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燃え尽きるまで


好きなことでないと没頭できない。没頭すると楽しい。やりたくない事をやっていれば時間が経つのは遅い。やりたい事をやっていると時間にとらわれない。私の場合、何かに取り憑かれた感覚とはここから生まれている。

時間を気にしていることばを聞くと「私には急ぎの用事ないから。」と反応した。「私にはお金はないけど、時間がある。」と言ったら「それは財産だ。」と教えてくれた本物がいて救われたことがある。

100ドル紙幣の人、初代郵政長官でもあったベンジャミン・フランクリンが『若き商人への手紙』の中に書いた句の引用が「時は金なり」のはじまり。時間を対価で視覚化し有益に使うコトを促したなんとディープでわかりやすいことば。

でも目に見える利益を見据えて時間を割くことより、結果が目には見えない、未来の役に立つか分からなくとも、私自身にとっての有益に時間を費やすことが、仕事を辞めた後の私には特別しっくりきていた。

郵便局員時代に私は燃え尽きた。退職する決心をするのにも数年を要していた。一分経つのが遅く日々を長く感じ、何度も見る腕時計はまるで動いていないかのように、暗い圧を長年に渡り味わっていた。

復活後のワタシはこの時期を「空白の時間」と呼ぶようになった。当時、実際に辞めたはいいけど何を具体的に、どうしていいのかさっぱり分からないツライ人になっていた。人間性も喪失ギリギリまで落ちかけた。急ぎあせればあせる程イイ成果も得られなかった経緯から培った時間への尊さ。

とは言ってもダンス出戻り新人後だけでなく、今のコロナ渦であっても、平均睡眠4時間のタイトなスケジュールをこなし大抵は座りながら寝落ちしている。ベッドルームの片隅で朝まで作業の連続。それを考慮してカウチで寝てくれている主人に感謝。彼からの理解や応援なしでこの生活環境は実現していない。

「どうして休憩ナシであんなにずっと踊っていられるの?」とダンスフロアで私を見た人から質問されることがよくあった。いつも答えは「空白の時間を埋めやなアカンでナ!」だったワタシ。言いかえれば、今を生きている証。リア充がたまらない程のナチュラル・ハイを与えてくれる。

詩的かつ抽象的な表現で「空白の時間」だけを聞いた人にとっては、私の存在の不思議さをより一層かもし出しているよう。率直に私はオラクルでも謎めいた人でもない。イメージ戦略が大切なご時世であっても「無職でフルタイムで踊る中年のおばさん」が等身大。

土星からきたと自称したシカゴ出身のジャズピアニスト、サンラは私にとっての進化系。彼のように光り輝くマントを普段から付けていたら衣装と聞かれるそんな出で立ち。そこで初対面の相手が凍りつかないよう、あらかじめ『サンラおばさん』と自己紹介するように心がけている。

バーチャルになった今でも燃え尽きるまで踊っている。この夏はアパートのリビングルームで5時間近く駆け巡り続け、熱中症になるかと思った。そこでもし燃え尽きても構わないという心境。これ理想郷。

この瞬間を愛おしく感じながら生きる現在。その今こそが楽し過ぎて時空を越えるような体感を与えてくれる音楽を聴いて踊ること。これこそ我が無形資産。いかにこの老体にムチを打ち過ぎず続けていけるかが永遠の課題。たかが時間、されど時間。それが現実爆笑問題。

48歳から人生の本編スタート。「生きる」記録の断片を書く活動みならず、ポエム、版画、パフォーマンス、ビデオ編集、家政婦業、ねこシッター、モデル、そして新しくDJや巨匠とのコラボ等、トライ&エラーしつつ多動中。応援の方どうぞ宜しくお願いいたします。