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#37 精子バンク(オーストラリアと日本の認識)

不妊治療がここ最近フォーカスされるようになって、精子バンクというオプションがある事も、少しずつではあるが、身近に日本でも報道されるようになった気がする。

デンマークに本社を置くクリオスインターナショナルという世界最大の精子バンクの日本進出もそういった背景がある事だし、いろんな原因で子供を授かれない家族にとって、そういった精子バンクを選択するオプションを日本にも作っていくことは、僕自身反対するどころか、賛成である。

なぜなら、反対する事自体、世界的な流れに反していると感じているから。

もちろん、自分自身がそういった境遇の中にあるからというのが一番の理由ですが
たとえそうでなくても、日本の法整備は進めていくべきものと思います。

オーストラリアに2年近く住んでみて、そのことは実感しています。

オーストラリアもゲイやレズという同性愛者の同性婚というのが、2017年に認められるようになったのですが、僕の根本的な考え方はこのニュースにあると思っています。

これまで、オーストラリアの同性愛者も、事実婚という形で、異性婚と同じ権利(子供を持つこと、社会福祉、医療などすべてにおいて)を与えられていましたが、

2017年、『結婚』という社会の倫理観の中にある伝統的に位置づけられている定義を、同性婚にも保障する事で、社会的認知に繋がりました。

『事実婚してる』と『結婚してる』というのでは、受け手側の響き自体が全然違いますよね。


家族の在り方は人それぞれでいいんです。

それが僕の精子バンクのベースとなる考えです。


少し歴史に触れると、1970年代にアメリカにおいて、第三者の精子提供が始まり、1980年代に入り、オーストラリアも追随する形となるのですが、初めはドナーは匿名性で、生まれてきた子供に出自を知る権利が与えられず(⇐2021年における、今の日本の状態)、1984年の法改正と1995年に制定された特別法(InfertilityTreatmentAct1995)により、オーストラリアもドナーの匿名性が廃止され、子の出自を知る権利が法的に保障されてきた背景があります。

そして、2008年11月にオーストラリア議会は連邦法で同性カップルを認める法律を可決し、これにより、シングル女性も同性カップルも、異性のカップルと同様に生殖補助医療(不妊治療)を受ける権利が認められる事となり、2017年の同性婚の合法化に至るわけです。


異性婚だけではなく、同性婚、シングル女性にも子供を持つことの平等性を与えたわけです。

これが、世界的な流れです。
北欧はもっと進んでいます。


なので、クリオスインターナショナルの国内の利用者が150人を超えたというニュースを見たときは、
本当に悩んで、行動に移した150人だと思ったし、この数字は氷山の一角で、悩んでいる人は大勢いるんだと感じたんですよね。

なんども言いますが、僕は精子バンクの利用を推奨しているわけではありません。
個人の自由です。

しかし、社会から認知してもらうことは必要だと感じています。

そして、もしそれでも反対する人がいるのであれば、日本では違法で精子を提供している闇社会があるという側面も知るべきだと思います。
「無償」や「ボランティア」と称して、個人で運営している精子バンクがネット上に60以上ある事を。

中には実際に性交渉を持って、提供している個人もいるのです。
遊び半分で、そういった弱者を狙う悪い人もいるのです。

そこに、安全や安心、社会的人権はあるのでしょうか?
法整備が進まないと、危険としか言いようがないんです。

こういう、流れになると、真面目に不妊治療を続けている夫婦にとって、その先に取れるべき選択肢であった、卵子提供や精子バンク、特別養子縁組などの選択が、取りずらい状況にもなるし、これでは日本人のドナー登録が現れない結果になって当たり前だと思うのです。

子供は自然妊娠で出来た実子のみ
そんな固定観念が、価値観として人々の心の中に育まれてしまうのです。

それでは、こういった問題は、自然妊娠で子供が出来きたカップルには関係がないのかというと全くそうではなくて
その子供が大きくなって成長して、良いパートナーと知り合って、結婚するとなった時、結婚した相手に不妊の原因があるとわかったら、その時、親はどう思い、どう感じるでしょうか?

子供が傷ついているのに、放っておける親なんて、子供に愛情があればできないし、しないはずです。

生まれてくる、これからの日本を支える子供たちに、より生きやすい安心した社会や世界にしていくことが
僕は大事だと思うんです。

困っている人に堂々と手を差し伸べる、そんな社会になってほしい。


**参考文献**
オーストラリア・ビクトリア州における生殖補助医療の 法制度化による子の出自を知る権利の保障
19689207.pdf (ipss.go.jp)

精子バンク、国内利用150人超 商業ベース、議論先送り(共同通信) - Yahoo!ニュース
クリオス精子バンク ― 不妊治療に向けたドナー精子検索 (cryosinternational.com)
オーストラリア、同性婚を正式に合法化 - BBCニュース
精子提供、ネットで広がり 「子が欲しい」に法律は今 [ニュース4U]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
自称「精子バンク」、60サイト以上 性交渉も選択肢:朝日新聞デジタル (asahi.com)

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