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寄稿/ 和田ながら 《「Dance Fanfare Kyoto」の3年間と「きたまりダンス食堂」の4時間》

きたさんとの現場はエクストリームだ。

2013年から2015年の3年間、「Dance Fanfare Kyoto( http://dancefanfarekyoto.info/ )」という試みに企画・運営スタッフとして参加した。「Dance Fanfare Kyoto」とは、2012年の「We dance 京都( http://www.wedance.jp/2012_kyoto/ )」をディレクションしたきたさんが、「よそ(We danceは横浜の企画)から借りたフレームではなく、自分たちの自発的な企画で関西のダンスシーンをおもしろくするのだ(しないとヤバいんじゃないか)」という思いで立ち上げたプロジェクトである。
3年間で3回。具体的にどんなことに取り組みどんな課題が残されたのかについては、アーカイヴが(やりっぱなしにしなかった当時の自分たちをめちゃくちゃに褒めてあげたいぐらい)充実しているのでそちらを参照していただきたいのだけれど、とにもかくにも、毎回プログラムが盛りだくさんだった。きたさんを入れてもたった5人しかいない運営スタッフでよくまわせたものだと思う。ほぼすべてが新作のプロデュース。準備も公演現場もエクストリームだった。わたしがディレクションしたのは「ねほりはほり」という企画ひとつだけで、それでほぼキャパオーバーぎりぎりだったけれど、きたさんは常に私の二倍か三倍の企画の舵取りをしていた。「Dance Fanfare Kyoto」の基本方針に、作品をつくる企画では一緒にクリエイションをした経験がない振付家・演出家と出演者を出会わせる、というものがあり、きたさんは自分の担当企画以外でも大量のお見合いをセッティングしてマッチングさせまくっていた。それから、プロジェクト全体のファンディングもきたさんの領分だった。
つまり、なによりきたさんがエクストリームだった。誰かに頼まれたわけじゃないのに。自分の作品をつくるわけでもないのに。きたさんは、シーンに対する危機感とダンスの希望に衝き動かされ、対話を開き、言葉を残していった。ダンスに関わる人々のジャンルや年代やバックグラウンドをかき混ぜようという水平性のエクストリームだった。

2018年10月に京都木屋町の多角的アートスペース・UrBANGUILDで「きたまりダンス食堂」というシリーズがスタートした。同じ年の2月ごろからUrBANGUILDのブッキングスタッフとして仕事をはじめていた私はこのシリーズの担当スタッフを任じられ、広報の準備や本番当日の照明操作をやることになった。
きたさんが自らに完全即興を課すというこの企画は、初回の1時間から始まって、回を重ねるごとに30分ずつ伸びていった。そして2020年3月までに7回行われた。つまりvol.7は240分、要するに4時間になった。
4時間の即興ソロダンス。
もうあまり説明はいらないように思う。エクストリームだ。
きたさんがなんでこんなことを始めてしまったのかよくわからないが、始めてしまったが最後、ハンパなところで止まることはできないんだという勢いは、付き合いが長くなってきたこともあって自然と理解できた。また、1年半かけて少しずつ時間が伸びていったので、担当スタッフとしては良くも悪くも慣らされてしまい、4時間のセットをやっても大して長く思わなかった。不感症のようなものだ(わたしのまっとうな時間感覚を返してほしい)。
とはいえ、踊っている方は4時間が短いわけがないだろう。身体にこれまで蓄積されてきたボキャブラリーを駆使して踊りつづけるきたさんは、時間を登っているようにも、下っているようにも見えた。高さ、あるいは深さへ。あれはきっと、垂直性のエクストリーム。

愚痴るぐらいなら自分で動くこと。人を巻き込んでプロジェクトをつくっていくこと。きちんと言葉を残すこと。その都度振り返ること。そして、やりはじめたらとことん。
エクストリームな先輩からは学ぶことが多い。たぶんこれからも。


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2021年10月【きたまりダンス食堂vol.8 スペシャル篇】270分完全即興  UrBANGUILD 撮影:井上嘉和


??????????? _撮影:守屋友樹

                   「photo: Yuki Moriya」                 

和田ながら
演出家。京都造形芸術大学芸術学部映像・舞台芸術学科卒業、同大学大学院芸術研究科修士課程修了。2011年2月に自身のユニット「したため」を立ち上げ、京都を拠点に演出家として活動を始める。同世代のユニットとの合同公演も積極的に企画し、また、美術家や写真家など異なる領域のアーティストとも共同作業を行う。2015年、創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう」vol.5最優秀作品賞受賞。2018年、こまばアゴラ演出家コンクール観客賞受賞。2013年から2015年、Dance Fanfare Kyotoの運営に携わる。2018年より、京都木屋町三条の多角的アートスペース・UrBANGUILDのブッキングスタッフ。2020年より鳥公園アソシエイトアーティスト。NPO法人京都舞台芸術協会理事長。
http://shitatame.blogspot.com/

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