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REALITYで考えた設定の物語>魔王と俺は…

「ここは…俺は…お前は誰だ…」

『起きたか…混乱してるようだな…
お前は1度死んだんだ…私がお前を蘇らせた…
お前のここに…私の心臓…魔王の心臓がある…
お前が死ねば私も死ぬ…私が死ねばお前も死ぬ…
死にたくなったら私を殺しに来い…お前は…死なないから…
それまでは、とりあえず生きてみるんだな…』

「何を言ってるんだ…俺が死んだ?お前が魔王?心臓だと…
待て!行くな!くそ!わけが分からない…
自分の事も…分からない…何も分からない…
ここはどこだ!俺は誰だ!死んだってなんだ!
何だよ!何なんだよ!ゔぁあぁぁぁ!!」


「はぁはぁ…こんな事…してても意味がない…疲れるだけだ…
これからどうする…これは俺の持ち物か…金や食べ物、旅の道具もあるな…
旅をしていたのか…とりあえずなんとかなるか…
人のいる場所へ行こう…何か分かるだろう…」


[勇者様!いや…そんな事あるわけないか…勇者は死んだんだ…他人の空似だな…]

「何だ?俺が勇者に似てるのか?勇者が死んだってどういう事だ?」

[何だ兄ちゃんそんな事も知らんのか?誰でも知ってるだろ…
今大変なんだぞ、勇者が負けて魔王との戦いに向け世界中の国々が準備してるところだ
おかげで物不足で治安も悪くなって大変なんだよ]

「そうなのか…俺はずっと人気の無いところを旅してきたから何も知らないんだ…」

[人気のないところ?そんなところを旅してきたって、修行か何かかい?
見たところ冒険者みたいだしな…結構強いだろ?]

「そんな事ないさ…すまないが色々教えてくれないか?」

[ああ、まあいいぞ、それくらい…]


[まあ、こんなところだな…]

「そうか…ありがとう…

魔王に負けて勇者が死んで勇者パーティーが逃げ帰った…死んだのは勇者だけで他は全員無事だったか…魔王に勇者…勇者パーティーなら何か知ってるかも知れないな…
それにしても…魔王に負けた勇者は最弱で、逃げ帰った勇者パーティーは人間の恥さらし…
随分な言われようだな…」

[なあ、兄ちゃん…考え事してる時に悪いんだが、あんた本当に勇者に似てるよ…
顔を隠した方がいい…今はこんな状況だろ…それもこれも勇者が負けたからだ…
勇者に似てるだけでも絡まれるぞ…不味い…傭兵の奴等だ…]

《おい。見ろよコイツ…勇者に似てるぞ…俺達がこんなところまで駆り出されたのも勇者のせいだ…
俺達は勇者の尻拭いの為に戦うんだからな…少しくらい憂さ晴らししてもいいだろ
お前も協力しろよ…黙ってやられろ!》

「何だって…くそ!不味いぞ…俺は戦えるのか?記憶がないんだぞ…
やられる…なんだ…声が…
『お前は死なない…私が殺させない…』
魔王…」

《ん?なんだ…歯向かう気か?急に雰囲気が変わったぞ…》

「ふん…ゴミが…身をわきまえろ…」

[凄い…兄ちゃん…こんなに強かったんだな…兄ちゃんも魔王と戦う為に来たのか?]

「なんだお前…」

[さっきと雰囲気が違う…何でもないよ…失礼するよ…]

「ん…何だ…今のは…俺が俺じゃなくなった…
魔王…の声がした…死なないって…魔王が何かしたのか…
俺が死にそうになったらああなるのか…不味いな…あんな状態でいたら大変な事になるぞ…
ああならない為にも俺が戦えるか確かめないと…」


「ふぅ〜剣術や体術は使える…記憶がなくても体が覚えてるんだな…
だけど…魔法は知識がないとダメなのか…呪文が分からないからな…
まあ、そこら辺のゴロツキやモンスター程度なら問題ないな…
これであの状態にならなくて済む…俺は剣術だけでも結構強いみたいだしな…そう簡単に命の危険にあわないだろ…」


「ここに勇者パーティーの僧侶がいるのか…僧侶は勇者を尊敬していて1番懐いてたって言うからな…
でも…懐いてたって…言い方があれだよな…まあ、会えば分かるか…
それにしてもここ…人里離れた荒れ果てた協会って…
勇者パーティーは本当に疎まれてるんだな…」


〘はい…こんな所になんのようですか…
えっ…貴方はまさか…勇者様…そんな…死んだはずじゃ…
そうですか…死んでなかったんですね!
そうですよ!勇者様が死ぬはずないですもんね
良かった…あの時、魂合石が壊れたのは何かの間違いだったんですね〙

「魂合石…悪いな俺は何も覚えてないんだ…俺は本当に勇者なのか?
その魂合石ってのは何なんだ?」

〘何も覚えてない…それって…記憶喪失って事ですか?
貴方は…間違いなく勇者様です…この私が言うんですから間違いないです!
それで魂合石とはその持ち主が死んだら一緒に砕け散る生存確認の為の魔道具ですよ〙

「そうか…つまりは、その魂合石が砕けたから勇者が死んだと…
ん?勇者パーティーは一緒に魔王と戦わなかったのか?勇者が死んだところは見てないのか?」

〘それは…私達は…魔王と戦っていないんです…
勇者様が魔王と1人で戦うと結界を張られて…私達には結界の外で待っていろと…
この魂合石が砕けたら撤退しろ…そう言われたのですが…
私達は反対したんです…一緒に戦うと…でも勇者様は…押し通してしまって…だから言われた通りにしたんです
本当のところは勇者様がどうなったのかは分からないんです…
だから魂合石が砕けたから…死んだものと思っていました〙

「そうか…」

〘魂合石が砕けたって事は、死ぬほどの目にあっていたんですよね…
記憶まで失ってるんですから…
それでも生き残られたのは凄いです!さすが勇者様です〙

「凄くなんか無いさ…結局負けたんだからな…生き残ったと言っても惨めに記憶まで無くしてしまって…」

〘そんな事ないですよ…勇者様は凄いです!
召喚された時は歴代最強の勇者と言われてたんですから…
それが魔王に負けたからって手のひら返して…
魔王だって歴代最強と同じ事を言われてたんですから…〙

「魔王も勇者も歴代最強か…それで勝ったのが魔王…
済まなかったな。僧侶にも嫌な思いをさせた…こんな人がいないような場所にまで追いやられて…」

〘それは…気にしないでください…ほら!見て下さい教会の中は綺麗でしょ?私頑張って片付けたんですよ…外はまだですが…
私は…確かに厄介払いされました…ここは放棄された教会でしたから人なんて来ません…
ですが、それで良かったんです
また勇者様に会えました…誰もいないからこうして話もできるんです…
誰かいたら大事ですよ…勇者様が生きていたと知られたら…〙

「大事?どういう事だ?」

〘また魔王と戦わせられるくらいならまだいいです…私も戦いますから
ただ今回の件…人間社会を混乱させた責任をとらされる可能性もあります〙

「混乱させた…責任…何だよそれ…」

〘すみません。上の者達はそういうものなんですよ…
ここなら人は来ませんし…バレないでしょう…
そうだ!ここで私と隠れ住んだらどうですか?〙

「ん…それもいいかもな…」

〘そうですよ!それがいいです!勇者様は今まで皆の為に頑張ってきたんですから、ここでゆっくり過ごしましょう!〙

「そうか…だが俺は…ん?」 

〘誰ですか?えっ!〙

「大丈夫か!何だお前等!」

〘彼等は王国の暗部…そうか…私…見張られていたんですね…
じゃあ勇者様の事も…王国に…不味いです…〙

〈まさか勇者が生きていたとわな…僧侶と会って何をするつもりだ…まさか反逆か?
上に報告しないといけないな〉

「俺はそんな事しない」

〈ふん…そんな事はどうでもいいんだよ…
今さら勇者に出てこられても困るんだ…勇者の不始末で世界中が混乱している今…
王国が逆転の一手で解決し世界を統治する…
その為にもその原因たる勇者の名を語る者は邪魔なんだ…ここで死んでもらう…〉

〘勇者様!〙

「不味い!コイツ強い…戦えるって言っても魔法は覚えてない…
剣技だけでは…今の俺では勝てない…」

〘これは!〙

〈何だ…〉

〘何て邪気…本当に勇者様なの…〙

「お前か…邪魔だ…消えろ…」

〈何だこの力は…〉

〘なんて禍々しい…私は危うく騙されるところでした…貴方は勇者様じゃない…勇者様はこんな邪気を発しない…これではまるで魔王…〙

『お前は…僧侶じゃないか…』

〘その声は魔王!やはり!貴方…勇者様に何をした!〙

『何をした?コイツは間違いなく勇者だぞ?お前なら分かるだろう?』

〘それは…確かに私は勇者様だと思いましたが…
そうか…勇者様の体を操ってるのか!〙

『操る?確かに今はそうだな…コイツの命の危機になると私が体を操って助けていたが…
普段は本物の勇者だぞ』

〘命の危機…助ける…何を言ってるんです…何で貴方が勇者様を助けるんですか!〙

『何で…コイツが死ぬと私も死ぬからな…コイツの中に私の心臓が入ってるんだよ…
逆に私が死ねばコイツも死ぬがな』

〘何ですって!呪いか何かですか!そうか…勇者様に勝てないから呪いをかけたんですね!
なんて奴だ!許さない!必ず解いて貴方を…魔王を倒します〙

『呪い…そうかもね…呪いを解く…できるといいわね…
貴方がいるなら、もう私がコイツを操らなくてもいいわね…
私も忙しいから…力は使えるようにしてあげるから、後は自分で使えるようにしなさいそう伝えといてね』

〘何言ってるんですか!話は終わってないです〙

『そうね…話がしたいなら直接来なさい…そしたら全てを教えてあげるわ…』

〘全て?何を!〙

「何だ?」

〘勇者様?〙

「ああ、そうだ…またあの状態になっていたか…大丈夫だったか?」

〘はい…大丈夫です…勇者様!すみません!少しでも貴方の事を疑ってしまって…
全ては魔王のせいなのに…〙

「どういう事だ?魔王のせい?」

〘それは…〙


「そうか…そんな事があったのか…」

〘はい…勇者様…私達はここを出た方がいいと思います…王国も追手を出すと思いますし…呪いを解く為に魔王に会いに行った方がいいです〙

「ああ…そうだな…だがその前に力を使えるようにならないとな…」

〘そうですね…勇者様なら魔法も直ぐですよ
剣術も使えてるんですから
呪文は私が教えますね…〙


「使えない…魔法が使えない…なぜだ…」

〘これも呪いのせいですか…剣術や体術は大丈夫なのに魔法や勇者の力が使えないです…〙

「仕方ないな…魔王の力を使えるようになるしかないか…」

〘それは…でも…勇者様が邪気を…仕方ない…ですよね…今は…〙

「ああ、魔王の所まで行くには必要だろう…追手もいる事だしな」

〘はい…そうですね…それなら私達勇者パーティーが使っていた場所でいい場所があります
私達以外は知らないのでそこで特訓しましょう〙

「そうか…それならそこに行くか…」

「魔王の力…邪気は使えるようになったが…性格が好戦的になるな…まあ前とは違って俺の意思があるからなんとかなるか…僧侶もいるし大丈夫かな…」
〘はい。私がいるから大丈夫ですよ…勇者様は私がちゃんと見てますから〙
「そうか…ありがたい…ん?誰だ…ここは…勇者パーティー以外には知られてないんじゃないのか?」
〘はい…そうです…あっそうか…パーティーメンバーならここに来れるんだ…〙
「勇者パーティーの誰かって事か…」
〔驚いた…本当に勇者様だ…生きてたんだ…〕
〘魔法使いさん…貴方でしたか…〙
「魔法使い…」
〔何…勇者様…ひょっとして記憶がないんじゃない?〕
〘えっ…何で分かるんですか?〙
〔その反応を見れば、それくらい分かるわよ…私の事分かってないじゃない〕
〘そうですね…〙
〔この私を超絶美人を忘れるわけないじゃない〕
〘はぁ〜そうですね…それで魔法使いさんは何でここへ?〙
〔何でって私達に対する世間の目は貴方も分かってるでしょ?
もう耐えられないから、ここに逃げてきたのよ
私は褒められるのは、なれてるけど責められるのはなれないの!
ここなら人は来ないからね…そしたら先客がいるじゃない…それも死んだと思ってた勇者様が…
私だったから良かったわよ…他のパーティーメンバーだったら…勇者様に襲いかかってたかもね〕
〘えっ何でですか!〙
〔何でって私達の今の状況は勇者様のせいなのよ…私達は戦ってすらいないのにあんな事を言われて…不満に思ってるでしょうね戦闘狂の奴等は…〕
〘それは…そうですね…剣士さんや武闘家さんは…〙
「そうか…そうだよな…俺のせいで…魔法使い…済まなかった…辛い思いをさせたな」
〔私は…まあいいわよ…戦闘狂じゃないから戦いたいとか思わないし…それより…ここを出た方がいいわね…勇者様が生きてるって分かったらあいつ等ここに来るだろうから…無駄な争いは避けた方がいいでしょ〕
〘そうですね〙
「ああ、丁度訓練も終わったしな…ずっといるつもりもなかったし…そろそろ行くか魔王のところへ」
〔えっ!魔王?何で?リベンジでもするの?何その為にここで訓練してたの?〕
〘いえ違うんです…実は…〙

〔そうだったの…そんな事が…でも呪い?それは…違うんじゃないかな…まあ魔王に会えば分かるか…〕
〘えっ!それって…〙
〔私も一緒に行くからね〕
「それは…ありがたいがいいのか?」
〔いいわよ…こんなところでずっと隠れてるなんて嫌だからね…真実を知りたいじゃない…そして誤解を解いて私達の扱いを改善したいじゃない〕
「分かった…これからよろしくな…

〘勇者様と二人の旅が…よりにもよって魔法使いさんが割り込んでくるなんて…〙
〔ん?何?僧侶ちゃん?1人でブツブツ呟いて?どうかしたの?
まったく僧侶ちゃんは一人で抜け駆けするなんて、ずるい子ね…〕
〘抜け駆け!違います!私は…〙
〔負けないからね〕
〘私も負けません〙
「2人共…どうしたんだ?」
〘何でもありません〙
〔何でもないわ〕
「そうか…まあ、いいか…それじゃあ魔王のところへ行くぞ…」