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【インタビュー】倉本朋幸が思想の森を進むのは、人と向き合いたいからだ / オーストラ・マコンドー『応答せよ、魂深く』

11月17日(金)~26日(日)に上演されるオーストラ・マコンドー『応答せよ、魂深く』。本作は武田砂鉄さんと武田さんの著書から影響を受け、今年の東京国際映画祭にも出品した気鋭の映画監督、小路紘史さんとオーストラ・マコンドー演出の倉本朋幸さんによって上演台本が共同執筆されている各界注目の最新作だ。今回は演出の倉本さんをお招きし、ご自身の創作のこと、最新作のことなどを伺った。インタビューから倉本さんのその大地に根を張るような力強さと柔らかい小さな花のような繊細さの理由が見えてきた。

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―――2012年度より定期的に吉祥寺シアターで上演していただいておりますが、改めて自己紹介をお願いします。
倉本:オーストラ・マコンドーの演出をしております、倉本です。よろしくお願いします。

―――ご自身の経歴など、教えていただけますか。
倉本:2010年に舞台の演出家を始めて、今まで100何本くらい演出させてもらって、寺山修司さんの作品や、小津安二郎さんの映画作品を舞台化させてもらったりだとか、映画を撮ったりだとか、色々しております。で、オーストラ・マコンドーは2014年に劇団化して、今もやっているというような状況でございます。

―――今年度は6月のみきくらのかい 新リーディング『マクベス』に続けて倉本さんの演出された作品は二作目となります。倉本さんはジャンルを問わず創作されていますが、その好奇心や興味はどんなところから生まれるのでしょうか。
倉本:多分単純に、自分的には演出することが、皆さんがご飯を食べるみたいな感覚でいて。美味しいもの食べたいって思うのと一緒で、面白いものを作りたいっていう気持ちがずっとあって。単純に楽しいっていうのが一番。もし自分に創作意欲がなくなったら、辞めます。っていうぐらい、ずっとやりたいことっていうのは絶え間なくあるっていう感じですね。

―――生活の中に創作があるんですね。
倉本:創作することは生きることだと思います。

―――倉本さんは舞台での演出だけでなく、映画製作などもされていますが、映像表現と舞台表現では創作するときにどんな違いを感じますか。また、舞台表現の面白いところを教えてください。
倉本:映像や映画とかと舞台っていうのは全く違うものと思っていまして。俳優自体の表現方法が全然違うというか。どうしても映像は写実的というか、リアルな。もちろんそうでない映画もありますけど。基本的には僕たちが日常的に何をしているかっていう状態を描いていくっていうのが基本にあると思うんです。
 舞台ももちろん日常を描く作品もありますけど、舞台の表現は反復性を伴う。稽古をしてクオリティが上がった状態の身体というか、そういう中でやったりするので。映像とは全く逆の表現形態だなっていうのは常に感じています。
 あと、嘘のつき方が全く違う。基本どちらも嘘をつくっていうことは変わりないんですけど。その中から本当ってものを探していく。その向かう先も全然違う。っていう風に自分は思っていて。舞台は想像力、もちろん映像も駆使できるんですけど、また違う。そこに何もないのに、例えば空を飛ぼうと思ったら多分飛べるだろうし。そういうような、何もない空間なのに俳優がそこにいるだけで何かが起こり始めるっていうのが、舞台の素晴らしいところだなと思ったりします。

―――今回の新作は武田砂鉄さんと武田さんの著書から影響を受けて創作されるとのことですが、取り上げたいと思ったきっかけについて教えてください。
倉本:2つあって、まず自分はこれまで個人の関係、社会の中で生きている個人を描くことで社会を描こうと思ってずっとやってきたんです。でも自分が映画を撮って、海外のディレクターさん、監督さん、日本の監督さんと出会う中で、社会を自分がいかに描けてないかということを痛感しまして。演劇で今の社会とか個人をどのように描いていくかってことに興味を持ちだして。
 あるとき武田砂鉄さん、フリーのライターさんで、ラジオで社会とか靴下の話だったり、色んなことをお話されているんです。そこには考えるっていう武田さんなりの哲学を持ってらっしゃって。社会っていうものと武田さんが向き合っていらっしゃる姿を見て、この人を描いてみたいって。武田さんのエッセイがあって、そのことを通して自分がオリジナルとして描いていくことで、社会と個人っていうものを新しい価値観で描けるんじゃないかなって思ったのが一つ。
 でもう一つが、武田さんはそう書いてないんですけど、武田さんのエッセイを読んだときに、今まで自分はどこかで、社会のことを描ける特性というか、色々。当事者であったり、特性があると思うんですけど、自分はそうではないって思っていて。ずっと当事者に対する憧れみたいなものを自分が作る上でずっと抱えていて。だから自分は社会が描けないんだとか。ずっと探してたんですよ。
 武田さんのエッセイを読んだときに、武田さんはそう書いてないんですけど、自分も差別されてたときあった、って思ったんです。それは人それぞれなんですけど。自分はへらへら笑っていたけれど、気づかない内に友達から、あ、自分も差別されてるときあった、って思ったときに、自分が当事者であることと第三者であるということ。自分の中で新しい発見があって。そこからオリジナル作品として、個人が当事者として、第三者として社会を見つめていくことを書いてみたいと思って、今回やらせていただきます。

―――続いて、今回出演される四名の俳優さんについて、その魅力を教えてください。
倉本:後藤君はドラマとかでも活躍してる劇団員です。ドラマとかで見る後藤君っていうのは、面白いとか、筋肉があるのでキャラとか。もちろんそれも素晴らしいですけど、実は彼は繊細な演技ができて、何にでもなれるっていう特徴があって。だから彼が武田さんに影響を受けてできた西村朋ノ介範っていうキャラクターなんです。彼が今までやってきたような人物ではないキャラクターで、そういうことがやれる人だっていう感じがあるなって。
 でカトウシンスケは、映画とかドラマとかで活躍していて、彼も劇団員なんですけど、ミスターマコンドーと呼ばれていて。本当に素晴らしい俳優で、全体のことも見通せるし、作品のことだったり、人物のことも突き詰めていくので。彼も今まで見ていた、ドラマや映画で見ていたカトウではない、カトウシンスケっていうのがそこに存在してくれるだろうし。カトウが泣くと僕たちも皆泣いちゃうくらい、そういう表現の奥深さを持っている俳優さんだなと思います。

 坂本真さんは、僕が演出とか始める前から友達で、もうずっと、本当に大好きな俳優さんで。テレビとか映画・ドラマとかでも大活躍されてる俳優さんで。坂本さんとももう何本も作品やらせてもらってるんですけど、坂本さんも本当、何にでもなれる俳優さんで、彼にしか伝えられないことがあるっていうその強さみたいなものが確実にあって。それは確実に人の心を打つし、届く。で、どうしてもコメディー的な俳優さんだと思われがちですけど、実はすごいセクシーだと自分は思っているし、繊細で、コメディーではない部分っていうのが本当に器用な俳優さんだと思います。
 駒井蓮さん。本当、天才だと思っていて。年齢は僕らより全然年下なんですけど、年齢とか関係なく、初めて本読みしたときから、台本一番分かってたんじゃないかくらい分かっていて。結構難しい話なんですけど、それを全部読解して、すぐやれちゃう。天才だなと思って。大活躍してもらいたいと思ってます。

―――このインタビューを読んだ皆さまにメッセージをお願いします。
倉本:今回オーストラ・マコンドーとして、劇団員の清水みさとちゃんは出れないんですけど、後藤君、カトウさん、で、ミュージシャンの豪起君。ずっと一緒にやってる仲間のさかもっちゃん。そして駒井蓮さんを今回お招きして。劇団として3年ぶりに本公演を、しかも4人の会話劇でやらせていただきます。あと声で、茨城ヲデルさんという方にも協力してもらって。今まで見たこともない演劇体験をさせたいなと思って作っているので、是非劇場にお時間あれば来ていただけたらなと思います。よろしくお願いします。

倉本さん、ありがとうございました。

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オーストラ・マコンドー『応答せよ、魂深く』
11月17日(金)~26(日)

フリーライターでラジオパーソナリティーの西村朋ノ介範の家に、とある雑誌に寄稿したことをきっかけに編集者の沢木、大学の助教の花巻、批評家の武藤がご飯を食べにやってくる。プライベートでは初めて会う4人。西村朋ノ介範は自分がずっと抱いてきた違和感について話し始める。そうして4人は共同し思想の森へ冒険を開始する。

公演詳細
吉祥寺シアター:https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1005289.html
オーストラ・マコンドー:http://austramacondo.com/

ご予約
(公財)武蔵野文化生涯学習事業団チケット予約:
Tel: 0422-54-2011
Web: https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-s/showList?en=363
Peatix:
https://austramacondo11171126.peatix.com

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