、どこがトイレが分からないわたしに、トイレまで連れて行ってくれて、サモサをごちそうしてくれて、バスに戻ったらガムをくれて、その代わりにわたしはポテトチップスをまわりの方々に配ったり。
言葉は通じなくても、笑顔があればどんな人たちともコミュニケーションが出来る。
絵に描いたような台詞だけど、本当にそういう風に感じた時間だった。


ダー行きのバスでお世話になったご婦人。

途中で崖くずれがあって、大きな石を撤去しているということで、30分ぐらいバスがずっと止まったままだったときに、3歳位の女の子がバスの中のスターになっていた。

ダーの女の子

みんなで彼女の一挙一動に笑ったり突っ込んだり。
この雰囲気がとても良かった。誰が親戚なのか、顔見知りなのか、顔も見たことないただの他人なのか、全く分からないほどバスの中は一体となっていた。
こんな環境で育つ子どもたちはとても幸せだと思った。

バスはインダス川上流の方向に、切り立った渓谷の中を進んで行く。
途中からは、その素晴らしい風景に見とれてしまいます。

インダス川沿いを抜けていく

ダーの終点に着いて、『えっ?!』となる。
何にもないから。
バス停とかもないし、ゲストハウスとかもまったく見当たらない。
そもそも、考えてみるとダーには店が全くない。
すべて自給自足なのか...みんなの生活はどうなってるんだろう?

あちこちから山水が流れてきていて、その水は私たちでも飲むことができるほどきれい。
そこで洗濯をしたり、その辺になっている野菜や果物を採って食べることはできるし、牛もいて羊もいる。
それで生きていけるってことかしら?

わたしのトイレのお世話をしてくれていた女性が、一番近いゲストハウスに連れて行ってくれるというのだけど、結構遠いし、ちょっとした山道を登っていくもので、半信半疑で...『本当にゲストハウスに行ってる..よね?』と何度も確かめたほど。
途中の道端の石の上には、アンズがたくさん干してあって、何とも言えない酸っぱい匂いがたちこめていた。ここは、アンズがたくさん採れる場所なのです。

やっとゲストハウスに着いてみると、日本人の女性がお庭でまったりしてた。
一緒にパーミッションを取った友達にわたしのことを聞いていたらしく、すぐに名前を呼ばれてビックリ!
とりあえず、疲れたので今日はここに泊まることに。ごはんは美味しいけど、部屋は良くない。
このゲストハウスの名前を忘れましたが、3つあると言われるゲストハウスのうちの、一番下の方にあるゲストハウスです。
400rsを300rsにまけてもらったけど、残念ながら、そんな高いお金を出すような部屋でもない。
オーナーは若いお兄ちゃんで、お酒を飲むとちょっとめんどくさい性格に変身する。
あまり自ら働こうとはしない。ただ、ここのお庭は最高です。まったりダーを満喫できます。

この夜は、日本人女3人とブルガリアからこのダーの調査に来ているという長期滞在予定のカップルとそのお母さんで、ごはんをいただいた。
この宿のお兄ちゃんのごはんは、うまかった。
こんなインドの辺鄙な静かな村で、日本語でガールズトークするなんて夢にも思わなかった。
女子ならではの、インド生活の悩みや旅の予定やインドで感じることなどを長時間にわたって語りあった。

ダーの星空は素晴らしくて、ずっと眺めていたいほど。
ダーの地元の人々は、みんな屋上にブランケットを持ち出して、わざわざ屋上で寝ている。
星を見ながら寝るためなのかは分からないけれど...
それを知って、「それは素晴らしい!」と次の日に実行することに決めた。

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