見出し画像

ベトベト哀歌

必要があり、1000項目ほどの部品調査をすることになって、
毎日のように工場に入って、品番を調べたりしている。

今日は、縦にチェーンが繋がっている変速器を調べようとしたら、
銘板に、長年の油とホコリが積もっていて、そのヘドロ掃除に時間を取られてしまった。
真っ黒。ベトベト。ドロドロ。

大先輩も付いてきてくれていて、懐中電灯で照らしてもらいながら。

すみません、と謝りながら、手を真っ黒にして掃除してたら、
ふと『○○さん、会社辞めたくなってきた』と口を突いて出てしまった。

やばいやばい、油キレイにするアルコール持ってきたげるよ、
などと、あくせく動いてくれた先輩を見てたら、急に笑えてきて、
『あーやめたーい』と言いながらゲラゲラ笑ってしまった。
あまりに笑うので、不安そうにしていた先輩も、結局笑いだして、
何かもう、どうでも良くなってしまった。

工場からの帰り道、こっそりショートカットして別部署の管轄区域を通ったら、
なにやら既視感のある人影が耳栓をしながら実験をしてて。

よくよく見てみたら、先輩よりももっと大先輩の、普通なら実験をさせたら
いけないような立場の人が、実験をしてた。

『どうなってるんですか、うちの会社は。やっぱり辞めたいですよ』
と、また口を突いて出て、先輩の顔を見たら今度は苦笑い。

1つ立場が変わるごとに、変わる前には想像してなかった苦労が増えたし、
言っても仕方ないから言わないで居るだけ。

そういう経験をしてきた人なら、例え嫌われ者だって、
言わずにいる苦労を抱えて偉くなっていった人だと分かるだろうに。

なんで、ああやって実験しなきゃいけない状況まで追い込んで、誰も手を差し伸べないのかなぁ。

っていう意味の、辞めたい。

みんな冷たいよねって、哀しくなりました。
という話。