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「彷徨う言葉」

はー、よく寝た。
そして夢を見た。
前回のnoteで書いた、蠍座の彼女と再会する夢だった。

彼女は初め、ムスッとした顔で栗を数個、無造作にくれた。両手で受け止めようとしたら溢れてこぼれそうになったけど、「おっとっと」となんとか受け止めるもバッグを持っていなかったので、そのまま栗を抱えたままコンクリートの車止めに並んで座った。場所はよく行くスーパーの前だった。

彼女は矢継ぎ早に、あのときあんなふうに思った、こんなふうにも思ったと、今にも泣きそうな顔でこんこんと感情を吐露し、溜め込んでいた感情はとぐろを巻いて、まるで赤い舌がチロチロ見えそうだった。
そんな彼女の話を聞きながら、わたしのなかにも胸の奥に仕舞い込んでいる言葉があるのだろうか、と考えてみた。

うーん。

過去をたぐりよせる。
好きになったら割と早い段階で告白しちゃうし、ファンになったらすぐ手紙を書いちゃうし、くだを巻くおじさんにはつい物申して、「あしらう」とかとうてい出来なかったし、そんなんだから学校の先生からは生意気扱い当たり前だったし。
わたしはまるでミルク飲み人形のように、入れたらすぐに出すようだ。
でも、忘れているだけかも知れない。


目の前にいる彼女は、彼女のタイミングで言っている。すなわち「今」、なのだった。

きっと世の中には、墓場まで持っていく、という決意で自分の言葉を封印した人もいるのだろうし、人生の最期に一発奮起してまさかの駆け落ちとかしちゃう人もいるのだろう。
なかには、イタコさんにお願いして伝えることの叶わなかった言葉を聞きに行く人もいる。


先日、友人たちが集まったときに、「言えなかったことってある?」って聞いてみたところ、「相手は家族なんだけど、最近とうとう言っちゃったんだよね」と。「でも不思議で、いつも考えていたわけじゃないんだよ。でもある日、『今、伝えよう』って思ったんだよね」

もうひとりは、「長く長く、想いを持っていて、死ぬまで彼のしあわせを陰ながら祈る、って思ってたんだけどさ。でも、ちゃんと伝えようかな!って」と言った。わたしは、「それは、すごいことだよ・・」と感動して言葉に詰まっていると、「えー!このこと数年前にきこちゃんに話したんだけど覚えてないの?その時きこちゃんに『あり得ない!』って真顔で言われて、やっぱり伝えようって思ったんだよ!」と。

ひゃー、全然覚えていない。ではここは、全力で応援させてもらう。


しんみり、みんなそれぞれの時間軸で生きているんだなぁと思った。
蠍座の彼女は、2年前から気持ちをそこに置いてきぼりだったんだな。
いや、きっと彼女は何人もいるのだ。2年前を、淡々と生きている彼女、今の彼女。思い出せばすぐそこに行けるのだ。

夢のなかでは、わたしが一方的に彼女の話をとにかく聞く、という形で終わった。時間にしたらそうとう長かったように感じる。


子どもたちが牧場から帰ってきた賑やかな声で目が覚めた。

「拝聴」は、啓示である。

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