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第17回 マンション防災を考えよう

管理組合の防災活動3(災害対策本部と組織)

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
前々回から、マンション管理組合における防災活動について考えていますが、今回は具体的な災害時の対応組織、災害対策本部について考えます。

マンション管理組合で防災組織を考えるとき、基本となるのがこの災害対策本部です。
災害が発生した際、誰が、どのように対応するのか。事前の準備を違い、災害が発生してしまった時に直接対応に当たる組織として機能します。

この災害対策本部の組織の作り方、考え方については、間違った考え方をしてしまっているマンション居住者、管理組合、防災委員会の方が多くいるようです。

あるマンションでは、防災委員会のメンバーが中心となって災害時の組織を構成しようとしたために、防災委員会の委員長を災害対策本部長に置き、防災委員会の副委員長をそのまま災害対策本部の副本部長にするなど、事前準備の組織をそのまま当てはめて作成しました。
ところがよく聞いてみると、中心となるメンバーの方々は皆さん企業にお勤めで、平日はほとんどマンションにいない、休日出勤も結構な確率である、ということでした。
これでは、平日の昼間に災害が発生した場合は、災害対策本部のメンバーがほとんどマンションにいないために、本部が設置できない、機能しないということが十分に予測できてしまいます。

そこで、現在の防災組織の考え方は、発災した時点で「その場にいて、無事で活動できる人」を中心に組織を組成、適任者が戻ってきた、参加した時点で交代して進めていくという組織の運営が中心になってきています。
すなわち、大地震などが発生した場合、その時にマンションにいた人の中で活動可能な人が本部長その他組織のリーダーとして任務を負い、それよりも知識、体力などに勝る適任者が帰宅した場合に交代して組織を継続させるという方法です。

したがって、マンションの防災マニュアルによくありがちな、組織の欄に、個人の名前が書いてあるのではなく、役職、役割、係の名称があり、そこにいた人たちで分担してその任務を行うという方法になっていくのです。

アメリカにはFEMA(Federal Emergency Management Agencyアメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)という組織があり、様々な緊急事態に対応する方法論を研究、実践したり、実際の対応をしていたりします。
その中で、緊急事態に対応する組織の考え方の中にICS(Incident Command System)というものがあります。
これは、Incident(事件、紛争、事変)などが発生した際に、組織の形として必要な役割等が決められているのですが、(詳細は省略します。)マンションではこのようなものを参考にして、以下のような組織が最小限で必要になると考えています。
※役割の内容は発災直後の役割で、時間の経過とともに必要なy区割りを増やしたり、他の班の援護をすることも含まれます。
<本部班>
全体指揮を執る「本部長・副本部長」、記録係
<情報班>
安否確認、近隣・自治体情報入手、居住者名簿・マンション内避難者管理
<救護班>
初期消火、けが人などの応急救助・手当、エレベータ閉じ込め対応、要配慮者対応、防犯
<物資班>
備蓄品・資機材・食料等の管理、避難所物資手配・運搬、ゴミ対応、設備・施設確認

このような組織を中心に、マンションにより個別に必要なものを加えるなどをします。
併せて、初期の活動内容を「First Action Box」として準備しておき、災害発生時に集会室などに集まった居住者の中から班長を選出、その他の各人に役割を与え、活動を開始します。
こうすることで、防災委員会や管理組合の理事役員が不在の時でも組織防災活動をスタートさせることができ、動ける大人の帰宅を待つということです。

さて、今回はここまでとします。次回ですが、そもそもこんな組織の考え方などは分かったけれども、自分のマンションでどうやって防災活動を始めればいいのか、何から始めればいいのか、実際の活動に入ることを考えていきたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。また次回以降もご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長 城戸 学

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