見出し画像

第75回 マンション防災を考えよう

マンション防災 火災

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

前回まで、火山の噴火による災害、被害について考えました。これは火山の周辺に所在するマンション以外では一般的にあまり想定されていない災害です。そして、周辺地域ではなくても火山灰の被害が出てしまう可能性があることも指摘しました。

そして、今回考える災害は「火災」です。
マンションの防災活動を考える際に、多くのマンション、管理組合では地震を中心に台風による風水害、大雨による洪水などの災害を想定して計画や準備を行いますが、火災に関しては別物と考えられている場合が多いようです。
マンションでは消防法に定められた消防訓練が義務付けられていて、年1回の消防訓練を実施しているにもかかわらず、火災は火災として認識されている場合が多いように感じます。

この火災は、マンション居住者に限らず「いつもそこにある危機」として地震と同じ災害として考えるべきものです。なぜマンション全体で災害として認識をして準備をしなければならないかは、いくつかの理由があります。
1)地震と同様に、ある時に突然に発生するため、事前の準備をしておかなければ対応できない。
2)火災そのもので、また消化活動などで大量の水を利用するため、発生した住戸以外の住戸に多大な影響を与えてしまう事象であること。
3)2と重複する部分がありますが、マンションの区分所有者で共有している資産を大きく棄損してしまう事象なので、全体で発生を防ぐこと、被害を最小限に抑えることが求められること。

そのために私は以前より、消防訓練(通報、避難、消化)の際に、総合防災訓練としての要素を加えて実施することを提案しています。現在では消防訓練時に救命講習としてAEDの使用方法研修を行うところも増えてきていますが、それ以外の訓練も併せて実施し、火災も災害の一つであることという認識を広めなければいけません。

さてこの火災ですが、地震などの気象災害とは大きく違う点があり、その点がマンションの防災活動について大きな問題になる点があることをお解りでしょうか。
それは、火災という災害は、発生したということを、地域を含む発生したマンション以外の人がわからないということです。また、近隣への延焼などの影響以外では、発生したマンションだけが被害対象となるので、そのための「マンション自助」を考慮しなくてはならないということです。

地震などの自然災害では、ほとんどの場合はその災害が発生した事実を地域、自治体、地方、国が把握し、遠隔地に勤務していても、旅行していても、自宅マンションの地域において災害被害が発生していることを居住者のほとんどが知ることができます。一方、火災の場合は勤務先にいても自宅マンションが火災にあっているなどマンション内に残した家族からの知らせがない限りは知る由もありません。
また、被害は基本的にそのマンションだけで発生するので地位恋の避難所などの開設や消防、警察の援助以外の自治体の支援が実施されないので、事後にマンション居住者自身で被災生活を送らなければならないということです。(マンションだけで、というのは近隣への延焼などを除く。マンションの場合は敷地が広くとられている場合も多く、一般的な戸建てより隣家への延焼の可能性は比較的少ない。但し、マンション内の隣家への影響、延焼の可能性は多大。)

こういったことを考慮すると、一般のマンション防災活動にはない解決策が必要になってきます。もちろん共通項はたくさんありますが、次回に少し整理したいと思います。

ということで、今回はここまでです。次回は、火災に関するマンション防災活動の解決策などについて考えてみたいと思います。またよろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?