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第51回 マンション防災を考えよう

マンション防災と第三者管理3

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。

このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという共同住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

前回は「第三者管理方式(管理者管理方式)」のメリット、デメリットについて考えました。今回は、そのデメリットの2つ目を考えます。

その前に前回に考えたデメリットとは、以下のことでしたというまとめです。
委託される管理者がマンション管理会社であった場合、それとは別にマンション管理全般を委託されているのも同じ管理会社になるので、利益相反の可能性があるということでした。
これは正直、現在のところデメリットとして確定はしていません。今後の国土交通省等からの指針によるところがあります。

さてそれでは本題のデメリットですが、それは【コミュニティ活動の衰退】です。
この言葉だけを表面的に受け取ると、単にマンション内のコミュニティ活動が無くなる、少なくなるだけということで、マンションの生活にコミュニティ活動を求めていない方もそれなりの数がいるので影響ない、お祭りなどは今でもしていないし関係ない、というご意見も出るかと思います。
ところが、このコミュニティ活動の衰退という言葉の裏には、大きな問題が隠れています。

第三者管理方式を採用すると、ほとんどの管理組合は「理事会」が無くなります。そうすると、居住者(区分所有者)は、居住しているマンションの管理に関して平時はほとんどタッチするきかいが無くなり、放っておいてもそれなりに管理されているようになります。
これはメリットのところで述べたように、プロによる高品質な管理がなされるという良い面もありますが、それはすなわち「管理組合への参加意識」が希薄になるということにつながります。
自分たちの共有資産であるマンションの維持管理に対して自分が参加しているい意識が薄くなるということは、もし、管理者の採用した管理の方向性が間違っていたとしても、取り返しのつかないことになるということも出てきます。
もちろん定期総会は存続しますので、意見を言う機会はあります。しかし、自分以外は興味がない状況では、その総会自体も形式的なものになってしまう可能性があります。
だからこそ、平時からのコミュニティ活動を継続する、もしくは何かのツールなどを利用して意見を出し合う仕組み、場所、機会を持っておくことが必要になるのでは、と考えています。

このことは、さらに影響がある面があります。それは「防災」です。
マンションの防災活動は共助が基本で、それはコミュニティの基盤の上にあるものです。平時の危機(火災など)、特別な自然災害の発生時に、互いに自身が住んでいるマンションで当面の活動にあたるのは居住者です。
外部に管理者がいると、その危機的な状況を把握できない可能性が高まります。また、通常はマンション内に理事役員、理事長が住んでいるので、(もちろん外出している場合はありますが)マンション内での組織的活動を行うことは可能です。しかし、平時から管理者が外部にいてマンション内の居住者が共助意識(コミュニティ意識)が低く、他の居住者と何かをする機会が無かった場合、緊急時に連携して共助を実現することができるでしょうか。お互いに「あっはじめまして・・・」ということで対処できるかどうかは甚だ不安です。

このように、管理組合への参加意識が希薄になるということは、マンションの維持管理に大きなリスクをもたらす可能性があるというのが、大きなデメリットになります。
したがって、平時だけでなく災害時にも役立つ仕組み、ツールなどを用意することが必要なのではと思うのです。

本日はここまでです。次回は、この第三者管理方式の防災上の懸念点と解決策をもう少しだけ考えます。

今回もお読みいただきありがとうございました。また次回以降もご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長 城戸 学

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