第59回 マンション防災を考えよう
被災地しか知らない大地震と余震について
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
本年1月1日に発生した石川県能登半島地震について前回、前々回と考えてきましたが、今回はその地震について被災地(過去の地震災害被災地を含む)の方しか知らない地震の実態を少し知っていただきたいと思います。
今回の令和6年能登半島地震における地震は、最大震度7を観測したこともあり、大きなニュースになりました。もちろん津波の被害や、地震による家屋倒壊、火災、道路の崩壊、液状化など様々な被害が続々と明らかになり、地震により「大災害」であったことは確かです。
しかし、地震の発生時、発生直後においては、最大震度が大きいほどその被害の大きさが想像されるため、速報ニュースなどになります。
過去には、熊本地震において史上初めて最大震度7が2回続けて発生したということが大きな話題になりました。
私がマンションの居住者向けセミナーや理事会、防災委員会へのアドバイスにうかがった際、皆さんに正しく地震を理解していただくためにお知らせすると驚かれることがあります。
それは、余震の大きさと回数です。
熊本地震を例に取ると、多くの人は「震度7が2回も来たなんて、大変だったでしょうね。」と言い、それ以外は気にしていません。
ところが、後で気象庁の記録によると4月14日の1回目の震度7を含め4月29日までの15日間、約2週間に来た余震は、最大震度5弱が9回、5強が5回、6弱が3回、6強が2回、そして震度7が2回です。
1回来ただけでもニュース速報になり、NHKが放送を中断してニュースを放映、現地からの中継を行い、その後の数日間は各TV局もニュースとして取り上げる「震度5弱」以上が21回も来ているのです。
どかん、どかんと2回揺れただけではないのです。過去に大きな震災を震源地に近い地域で経験された方はご存じかもしれませんが、全国のほとんどの方はこの余震の回数、大きさ、怖さを知らずにテレビを見ているのです。
ちなみに今回の能登地震では、日本気象協会のtenki.jpというページで確認すると、1月1日の震度7以降、1月20日まで20日間、約3週間で、5弱8回、5強7回、6弱1回の余震がありました。(震源地が北海道、秋田県、福島県、沖縄県のものは除き、能登地方および新潟を含むその近海のもののみ。https://earthquake.tenki.jp/bousai/earthquake/entries/)
防災を考える際には、大きな震度の余震が発生した場合のことも考えなければならないということをぜひ皆さんには知ってほしいと思います。
例えば、大きな地震が発生した後の片付けの際には、余震が来ることを想定して高いところにものを重ねない(これは普段もですが)などを考えなければならないということです。
このようなお話しをセミナーでしますと、「脅しているのですか」と言われます。
脅しているのではなく、実態を正しく知って、自然の脅威を正しく恐れ、正しく準備するための必要なことだと思っています。
マンション防災の活動を行うにあたり、管理組合の持ち回りの役員が、「とりあえず何かしなくては!」と簡単にできるものではないということも理解していただければと思います。
とはいっても最初はできることから少しずつやっていくことが必要なので、時間もかかるものです。
真剣に、でも気長に、継続して活動をすることが重要なので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
さて、今回はここまでです。
本日は以上です。
次回は、伸び伸びになっていますが、マンションの管理組合と自治会、自主防災組織の関係性や実例などについて考えていきたいと思います。
また次回以降も引き続きご覧いただければ幸いです。
マンション防災研究所 所長 城戸 学
マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。
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