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秋の空のうた

僕は小さな頃から空を眺めることが大好きで
そして、その向こう側に何かしら
何かは分からないものを
説明できないものを
見ようとしてる
夏の入道雲
秋の空と夕焼けやお月様
冬の大三角形と散り散りに点滅する星々

数年前、結婚を約束してお付き合いしていた女性を自殺で亡くした

秋だった

僕は敢えて葬儀にも参列していないし、ご遺族に命日は聞かなかった
僕なりの供養の形として亡くなってしまった彼女の誕生日にこっそり続けている事がある

夜空を眺め
死んだ事を悔やむのでなく
この世界に誕生し
僕というひとりの人間に出会ってくれたことに感謝し、ふたりが好きだったバニラ味のカントリーマームを食べる

毎日眺めるまっくらやみの秋空の中に
彼女の星を見つける

たったそれだけのこと

だけど

髪の匂いや
触れ合ってた彼女の体温とか
声の色や
口癖
言い出せばキリがない色んなこと
嫌なところや大好きなところ
思い出さなくてもいいこと
たくさんたくさんのこと

笑顔のまま
僕は笑顔でねむりにつき
次の朝には
何事もなく日常にもどる

いつしか
それはうっすりと霞みながらも
今年も秋がやってきた

いまちょっぴり
一緒に甘いお菓子を食べたいひとがいる
カントリーマームではなく
アポロが食べたい


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