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第7話»完成と歓声

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事態は加速した。
予約時間から遅れた方に紅茶をお出しすると
少々お待ち頂けますかが言い終わらないうちに
手品の如く、どこからか
ケーキをが現れる、かと思っていたら
「お腹空いちゃわ。急いで来たから
お昼食べれなかったのぉ」
なんかイヤァーな予感がフロントを覆った。

「おにぎり、良いわよね」
意味が解らずキョトンとすると
「いいわよね、小さく握ったから」
手持ちのバッグからラップに包まれたおにぎりが登場。
勝手な言い草が横行した。
ケーキがおにぎりに変化すると
次はコンビニ弁当だった。
コソコソと持って来ていたが次第に
大ぴら様々コンビニ袋持参方に移行した。
その後は手作り弁当に移り、
「このおかずカワイイでしょ」
の自慢ショーがフロントの端々で
行われる始末に。
そんなこんなの状態が叔父の耳にも届く。

それならいっその事……
「専用スペースを作ったらどうだ」
良い意味でトップダウンな我社は
叔父の一言で自体は急変した。
数ヶ月前から上のフロアーが空くと言う話が
叔父に有ったらしく、思案中だったそうだ。
ならば作ろう! と一気に話が進んだのだ。
昼間にガタガタ工事する訳には
行かないので営業時間終了と共に
業者さんが入り、超短縮工法が実施された。

店舗1階フロアーから行き来がしやすい様に
エスカレーターが設置され、車椅子使用も
鑑み、ビルエレとは別のエレベーターをも用意した。
エスカレーターには広い吹き抜け空間が
保たれ視覚的にもゴージャスだった。
短期間にこんな構造利便性が出来るなんて
日本の建築技術は凄いなと奈美は
改めて思った。

着々と工事は進み、機器が搬入され
装飾や照明も取り付けらた。
至る箇所に気遣いアイデアが盛り込まれた空間が現れると、
そこはもう別世界。
工事期間中は特別な囲いがされ
何が行われているか解らない工夫が
されていたが、その囲いも取り払われる。
VIE LENTE2階フロアーのお披露目である。

店1階フロント近くに現れたエスカレーター。
営業開始と共に来店する方々。
そこにお客様の視線が集まった。
「えっ!」「なに、これ!?」「上になにかあるの!?」
スタッフが笑みを浮かべ「どうぞ」と会員様専用の
フリースペースに先導して案内すると
2階から、ワァーっと声が響いた。
一人のお客様から発生した苦慮問題が
ときめきへの歓声に変わった瞬間だった。








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