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【読書日記】くますけと一緒に【条件付きの愛】

新井素子さんの文体は独特なので、万人におすすめはできない。正直、自分にとっても、文体がノイズになってしまって読みにくいことは否めない。それでも、小学生の頃から何度も読み返してしまうのは、毒親という言葉すら知らなかった頃から、この小説に強い引力を感じていたからだと思う。

このような結末を迎えた今となっても、私は、親に愛されていなかったとは思っていない。ただ、無償の愛ではなかったと思っているだけだ。
青臭い言葉に聞こえるかも知れないし、私も自分の子を持ってみて、改めて、「どんな子供でも無条件に愛する」ことの難しさは想像できるつもりだ。
けれどやはり、私が親と絶縁にまで至った原因の大部分は、それが占めている。
私の親は、「子供」を愛しているだけなのだ。自分達をおびやかさない、成熟した大人ではない、あくまでも未熟で庇護すべき「子供」を。
先日対決して、心から思い知らされた。大人になった我が子と、向き合うことのできない彼ら。向き合うことを絶対にしない彼ら。自分が死ぬ瞬間まで、上から押さえつけることしかできない彼ら。

親は、自分の子供を嫌ってはいけない。でも子供は親を嫌う権利がある。
この本に書かれている強烈なメッセージは、今になってやっと、私に刺さった毒の楔を、少しだけやわらげてくれている。

くますけと一緒に /新井素子(中公文庫) https://amzn.asia/d/9ahzqwk

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