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にしなり!四話「はじめてのピンチ」

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本来なら一日で帰るつもりだったそのひだったが嫌な予感がするので無理を言ってひまわりの寮にまだいたのだった。
とはいえひまわりはむしろ喜んでいたが…

ひまわり「あー今日も疲れた。お、そのひちゃん料理作って待っててくれたん?サンキューな」
「へへ…それぐらいのことしか出来ないので…」
彼女は泊まる代わりに料理を作ったり掃除をしたりと家事手伝いをしていた。
「ん~うまい!てかどうして帰りたくなったの?」
「そ、それは…」
「まぁええわ!そのひちゃん可愛いから一生ここにいてくれや!」
「いえ、そこまで図々しくはありませんって…くらしさんにもはよ帰れって言われてますし…」
「ふぅ~ん、ドヤなんか狭いんになぁ…くらしちゃんって人はさみしがりやさんなんか?」
「多分そうだと思います、ふふ」
「お、最近笑ってなかったのに久々にわろてるの見たわ~」
二人は夕食を食べながら談笑していた。

一方くらしはさみしく一人でやけ酒していた。
「そのひちゃん変なやつにでも引っかかったんかなぁ…でも住む先が出来たのはええことやわぁ、いやでもやっぱ帰ってきてくれ~」
気分転換にパチンコでも行こうかな、と思い立ったくらしはまたしてもパチ屋であのヤク中疑惑女に絡まれた。
「ゲッなんなんやお前…」
「いやぁこの前はすまへんかったなぁ、なんで☓☓を探そうか教えたろうと思ってなぁ」
「ここじゃジャラジャラうるさくて聞き取れん、カフェでも入ろうや。勿論あんたの奢りでな」
「チッ…」

その辺の喫茶店に入ったそのひと女だったがそのひは図々しいのでパフェとクリームソーダを頼んだ。
「何高いの頼んでるんやボケ!」
「ええやないかぁこれぐらい、ウチ生活保護なんで贅沢ぐらいたまにはしたいんですわ。てかおめぇははよ名乗れカス」
「チッ…私は春野ふみ、駆け出しのジャーナリストやで」
彼女は名刺をテーブルにおいてドヤ顔した。

「簡単にいやぁ新人のペーペー野郎やないかいな、しょーもな」
「底辺のワレに言われたかないわ、まぁ安い挑発は無視して話したるわ」
ふみは例のそのひが起こした殺人事件のことを話した。
しかしくらしはそのひの本名を知らないのであんまり話を聞かないでパフェに夢中になっていた。
「☓☓ってやつがやらかしたんとウチになんの関係があるんや」
「実は☓☓の逃亡先が西成滞在説をアタシは推しとるからそれをとっ捕まえてキャリアアップしようと思ってるんや!」
「しょうもな」
くらしは一瞬そのひのことを考えたがふみのことは気に入らないやつなので敢えて言わなかった。
「というかそれ☓☓の元カレが悪いやんかぁ、話聞く限りじゃクソ野郎だとしか思えんし」
「世間は半ば許してるようなムードあっけど法はそれを許しまへん。はようキャリアアップのために逃亡犯をとっ捕まえたいんや!」

「あ、そういやずっと気になっとるんやけどあんたの身体から特有の匂いするんやよなぁ~なんていうか…大麻やっとるやろあんた」
「!?」
「ここにはそういう薬中も多いから匂いで分かるわいドアホ」
「え、あの…その…」
「ウチのドヤ行こうや」

くらしに連行されたふみはドヤに連れて行かれた。
「その場でやらせてもらってもよかったんやがそりゃウチの良心だと思って受け止めんさい。さぁて持ちもの検査の始まりや」
「目が悪い癖に出来るんかボケ」
「その分嗅覚は鋭いんや、要は麻薬探知犬ってとこやな」
ふみの服を剥ぎ、持ち物を全て出させるとくらしのチェックに入った。
「これで身の潔白は証明されたでこのアホンダラ!」
しかしくらしはモバイルバッテリーをつかみ、手触りだけでネジの部分を確認してドライバーで外すとそこにはブツが詰まっていた。
「クンクン…やっぱりなぁ…どんな気分や?」
「なっ…なんでバレたんや…」
「昔の知り合いがこうやってヤク隠す聞いたことあるんでなぁ。さぁてそれよりこれ、バラされたくないやろ?名刺は控えてるしいつだってチクれるで?」
くらしはその日、初めて笑った。

「そ、それだけはやめてください…せっかく新卒で入れた大手新聞社のクビだけは堪忍してください!」
「ウチ目が悪くて見えへ~んw」
ふみはみっともなく全裸で土下座するがくらしはニヤニヤしながら煽る。
「くっそ…ここに馴染もうとしてたらついやってもうたのが仇になるだなんて…」
「つーわけや、チクられとうないならもう二度とここ来んな」
「待てや!あんたもし囲ってたとしたらあんたまで捕まるで!」
「ゴタゴタ抜かさんではよ失せろブス」

ふみは泣きながらドヤ出ていった。
それを勝ち誇ったような顔で見つめた彼女はそのひにLINEを送る。
『はよ帰ってこいや。さみしくてしゃーないし相手に迷惑になるで』


くらしからのLINEを受け取ったそのひは彼女を信じて帰宅することにしたが帰りに自分に賞金がかけられていたニュースをみたそのひの帰宅理由と感情は疑心暗鬼に変わっていた。
まさかバレたりした…?とそのひはが気でなかった。
帰りに一応闇市からスタンガンを購入したそのひはオドオドしながら帰宅の最中だった。
「ど、どうかくらしさんを殺さない程度にお願い…」
反対方向には肩を落としたふみがトボトボとした雰囲気で帰宅しようとしていた。
「あたしってブスなんか…?確かに大学時代にゃセフレこそとっかえひっかえしてきたがそういや伴侶の可能性もありそうな男はおらんかったってことはあたしは膣だけのブスってことなんか…?」
ブツブツと謎理論を唱えながら彼女が恥ずかしさの余り走り出すとまさに今日探そうとしていた☓☓ことそのひがいたが前髪とつなぎのせいで☓☓だとは全く気づいてなかった。
それどころか彼女を男と勘違いした。

「いてて…」
「なぁ兄ちゃん!ウチってブスなんか!?なぁ!」
「…え」
ガラリとイメチェンしたとはいえ急にぶつかってきた上に泣き崩れた女に男扱いされるとは思わなかったそのひはショックだったが逆に言えば正体を知らないということに安心したそのひは声色を変えてなだめてあげることにした。
「そ、そんなことないです。お姉さんは美人だと思いますよ。だから早く起きて…」
「なぁ、酒一緒に飲まへんか?」
顔こそ見えないがつなぎに整った輪郭にショタコンのケがあったふみは知らないとは言えど狙っていたはずの☓☓ことそのひに惚れてしまった。
「い、いえ…早く家に帰らないと…」
「どうせ飯場かドヤやろ少年、お姉さんが奢ったりし泊めたるからこいや」
恋愛下手なふみのそれはナンパというより脅しに近かった。

「ってここラブホテルじゃないですか!」
「すまんなぁ、ここしか空いてなかったんや。ホレ乾杯といこうや」
ビールが波々と注がれたコップをぶつけてくるので仕方なく乾杯した。
(どうしよう…あっちは男だと思ってるけどナニはない、いやナニよりも顔みられたらマズい…早く抜け出せないと)
無我夢中でビールを飲み干したそのひだったがその途端、押し倒された。
「あたしのこと、美人言うてくれたよなぁ…ならあたしのこと抱けるんやないの…?」
「い、いや!いきなりそんなこと言われましても!」
「遠慮すんなやぁ…さぁておちんちんは…うそ、萎えっ」
ふみの身体に物理的に電流が流れる。
あらかじめ仕込んでいたスタンガンのスイッチが入ってふみに当たってしまった。
そのひは心肺だけ確認して生きているのを確かめると慌てて出ていった。

「お、そのひちゃんおかえり~」
いつもと変わらない笑顔で出迎えてくれたくらしさんが天使に見えた。
「うわぁぁぁぁん!」
「ちょっ、いくら再開が嬉しいからって泣くなや急に…」
「襲われそうになりましたんでつ、つい」
「えっ!?に、逃げれてよかったけど特徴を教えてくれへんか?知り合いに連絡して沈めたる…」
「あわわ…は、白人の男性でした!」
感情がパンクしたそのひは薄っぺらい布団に潜り込んでシクシクと泣き出した。

「なんやぁ…まぁ帰ってきて嬉しいで、"朝日"ちゃん」


数時間後、目が覚めたふみはスタンガンのショックで大小漏らしていたところをラブホの店員に見つかり、ついでに大麻を所持していたことが発覚して逮捕された。



余韻が冷めるあとがき注意

5月ですね、死ね

2024/05/30
またそのひとくらしの名前間違えてる…
修正

高いよ