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運転中に眩暈がした話

7月5日 18:50

週最後の仕事は終わりに近付き、皆それぞれの残った雑務を片付けていく。
俺は客の車を納車して少しばかり玄関先で立ち話をした後、いつもの様に事務所へ向かい車を走らせていた。
7月に入り日も長くなった。この時間になってもまだ外は明るい。感覚的には16時といったことろか。

今週は個人休が他の社員と被るという理由で来週に移動させられ、6連勤となった。俺の仕事は普通の企業とは異なり、サービス業である為火曜日が定休日となる。それ以外の休める平日に自分の個人休を設定するのだが、一人一人に課せられる業務が膨大すぎてなかなか休みが取れないのが現実である。
俺が新入社員の頃は甘く、それこそ毎週の様に個人休は休ませてもらったが2年、3年と時が経つにつれて自分の休みを使ってまで仕事をしなければ回らない業務量になってきた。

「俺の真似をするなよ」

当時俺が新入社員の時、駅まで送ってくれた上司が言った言葉を今も覚えている。日々の仕事に忙殺された眼は光を失っていた。なぜ休みなのに休めないのか、当時の俺はまだ分からなかった。これほどまで圧倒的な量の仕事は限られた時間の中で、かつ休みを取りながらは不可能な話だ。約3年やってきて今分かった。その時の上司が言っていた意味が。


俺は昼飯昼休憩もろくに取れず、8:30始業21時か22時に家に着くルーティンをしてきた。常に頭の中に仕事があり、夢の中でも客との商談が出てきたり脳が休む暇は無かった。仕事中歩いていると1〜2秒目が見えなくなり左前に体が持っていかれる感覚がここ最近何度かあった。疲れなのか脳がやられているのかは分からない。

事務所へ戻る途中、あれやこれやと頭の中で考えながら車を走らせていると、それは起きた。

グラッ

一瞬体が持っていかれた。すぐ左はガードレールがあり、危ないと思ってハンドルを戻そうとしても対向車がいた為急ブレーキをかけた。





危うくぶつかるところだった。またかと思った。その後はゆっくりと車を動かし事務所へ戻った。

その後は頭痛と吐き気があり、思うように雑務が進まなかった。帰り道またあの症状が出ると危ないので、今日は歩きで帰ることにした。

もちろん、いつも通り車で帰るつもりだったのでイヤホンは持っていない。街中の音はこんなにもうるさいのかと改めて思った。道中いろいろな物が目に入る。

俺が新入社員の時にあった居酒屋は無くなっていた。
明日はゆっくり休むことにしよう。何も考えずに。

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