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【稽古場レポート】一つの台詞、一人の人間、それはまるで木目のように重なり広がる / オーストラ・マコンドー『応答せよ、魂深く』

 11月17日(金)~26日(日)に上演されるオーストラ・マコンドー『応答せよ、魂深く』
本作は武田砂鉄さんと武田さんの著書から影響を受け、今年の東京国際映画祭にも出品した気鋭の映画監督、小路紘史さんとオーストラ・マコンドー演出の倉本朋幸さんによって上演台本が共同執筆されている各界注目の最新作だ。今回は稽古場の様子をレポートする。

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 この日は舞台美術の具体的な内容の確認から始まった。 舞台上に実物のそれが置かれ、それを囲むようにして演技を展開されることになりそうだ。それが何かは是非、劇場に観に来てほしい。見た目の通り、作品をどっしりと支えてくれるものとなるだろう。その間も各々、台本を確認したり、体をほぐしたりしていく。

 それまでの稽古を踏まえて新たに書かれた台本の読みから行っていく。そこだけ観るとどんなシチュエーションだったのだろうと思うが、その後の通し稽古を観て納得。このシーンは特に美術の存在が台本に説得力を与えている。俳優たちの台詞を聞いていると、自分がお昼ご飯に食べたものについて考えたり、外から聞こえてくる鳥の鳴き声に耳を澄ませたりしたくなった。稽古場の教室はまるで奥多摩まで来たかのような自然溢れる空間に変化する。自分の呼吸が俳優の台詞と共に静かに響いてくる。自らもその時間を共有する感覚があった。

今はない、それの下に横たわる坂本さん

 こんなに静かに真剣に話していたのに、ふとした瞬間、ささやかな疑問で小さな話し合いが行われる。この時の4人の人間の可愛らしさといったらない。その可愛らしさの正体は台本にあった。
 実は、台本は部分的に俳優に任せられている部分があったのだ。俳優たちが台本に載っている沢山の情報から発言に至った結果、偶然的にその空気が作られたのである。役、俳優、演出それぞれの距離の近さを感じる。そしてその偶然に反復性を持たせて作品を作りあげていくのが、倉本朋幸という演出家なのだ。

西村朋ノ介範役の後藤さん

 演技の最中に倉本さんから坂本真さんに新たな演出の指示が入った。倉本さんは坂本さんの演技を受けて新たな演出を実演してみせると、その声に重なるように、呼応するように坂本さんが演技を続けた。坂本さんの変化に思わず反応しよく笑う、演出の倉本さん。その空気に笑いを堪える、というかほぼほぼ笑ってしまっている俳優たち。それぞれリアクションを自由に返していた。演技があって、それに素直に反応ができる稽古場は理想の稽古場像の一つではないだろうか。その言葉や動作、一つ一つに注意を向け、まさに応答していた。

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オーストラ・マコンドー『応答せよ、魂深く』
11月17日(金)~26(日)

フリーライターでラジオパーソナリティーの西村朋ノ介範の家に、とある雑誌に寄稿したことをきっかけに編集者の沢木、大学の助教の花巻、批評家の武藤がご飯を食べにやってくる。プライベートでは初めて会う4人。西村朋ノ介範は自分がずっと抱いてきた違和感について話し始める。そうして4人は共同し思想の森へ冒険を開始する。

公演詳細
吉祥寺シアター:https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1005289.html
オーストラ・マコンドー:http://austramacondo.com/

ご予約
(公財)武蔵野文化生涯学習事業団チケット予約
Tel: 0422-54-2011
Web: https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-s/showList?en=363
Peatix
https://austramacondo11171126.peatix.com

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X:https://twitter.com/Kichi_Theatre

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