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シリーズ・留学を考える [3] - 出会う人を変える意味

留学とは「経験」で、「場所を変える」「出会う人を変える」「生活の時間を変える」の3つがその経験の条件だ。

今日は、出会う人を変える、その意味について書いてみたい。

留学をすると、必ず新しい人に出会う。ホストファミリーや寮生、学校の先生や生徒たち、クラブ活動のコーチや、我々現地サポートのスタッフなど、毎日のように会う人。また、飛行機で隣に座った人、空港で出迎えてくれた送迎の人、バスの運転手さんや店のスタッフ、町を歩いているときに見かけた人など、その時にだけ出会う人もたくさんいる。

留学をせずにそのまま日本で暮らしていたら、絶対に出会わなかった人たちだ。

たとえば、学校の生徒たち。

中学や高校でも、大学でも、おそらくほとんどの人は、現地の言葉を話す現地で長く暮らしている人だろう。

見た目も、話す言葉も、雰囲気も、行動も、考え方も、持っているものも、日本で出会う人とは違う。

この「違う」というのがとても重要だ。それまでに日本で出会った人と、どこか、あるいは根本的に「違う」人に出会う。もちろん自分とも違う。

人間、自分やそれまで周りにいた人と「違う」人を目にすると、身構える。防御態勢に入る。

防御態勢に入ると、気持ちがオープンになるのは難しいし、自分から「違う」人たちの中にどんどん入っていくこともできない。

でも留学では、「自分から積極的に周囲に働きかける」ことが求められる。そうしないと、言葉も通じない文化も考え方も違う場所では、生活できないからだ。

「違う」人と出会って、最初は身構えて守りの態勢に入っても、次には、自分から積極的にかかわることが求められる。このギャップが「出会う人を変える」一つの大きな意味だろう。

そのギャップを自分でどのように埋めていくのか。守りの態勢から積極的にかかわる態度にどう変えていくのか。「違う」人たちとの折り合いをどうつけていくのか。「違い」を受け入れるのか受け入れないのか。相手から見ても自分は「違う」人だと気づくことができるのか。

そして、最初は「違う」と感じていた出会った人たちが、時間が経って仲良くなると、不思議なことにその「違い」をだんだん感じなくなってくる。そうなると身構えなくなるから、さらに深く付き合うこともできる。もちろん、言葉も通じるようになってくるし、相手も自分のことを知ってくれるので、コミュニケーションがスムーズになり、さらに仲良くなれる。

そして最初に感じた「違い」は、実はそれほど大きな「違い」ではなくて、基本的に「同じ人間だ」ということを実感する。新しく出会う人との「違い」など、同じ人間であることの前には大きな問題ではないことがわかる。

また、たとえば、ホストファミリー。

学校の生徒たちとは違い、ホストファミリーは、一緒に生活を共にする人たちだ。自分が毎日帰る場所にいる。

だから、実は留学においては、学校の先生や友達以上に、留学生活に与える影響が大きい。

生活を共にする人と新しく出会う。今まで生活を共にしてきた家族と別れて、いわば違う家族と一緒に暮らす。衣食住を全て共有するのだから、その影響は計りしれない。嫌でもそばにいるし、逃げ出すわけにも簡単にはいかない。

一緒に生活をするということは、その人たちの生活の中に入っていくということだ。衣も食も住も、その人たちのスタイルに合わす。こんな食事は嫌だと言って食べなかったり、こんな家は嫌だと言って外に出たりすると、生活ができない。だから少しくらい嫌でも、自分のスタイルに合わなくても、我慢して合わすことが求められる。

この、それまでの自分の生活スタイルを一旦わきに置いて、他の人の生活スタイルに合わす、というのもとても重要だ。

慣れ親しんだ人たちではなく、あうんの呼吸で理解しあえるのではなく、違う生活をしている人たちと、お互いを理解しあいながら一緒に暮らす。自分をなんとか理解しようとしてくれる人と出会い、相手をなんとか理解しようと自分も努める。そんな人間関係を、日々の生活の中で築いていく。

そして、それまでの自分の生活スタイルと違う人たちとお互いに理解しあい、それぞれの生活スタイルを認め受け入れ、合わせるところは合わせて、全ての人が快適に暮らせるように行動する。

そんな視点、そんな態度、そんな力を身に着けていく。

留学で、出会う人を変えることで、出会ったことのない人との違いを発見し、それを受け入れ、理解し、認め、そして「違い」は人間関係には大きな問題ではないことに気づき、同じ人間であることを発見する。

生活をともにして、新しく出会った人の生活の中に入っていき、生活スタイルの違いに気づき、それを受け入れ、お互いを理解して、全ての人が快適に暮らせるように、長くうまく毎日やっていく。

それが、留学で「出会う人を変える」大きな意味だと思う。


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