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第83回 マンション防災を考えよう

暑さ対策

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

前回まで災害の発生可能性やその対策について考えましたが、今回は暑さ対策です。
現在、日本全国で早くも猛烈な暑さが観測され、梅雨が明けていない地方がほとんどにもかかわらず、
真夏の様相を呈していますが、このようなときこそ、災害が発生して停電により冷房が使用できない場合のことを考えておかなくてはなりません。防災を考える時は最悪の事態を想定して、そのための準備をしておくことが重要です。

夏の暑さの中での被災生活は暑さとの戦いになります。大きな避難所では一部で冷房装置を用意しているところもありますが、停電した場合には発電機などを活用して稼働させなければならず、大変効率も悪くなりますし、役に立たない場合も考えられます。

マンション防災でも同様に大変難しい問題です。
まず、電源を確保すること。私は管理組合側での備蓄資器材の一部として発電機を用意することを推奨していますが、これと移動式の冷房装置まで用意できれば、集会室だけでも環境を整えることができる可能性が高くなります。もちろん発電機の燃料は必要です。これまではガソリンは規制が厳しく長期間備蓄することが難しかったので、発電機もカセットガスで発電できるタイプを買うことが多くありました。ところが現在は備蓄用のガソリンが発売されています。数年間にわたり備蓄として保管できる容器が開発されたことで可能になりました。これで、ガソリンを燃料とした発電機も備蓄資器材に加えることができるようになりました。カセットガスの物より発電効率が良いので、ぜひ検討していただきたいです。(冷房装置にこだわらず、管理組合として扇風機を数台用意しておくことも必要かと考えます。)

それ以外の方法としては、マンションというのは2~3階建てのような低層マンションでなければ平均して7~8階程度の高さがありますので、上層階で風の通り道を作って涼を取る方法もあります。マンションでは玄関とバルコニー側の窓を開けておくと風が通って涼しいということで、夏場は開けて過ごしている方もいらっしゃいます。個人の住居ですので、玄関から覗かれる心配を含め安心安全のために開けっ放しをしない住居も増えましたが、災害時に停電で冷房が使用できない場合にはこのような自然の風を取り込むことも必要です。

また、水の備蓄に余裕がある際にはタオルに水を含ませて首や頭に巻き、気化熱の発散により身体を冷やすなど、アウトドアの知識が役に立つ場面も多くありますので、できるだけいろいろと事前に試してみて、無理のない範囲で実践しておきましょう。

ちなみに、断水の対策にも関わるのですが、マンションの貯水槽の水はどの程度の期間、飲料として使えるのでしょうか。水道局に問い合わせてみたところ、地域断水などで水の循環(補充)がない状態の場合、季節にもよりますが3日程度で消毒用の塩素濃度が低下しはじめるため、おそらく5日間程度まででしょうということです。もちろんこれは5日間以降も飲める場合があるとしても、水道局として(厳密な保証はできませんが)言及できる範囲での発言です。ですので、最大1週間程度と考えておくのがよろしいと思います。したがって、貯水槽の水は優先的に使用してしまい、備蓄用として準備していた水は後回しの方が無駄なく使用できると思います。

今日はここまでです。
次回は要配慮者やけが人などのへの対応や避難時の移動、輸送について考えます。
またよろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。

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