vol.32_フリとオチ

   グループ面接でのお話。
「今までで一番の挫折経験と、それをどうやって乗り越えたか教えてください。」
と、まあ就活では割と一般的なやつが。


   グループの中に学生は私を含めて4人。私が最初に話し、最後の人の番に。
その人はその面接中ずっと「え〜」とか「あ〜」とか間を埋める言葉が多い印象だった。案の定、挫折経験について話している時に、面接官の方が遮ってこう言った。
「○○さんがお話されている内容は、とても興味深い内容で、聴き手を引き込むようなものです。ですが話し方に少しクセがあって、"え〜"だとかそういったものが話を妨げてしまっています。話す時に意識してみるだけで改善できるのでやってみて下さい。慣れるまではゆっくり話していただいても構いませんので、矯正しましょう。」と。

   その前の私の話もすごく興味深そうに聞いて下さったし、自分としては盲点だった、指摘されるまで気づけなかったクセも教えてくださった。こんなこともあり、私はこの人はなんて良い面接官なのだと勝手に思っていて、○○さん頑張れとすら思っていた。


   「遮ってしまって申し訳ございません。続きをお願いします。」と面接官の方が。
その直後○○さんが口を開いた。開口一番彼は、
「え〜私の挫折経験は...(以下略)」と。


   私は面接だったにも関わらず、吹き出してしまった。こんなにもキレイなフリとオチは見たことがなかった。面接だからこそ笑ってしまったのかもしれない。あんなにも緊張感が漂っていて、あんなにも心優しい面接官の指摘を受けた直後の○○さんの大無視。


   「△△(私の名前)さん、どうかされましたか?」
たぶんこの企業は落ちました。そして○○さんも落ちたと思います。ごめん○○。

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